見出し画像

あの日を思い出した、クリスマス。

今日はクリスマス。街はいつもより楽しそうで、おしゃれなクリスマスソングが流れる。

クリスマスがきっかけで思い出したことがある。

「NANA」という映画と重なった気持ち。Netflixで見つけて、なんとなく観ていたら、映画館で観ていた当時24歳くらいだった私を思い出した。

若くて、何も知らなくて。それでも一生懸命毎日を過ごしていて、もっと違う誰かになりたいと思っていた。

「私は、どうして選ばれないんだろう。」そんな答えのないことを、必死に考えていた。

ーーーーーーーーーー

「NANA」の2人の主人公、バンドのボーカルをしていて自立したナナと、可愛いけれど自分には何もないと思っている奈々。いろんな要素が散らばっているのだけど、奈々が上京するきっかけになった章司が、奈々と別れて、サチコを選んだエピソードがある。

サチコは章司と同じバイト先で、放っておけないタイプ。終電を逃したらタクシー代が大変なことになるのに、ヒールの靴を履いてきて駅の階段で転んで、心配する章司に「わざとだよ?」と言ったシーンは、今30代前後の女性だったらきっと知っているはず。

章司のバイト終わり、奈々が待っていると知らない章司が、奈々の目の前でサチコに「彼女と別れる」と言ってしまう。心臓が止まるんじゃないかというシーン。目の前で起こらなかったとしても、もしかしたらどこかで起こっているのかもしれない。

当時の私は、奈々のように「今すぐ会いたい」と言ってしまいがちなタイプだった。そんな奈々に疲れてしまった章司。きっと私にも同じことが起きていたのだろうと思っている。

はっきりとした理由をつげられることなく、当時の彼氏と私は終わってしまった。「来年の今頃には家族になってるかもね」と3年前に言っていた彼だった。

彼の会社が倒産して、実家に帰るから遠距離恋愛になって。それでも月に1回は会いに来てくれていて、ついに私の地元で就職を決めてくれて。私は彼の家の近くに部屋を借りて、一人暮らしを決めた矢先だった。

彼の就職先で何があったのかは知らないけれど、とってもモテていたことは共通の友人から聞いた。とくに放っておけないタイプの子と仲良くしているらしい話も聞いていた。私は勝手に「サチコだ」と思ったのを覚えている。

私は今よりもちょっと若かったし、奈々っぽいところはあったけれど「放っておけないタイプ」とは言われたことはなくて。別れ話をしていて、最後に彼が放った言葉。

「杏奈は、ひとりでも大丈夫そうだよね。」

そうなんだ。知らなかった。

そのときは、奈々の気持ちみたいに「選ばれない」ことが悲しくて、つらくて。何か考えていないと、いつでも泣いてしまいそうだった。ひとりじゃ全然大丈夫じゃなかった。

特に夜はつらさが増した。私の仕事の帰り道は、彼の家の前を通らなければいけない。すごく遠回りをすればいいのだけれど、23時頃まで仕事していたからそんな気力もない。車で通りかかる一瞬で、つい彼の部屋を見てしまう。明かりがついていても、ついていなくても、私の気持ちは揺れた。

どうしたらよかったんだろう。何がいけなかったんだろう。

そんな毎日でも仕事は休めない。もうそのときは店長だったから、何もなかったふりをしてやり過ごしていた。いや、そう思っていたのは私だけだったかもしれないけれど。

ーーーーーーーーーー

つらくて、どうしようもなくて。すがるように数年ぶりの友人に連絡をした。そのときにドライブに連れて行ってくれて、話を聞いてくれたのが、その後9年一緒にいることになった彼だった。

そのときはちょうど12月で、一緒に出かけたお台場はクリスマスのイルミネーションがキラキラしていた。久しぶりに会った彼とはずっと一緒にいた友人のように話が合って、楽しく話していたのに。

幸せそうなカップルを見かける度に「元彼は今だれと一緒にいるんだろう」という思いが浮かんで、イルミネーションがにじんだ。

そして、当時の私に寄り添ってくれた彼と、その後の9年が始まった。それも、あっという間に過ぎてしまったのだけれど。

ーーーーーーーーーー

今年の誕生日。私の中で「章司」だと思っていた元彼から、LINEでメッセージが届いた。何年ぶりかわからないほどの連絡で、何事かと思ったけれど「忘れるわけがない」という私のお誕生日を祝ってくれた。

そうなんだ。知らなかった。

なんて。疑っても仕方ないし、お誕生日だから素直にうれしかった。

話によると、数年前に結婚して、今も私の地元に住んでいるそう。私はてっきりあのときの「サチコ」とすぐに一緒になったのだと思っていたから、少し意外だった。でも、幸せそうで良かった。

私は、元彼の結婚を知る度にホッとする。そのとき一番いい男だと思った彼が、誰かに選ばれている。「でしょ?」と言いたい、そんな感覚。どんな目線かはわからないけれど。

今は今で、私はとても幸せで。一つずつの思い出に感謝している。

そんなクリスマスの夜。

いろんなことを思い出した、少し特別な夜だった。



ここまで読んでいだだき、ありがとうございました!もっとすてきな記事をお届けできるように、頑張ります!