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面白すぎないポッドキャストを探して

お皿を洗ったり、ときどき料理をしたり、台所に立つときによくポッドキャストを聞いています。

作業をするときは聞き流せるような音楽を好んでいたのですが、ちょっと趣向を変えて、人が話している番組を聞きたいなとポッドキャストを聴き漁りはじめました。

おすすめに上がってくる本や映画関係の番組を中心に聞いてみましたが、内容は興味を惹かれるものの聞き取りにくいものが多いのが難点で、なかなか聴き続けたい番組が見つかりませんでした。


外国語を勉強していて気がついたのですが、どうもわたしは耳から情報を得るのが得意ではなく、フランス語でも日本語でも聞き取りが苦手です。日常生活でも声で指示されたことより文字で指示されたことの方が記憶に残りやすく感じます。
音声よりも映像やイメージ、もしくは文字や図で理解する方が得意です。
だから発声の聞き取りにくいポッドキャストを聞いていると、聞き取りが苦手な分、ストレスに感じます。

あんまり面白すぎる番組も困りもので、知らなかった本や映画の名前、アーティストの名前などが一度で聞き取れず、手を洗ってポッドキャストを一旦止めて巻き戻して書き溜めて、と繰り返しているうちに、作業が進まなくなってしまいます。

たとえば人気の言語学のポッドキャスト。内容はとても面白かったのですが、細かい発音の話など、うまく聞き取れないと気になって、何度も手を止めては行きつ戻りつしてしまいます。
深く考えたいテーマを扱っており、作業そっちむけで調べ物を始めてしまったり、自分の考えを書き留めておきたくなってしまうので、そのうち聞かなくなってしまいました。
それなら作業をしていないときに聴けば良いのですが、両手が空いているときは、音声よりも文字から知識を得る方が集中できるんですよね。


いろんな番組を聞いてみたなかで今、一番気に入っているのは、『アフター6ジャンクション』の"週刊映画時評ムービーウォッチメン"です。これは毎週聞いています。

ライムスター宇多丸さんの滑舌がよく、声のトーンがクリアなので作業をしながら雑音の中で聴いていても耳のストレスが少ないところが好きです。

それに内容が過密過ぎずちょうど良い。かといって聴いていて虚しくなるような中身の薄さでもありません。適度な面白さがありつつもバランスの良い気軽なトークで、聞き流しやすさが丁度良いのです。

宇多丸さんが毎回どう映画を褒めるのかも興味深い点です。宇多丸さんとは映画の好みが全く合わないようで、わたしには全然面白くなかった作品でも、宇多丸さんの手に掛かると、アッと驚く視点から作品を褒めてくれるのです。

あんまりにも何でもかんでも褒める人は、批判能力に欠けているか、自分の感性に自信がない、もしくは度胸に欠けてるようで馬鹿馬鹿しく感じてしまってあまり好きではないのですが、宇多丸さんの褒めに徹した姿勢は、ここでこう褒めるのか!というお家芸のようで、天晴れ。毎回、この作品はどう褒めるだろうか、と期待して聞いています。
辛口で斬ったりボロボロに貶すことはないので、誰でも安心して聴ける番組かと思います。

しばらくの間、アフター6ジャンクションの中でも、ムービーウォッチメンのコーナーだけを聴いていたのですが、ランダムに流しているうちに、さらに面白いコーナーを見つけました。


それが"ブック・ライフ・トーク"。

ゲストの読書遍歴や本にまつわるこだわりを伺ったり、記憶に残る1番古い本を尋ねたり、はたまた言うのが恥ずかしいまだ読んでいない名著は?など、本について語り合う企画です。

本の話を聞くだけでも面白いし、ゲストも大変豪華。たとえば、

前回のゲストは翻訳家の岸本佐知子さん!

たまたまシャッフルで流れてきた岸本さんの回がめっぽう面白くて、料理の手が止まりました。

聞いたこともないような知らない本がたくさん紹介されていて、どの本も面白そうです。メモするために何度も止めて戻して書きとめていたので作業がはかどりません。なんと魅力的な本のセレクションでしょう!

岸本さんのことは翻訳されている作品を読んで名前を知っていたのですが、トークが軽妙かつ洒脱で、俄然、岸本さん本人に興味が湧いてきます。番組で語られる、翻訳家になった経緯も励まされるような良い話でした。


岸本さんの回を2回聴いたあと、バックナンバーを調べると、翻訳家の柴田元幸さんも登場しているではありませんか!柔らかな口調でいてピリッと辛味の効いた柴田さんのトークも、読書歴も、一聴の価値あり。
バックナンバーをさかのぼって、いとうせいこうさん、みうらじゅんさん、朝井リョウさん、と個性的な面々のブックトークを巡っています。読書の話は刺激的で、聞き出すととまりません。

面白すぎるポッドキャストは、メモをする度に手が止まって作業が捗りません。ですが読みたい本リストが充実していくのを眺めていると、ムフフとひとり微笑んで、満ち満ちた気持ちになります。

耳を賑わせて作業を捗らせるつもりが、両手が止まって本末転倒ですが、読書の楽しみに心も賑わって、ホクホクするのもまた良しとしましょう。



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