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どこでも住めるとしたら?で選んだのは長野県

去年の9月にフランスから日本へ帰国して、パートナーとふたりで住処を探し始めました。


初めは生まれ育った神戸か関西圏でお店をする予定でした。いくつか物件も見て回りました。地元には幼稚園や小学校からの友達がいて、美味しいお店もたくさんあって、居心地がよい場所です。

でも2週間ほど経つとなんだかワクワク感がなくなりました。
確かに神戸は好きだけど、神戸は時々帰ってくるからこそ好きな街なのかもしれない。7年前にパリへ引越したときは、神戸もとい日本が好きじゃなかったのに、今こうして地元を好きになったのは遠くに住んだからこそじゃないか。

飽き性な私が一番恐れるのは、飽きてしまうことです。せっかく故郷の街を好きになったのに、ここに再び住んでしまったらすぐに飽きてしまうのでは、と危機感を感じました。それにもう少し、知らない場所に住むという冒険を続けていたい。


そこでガラリと進路を変えることにしました。


「日本のどこにでも住めるとしたら、どこに住みたいか?」

パートナーと話し合いました。


とりあえず関西以外で考えよう。関西以外ならどこがいいだろう?東京は一度は住んでみたい街だったけど、大都市はパリでもう十分味わった。東京は家賃も高そうだしね。今度は都会とは異なる場所や価値観で、新しい生活を築いてみたいな。じゃあ沖縄は?シャルキュトリー(豚肉を中心とした食肉加工食品のこと。自家製シャルキュトリーをメインにした食堂を開く予定です)をするには暑すぎる!逆に北海道?ん〜もうちょっと都心部に出やすいところが良いかな?確かに、自然があってしかも東京方面へ出やすい場所だと良いかも。お店するなら美味しい食材があるところがいいよね。そういえば長野県出身の友達がインスタグラムに載せていた写真がとっても素敵だったから、長野へ行ってみようか?


ということで、レンタカーを借りて去年の10月中旬から1ヶ月間パートナーとふたりで長野県を巡る住みたい町探しの旅へ出たのでした。


 


長野県、と一口に言ってもかなり広い県で土地勘もありません。旅の前に、まずは大阪にある長野県への移住相談を行っているブースへ行って情報を収集するとともに、長野県のいくつかの市町村が移住プロモーションのために大阪で開催した移住相談会へも参加してみました。

長野といえばとにかく寒い!というイメージでしたが、南と北では気候も異なりますし、積雪量も地域によって差があります。
名古屋方面へのアクセスが良い地域と東京方面へのアクセスが良い地域など、交通機関も東西南北のエリアで利便性が異なります。
雪かきは苦にならないか、どれくらいの規模の町にしようか、お買い物するのに車が必要な場所でも良いか、イメージを膨らませます。

ここで得た情報を元に長野県のエリアごとの特色や気候を比べて、ざっくりとどの辺りを巡るか計画を立てました。

移住候補地として訪ねてみたい場所を絞り込んだら、移住体験住宅に連絡です。

長野県は移住希望者のための施設やイベント、助成金が充実していて、例えばいくつかの市町村では移住を検討している人向けに、無料や格安で滞在することのできる移住体験住宅を貸し出してくれています。


この制度を利用させてもらえたことで、宿泊費を抑えて長野県を周遊することができたことはもちろん、夜の寒さを実感したり、直売所で買ってきた地元の食材をお家で調理して食べたり、ゴミの出し方を教えてもらったり、渋柿をお裾分けしてもらって干し柿を作ってみたり、短期間ですが住んでいるように滞在できたのが良かったです。

市町村によっては、移住希望者向けに町役場の方が町を案内してくれるオーダーメイドツアーを用意してくれるところもあります。このツアー、参加して大正解でした。

町役場の人の紹介で人と知り合ったり、自分たちで観光しただけでは知れないローカルな情報や穴場を教えてもらったり、もうすぐ空きそうな物件を紹介してもらえたお陰で実際にそこへ住むことになったり、引越しをする前から色々と相談に乗ってもらうことができました。
この時に仲良くなった人の紹介で引越ししてすぐにバーでのアルバイトも決まりました。

移住前から町に人との繋がりができたことで、縁もゆかりもなかった土地ですが、特に不安を感じることもなくお引越しすることができたと思います。


こうして去年の秋に1ヶ月間、長野県を東西南北ぐるりと周り、いくつもの町を見比べる中で、パートナーと私のどちらもが「ここ住みたい!」と思える町に出会うことができたのでした。



その後、急いで運転免許を取りに行き、中古車を購入し、不動産とのやりとりを経て、無事に今年の1月末に長野県へお引越しすることができたところです。


引っ越して以来、どうして長野にしたの?なんで都会からわざわざこの町にしたの?と何度も尋ねられます。

その度にフィーリングです!と答えています。

いま住んでいる町は、たまたま良い期間に移住体験住宅が空いていたから訪ねてみた町で、旅行の予定を立てていた時にはノーマークでした。
それでもいろんな町を訪ねたなかで、ここが1番気に入りました。なぜか他の町とは違って、この町では"住む"というイメージが湧いてきたのです。

下調べの時点では、あの町が気に入りそうだな!という魅力的な町もあったのですが、実際に行ってみると全く惹かれなかったということもありました。

思い切ってまったく知らない土地にお引越しするのも一興ですが、時間と機会が許すなら一度その土地に立ってみて、心が動くかどうか感じてみることは大切だなと思います。

情報収集や口コミも欠かせませんが、その上で、1番信頼できるのは自身の直感やフィーリングではないでしょうか。
情報や利便性の比較だけで決めてしまうと後々予想外のできことが起こったときに後悔しそうだけど、理屈に依らないフィーリングで決めた選択肢なら、予想外の困難があったとしても楽しめる、というのが私の感覚です。

まだ住んで1ヶ月が経ったところですが、毎日面白く暮らすことができていて、この町に来て良かったなと思っています。
ちょっと住む場所を変えるだけで、生活ってこんなに変化するものなんだな!という驚きがあり、日々が新鮮です。


新鮮なことといえば、例えばスキー場。

いままでスキーやスノーボード旅行って、えいやっ!と心を決めてお金をかけて行く特別で贅沢な遊び、もしくは別荘を持ってる人の愉しみ、というイメージでした。

でも雪国に住むといつでもスキー場に行き放題です。県民割でお得なスキー場もあれば、町の組合に入るとリフト券を貸してもらえる特典も。

道具さえ揃えてしまえば(1週間くらい滞在するならレンタルより中古で買ってしまった方が安いくらいです)、半日だけ滑りに行ったり、ナイターだけちょこっと滑りに行ったり、時間のあるときに気軽に滑りに行くことができる、この気軽さに驚きました。

スノーボードは始めたばかりですが、週に何度もいけるので上達を実感できるのも楽しいところです。

いままで冬はただ寒いだけの嫌いな季節でしたが、スノーボードを始めてから雪が降ると嬉しく、冬が楽しくなりました。




他にも新鮮なことといえば、お風呂。

いま住んでいる町は、温泉旅館が有名な温泉街です。温泉がたくさん湧いていて、自宅に温泉を引いている人もいるそうです。一方で、物件を巡っていると、お風呂のない家も多々ありました。
というのも、町の組合に入って毎月の組費を支払うと、組合が運営している温泉に24時間365日いつでも入ることができるのです。

パリのアパートでは湯船無しのシャワー生活だったから、日本に帰ったら絶対に湯船がほしい!とは思っていましたが、まさか温泉に通い放題になるとは。

私たちの家は組合の温泉から徒歩30秒ほど。
引越す前から、毎日温泉最高だよ!とは聞いていましたが、そうは言っても毎日わざわざ温泉へ行くのはめんどくさいし、湯冷めしそう。家のお風呂で十分かなと思っていました。

ところがどっこい、いまではすっかり毎日温泉生活で、最高です。

温泉って身体の芯まで温まって、湯冷めもしないし、お家に帰ってしばらくは暖房をつけなくてもポカポカ。

手足をいっぱいに伸ばして浴槽に浸かれるのも最高ですし、家の湯船と違って追い焚きをしなくてもずっと熱々の源泉掛け流しで湯が熱い!これが気持ち良いんですよね。

スノーボードで筋肉痛になっても温泉に浸かると極楽です。むしろ温泉を堪能するために、身体に鞭打ってスノーボードをしているようなもの。

温泉は地域の社交場になっていて、ここでご近所さんと自然に顔見知りになりお話できるのも他所からやってきた者には有難い場所です。





この町には、パリや神戸に比べて不便なこともたくさんあります。
美味しいコーヒーや紅茶が手に入らないこと、日用品や家具の選択肢が少ないこと。映画館も遠いし、スーパーへ行くにも車が必要です。車ってガソリン代がかかるし、冬は暖房費も馬鹿になりません。

でもいま毎日がすごく充実しています。
ゼロから新しい土地で生活をつくり、住処をつくり、ひととの関わりをつくって行くのがこんなにも面白い経験なのだと、しばらく忘れていました。
これから新しく仕事をつくっていく中で、ますます面白いことができるのではないかと思っています。

どこに住もう?と問いかけたとき、心のワクワクに耳を澄ませ、あてもなく旅に出ることができて良かったです。


どこでも住めるとしたら、私はいまこの町に住みたいです。



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