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勝手に1日1推し 200日目 「口訳 古事記」

「公訳 古事記」町田康     小説

幸せだなあ。
こーんなに色々な物語が読める時代に生まれて、幸せだなあ。
忙しくったって多少の時間さえあれば、部屋で職場で電車で喫茶店で、どこででも違世界に飛び込める最強アイテム、それが物語!ありがとう!
時間に限りがある時ほど没頭してしまうという不思議。
どちゃくそなメンタルな時だって、手あたり次第読んで読んで読みまくったら、現実逃避できる!どころか、幸福を味わえるんだぜっと!!
幸せを噛み締める200日目!!

つまり、そんな幸せな今を形作って下さった神さんたちよ。さんきゅ。伊耶那岐命(イザナキノミコト)さま~、伊耶那美命(イザナミノミコト)さま~。
こんな出鱈目な(褒めています)神話ってあるぅ?おもろ!
「いやよー」って容赦なく殺される神々。アッパレ!!
「小碓命(オウスノミコト) a.k.a. 倭建命(ヤマトタケルノミコト)」には吹いちゃった。町田康 a.k.a. 町田町蔵!!INU!!

てか、純粋に疑問なのが、こんなに笑いながら読めるものなの、古事記って?ってとこです。本当に笑っちゃいます。
小難しくて気乗りのしない古典の世界がなぜかアヴァンギャルド!

アナーキーな神々と英雄たちが繰り広げる、〈世界の始まり〉の物語。
前代未聞のおもしろさ!!日本神話が画期的な口語訳で生まれ変わる!町田康の新たな代表作。

「汝(われ)、行って、玉取ってきたれや」「ほな、行ってきますわ」
イザナキとイザナミによる「国生み」と黄泉国行、日の神アマテラスの「天の岩屋」ひきこもりと追放された乱暴者スサノオのヤマタノオロチ退治、何度も殺されては甦ったオオクニヌシの国作り、父に疎まれた英雄ヤマトタケルの冒険と死、帝位をめぐる争い、女たちの決断、滅びゆく者たち――。
奔放なる愛と野望、裏切りと謀略にみちた日本最古のドラマが、破天荒な超絶文体で現代に降臨する!

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やっぱり関西弁のおかげかしらん?
なんか他人事みたいでゆるいんだよね。切羽詰まった感じが皆無。壮大な歴史を感じさせない大らかさが心地良いいんだよなあ。やってること、殺戮、謀略だったりするけどね。
実は血みどろ劇場だったりする古事記のカバー画が無残画で名を馳せた月岡芳年の「素戔嗚尊(スサノオノミコト)出雲の簸川上に八頭蛇(ヤマタノオロチ)を退治したまふ図」ってのも粋です!!グラフィカルでポップなアレンジがぴったり。かっけー!
実際、須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するシーンのポップさ(?)たるや・・・

「えいっ」
ぼそっ。
「えいっ」
ぼそっ。
「えいっ」
ぼそっ。
「けっこう疲れるなあ、えいっ」
ぼそっ。
「えいっ」
ぼそっ。
「後、二個かあ、えいっ」
ぼそっ。
「これでしまいじゃ、えいっ」
ぼそっ。

ええぇぇえぇーってなるじゃん。古事記を知らなくたって須佐之男命、知ってるじゃん。八岐大蛇、知ってるじゃん。須佐之男命が八岐大蛇を退治したこと、知ってるじゃ~ん。そんな全国民が知ってるような一大バトルシーンでさえ、緊張感なさすぎぃぃ。ゆっるー。おもろ!!

と、終始こんな感じで、名だたる神々がお目えし、ふんわり日本建国、統一&統治について学べます(?)。

以前、町田先生が訳した「宇治拾遺物語」を読んだ時にも思ったんですが、古式ゆかしい文体の読み物をこんなにも砕けた感じに出来るの、凄すぎない?
ご近所感が半端ないの。そこら辺で起こってるみたいな身近さで、臨場感があるんだよなあ。
こんなにもガラッと作品そのものを自分色に染められるってなかなか出来ないことじゃない?!町田康マジック!とんでもない意訳技術!!
ご興味ある方、是非読んでみて。宇治拾遺物語「奇怪な鬼に瘤を除去される」が無料で公開されております!

気に入ったら、本作もどふぞ。本当に面白いから!
古事記どころか、上から読んでも町田康、下から読んでも町田康、どこから読んでも町田康なんで、訳もの以外の作品も是非。

町田康a.k.a町田町蔵カラーに染まろう!「爆裂都市」も見よう!

ということで、推します。


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