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朝マックで戦士の休息 (でも「闘わざる者食うべからず」)

忙しくて更新する間が無い。他に書きたいことが沢山あって熟成させている記事もあるのに、帰宅後夕餉の支度を済ませ食事をしている間に体の電池が切れてしまう。

特に今週はハードだった。訳あって一週間前に会社で爆発__感情の大噴火、涙の濁流、火砕流の如く止まらない鼻水__を起こしてしまった。大規模噴火だったからか、感情の沈静化と共にありとあらゆる事への情熱も消えた。

それゆえ今週は腹に力が入らず惰性の日々が続いた。時折デスクから立ち上がると星がキラキラ目の前に飛んでいる。惰性と低血圧の因果関係はわからない。

帰宅後に習慣づけていたランニングも一週間休んでいる。資格の勉強も机に着いたとたん眠ってしまう。気が付いた頃には24時である。毎晩やるせなさを抱いて眠る。(六時間後には起きて弁当を作らねばという使命感だけは何故か残っている。)

職場で爆発してから一週間たった金曜日の今朝、何故かホットケーキが食べたくなった。五時のアラームで目覚め、やり終えていなかった家事を一通り済ませた後、時間が悪戯に余ってしまった。そこで今朝は朝マックにしようと思い立った。

家から歩いて数分のところにマクドがある。(関西人は店とメニューの呼称を分ける)六時前から散歩に出かける感覚で家を出ると、既に仕事に向かって走り出すバイカーや朝から汗を流すランナーが通り過ぎていく。自分は出勤時間が早い方だと思っていたけれど、当然ながら私よりも早く出勤したり運動したりする人はいる。そんな当たり前の事に気づく朝だった。

近所の雑木林から幾重にも鳥の鳴き声が聴こえる。昨晩の雨で湿気の中に青々とした匂いがたちこめている。明けたての町の清潔さに浸りながら歩く。しばらくして積水ハイムのCMみたいな大きなマクドが出てくる。ああいう家に家族と住むのが憧れだったりする。いったいどんな仕事をすればそんな暮らしができるのだろうか…。

ホットケーキセットを準備してもらってる間にがらんどうの店内を見渡す。キムタクのポスターに泣きボクロを見つけたり、今度始まるテキサスバーガーの味を想像してみたり、私が今日一番最初のお客さんかなとか考えたりしてるとホットケーキセットが完成。

朝マックなんていつぶりだろうか。特にホットケーキセットなんて3年ぶりくらいだろうか?子供の頃はしょっちゅう食べてたのに。いつから私はカロリーや糖質の数字を気にするつまらない大人になっちゃったのだろう。

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久々のパンケーキセットはオールドアメリカンなパッケージで萌える。ロゴとムーンフェイスのコックさんが丸々してて愛らしい。おかげで早朝から食卓が映える。金曜日の朝に相応しい。

私にはマクドのホットケーキを食べる上で必ず行う儀式がある。バターとシロップをたっぷり載せて一瞬だけグチャっと混ぜるのだ。バターのスフレ感を残しつつ黄金色のシロップでクタッとさせる。最初の一口は三段一気に切って食べる。生地を食べるというより粉の風味がついたシロップを味わっている。

トレーの隅に溜まったシロップにも生地をダンクさせる。食べ方は違えどカブトムシのようにすする思いで味わう。(こちらは砂糖とカラメル色素)こうすることで英気が養われる。勿論バターもシロップも全部使う。子供の時からこの食べ方しか知らない。

先程も述べたように自分はくだらない大人になったと思う。余計な知識が増えて行動が制約されたように感じる。私は極度の心配性ゆえに人より危機管理能力が高いらしく、経験則フィルターが働いて自由に衣食住を楽しめない。コンビニで30分悩む、空腹なのに店を決めきれず昼食難民になる、爆買いしに一時間ユニクロに籠もっても手元をみたら地味なパーカーが一枚のみ。引っ越しは6年間で3回。(ちゃんと訳もあるの...)。子供の頃の私が見たら、くだらない、というより情けない大人になったな!と言うに違いない。

そんな私が大人になって得をしたこともある。それはブラックコーヒーの美味しさが判るようになったこと。特に山積した業務に心身くたびれた週末の朝には最高である。やるせなさも朝のコーヒーの苦さでリセットできる。

たとえ何も果たせなかった週でも、こうやってご褒美を与えよう。愛する儀式で自分を讃えよう。現代人はもはや、誰かに優しくするのにもエネルギーがいる。それは先日、残業中に響いてきた誰かの談笑が聞こえた時のことである。終わらぬ業務で苛立っていた私の心から人間性を疑う言葉が無意識にこぼれた。明言はしないでおく。ミレニアル世代の私の心にもはや仏はいない。神や仏は今や汎用過ぎて私にはよく分からない。最近はコンビニにも神がいる。セ○ンの焼豚丼が「神的旨さ!」だとか神的美人のアイドルとか。(遠藤周作が現世で生きていたら何と苦言するだろうか)

健康とか賢明とかしばらく忘れようと思う。いい人ヅラや正義の仮面も取ってしまおう。気が済むまで無になろう。嫌でも無になれない日々はいずれやってくる。闘わざるもの食うべからず______仕事と生活のテーゼは生きることに直結しているからである。

粉モンと砂糖とカフェインに背中を押してもらった。紛れもなく心のビタミンである。ただし毎日摂取するには劇薬である。週に一度が望ましい。

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