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2023年の映画とわたしーaftersun

あの時の父と同じ歳になった今、20年前に父と二人きりで過ごしたひと夏を記録したビデオを再生する――

人生において、何が起こったか、という事象としての事実は一つだけである。あの夏、11歳の自分が31歳の父と一緒にバカンスを過ごしたということ、もう父には会えないということ。
でも、その事実が自分の中でどう意味づけられるかは、経験を重ねたり、新しい人と出会ったりしながら時を経る中で如何様にも変わっていく。

現在ソフィアは31歳、小さな子どもと同性のパートナーを持つ女性であることが分かる。子どもを持つ親として、「当時の父は子である自分をどう思っていたのだろうか?」、同性のパートナーを持つ者として、「当時の父は自分の性的指向に悩んでいたのではないだろうか?」……ビデオテープを再生するとき、そんなことを考えていたのかもしれない。
21歳でビデオテープを再生した時や41歳でビデオテープを再生する時にはまた別のことも考えていたのだろうと思う。

父とあの夏を過ごしたのは20年前のこと。その20年前には自分の人生に姿かたちなかった人の存在が時を越えてその出来事をどう意味づけるかを変える、作用し合う。

これって生き続けてみることの面白さであり、希望だ。

2023年、Under pressureがずっと耳をついて離れない1年だった。

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