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研究者という職業

こんにちは、市橋です。
研究者として、充実した毎日を過ごしております。

今回、研究者という職業について知りたい方に向けて書きます。

とくに進路に迷っている学生さんにとって、「研究者は実際にどんな仕事をしている?」「メリットやデメリットは何か?」気になりますよね。研究者の目線でお伝えします。

1. 研究者の仕事の内容

まず研究者と言っても、さまざまです。

大学研究機関に所属する研究者もいれば、民間企業に所属する研究者もいます。また研究活動で給与をもらっていない在野の研究者もいます。

研究分野もたくさんあります。例えば、生命科学であれば、生物学、農学、医歯薬学があり、さらに細かい研究分野があります。それぞれに学会や研究会という組織があります。

また研究にはいろいろな段階があります。全く新しい知見を発見する基礎研究から、社会で実用化させる応用研究まであります。

さらに研究者の職位によっても研究室での役割が違います。実験や調査を実際に行う研究者と研究室全体をまとめる研究主宰者がいます。

このように、所属、分野、段階、職位によって仕事内容は違いますが、研究者として共通の仕事内容はこちらです。

【研究者としての共通の仕事内容】
・ 研究計画
・ 実験,解析
 議論
・ 成果発表

研究計画
個別の実験目的、手法、スケジュール等を決めます。

実験,解析
具体的に手を動かす部分です。なんらかの結果が出ます。

議論
結果を目的と照らし合わせて解釈します。また過去の研究と比較したち、専門家と相談したりします。

成果発表
実験計画から議論を繰り返して、得られた知見を外部に向けて発表します。学会等での口頭発表やポスター発表があります。また成果をまとめて論文として発表します。多くのケースは査読付きの論文として投稿するため、専門家の厳しい審査があります。

また所属機関・職位・研究内容によって、以下の追加の仕事もあります。

【研究者としての追加の仕事内容】
・ プロジェクトの立案と資金調達
・ 特許出願
・ 教育に関する業務
・ マネジメント

プロジェクトの立案と資金調達
個別の実験計画の前に、プロジェクト全体の計画を立てます。プロジェクトを統括するリーダーの仕事です。またプロジェクトを推進するための研究費を組織内外から獲得して研究がスタートします。

特許出願
波及効果がある発明であれば特許を出願します。学会発表等の外部に公開する前に行います。必ずしも全ての研究が特許になるわけではありません。

教育に関する業務
教育機関である大学では、講義や実習などの教育に関する業務があります。また国の研究機関や民間企業の研究者でも非常勤講師として教育に関わることもあります。

マネジメント
研究室を主宰する方は、マネジメントとして人事や予算管理の業務に重きが置かれます。

2. 研究者になるメリット

それでは、職業として研究者になるメリットはなんでしょうか?

【研究者になるメリット】
・好きを仕事にできる
・時間の自由度が高い
・国際的なつながりができる
・AI時代でもなくならない職
・クリエイティブでやりがいがある

好きを仕事にできる
自分の興味を追求することができます。実際、多くの研究者は好きから研究者を志して、研究に熱中するケースが多いかと思います。

時間の自由度が高い
多くの研究が高度に専門化されているため、担当する研究者に実験のスケジュール管理等が任されます。また所属する組織によりますが、裁量労働制を採用されているところもあり、時間的拘束がほぼ無い研究者も少なくないです。

国際的なつながりができる
多くの研究分野は、国内だけでなく国外にも専門の研究者がおり、学会等が存在します。そのため国際学会等で世界中の研究者と意見交換する機会があります。またほとんどの分野で英語が共通言語なので、日常的に英語の論文を読んだり、英語でのコミュニケーションができるようになります。

AI時代でもなくならない職
AI技術の導入により多くの職業が必要なくなると予想されております。研究分野にもAI技術が導入されておりますが、研究者が生み出す専門と経験による一連の知的活動はAI技術では実現が難しく、他の職種に比べてAIに代替される可能性はかなり低いです。また情報科学の分野ではむしろAI技術を開発する側になります。

クリエイティブでやりがいがある
研究活動はまさにクリエイティブそのものであり、世界を大きく変える力があります。例えば、コロナ等の感染症や食料問題、環境問題といった人類が共通して抱える課題の解決に貢献できます。また論文を書くことで人類の知識の蓄積に名前が残る仕事になります。

3. 研究者になるデメリット

続いて、研究者のデメリットとよく言われることも紹介します。

【研究者になるデメリット】
・収入が低い?
・安定しない?
・転職が難しい?
・男性が多い?

収入が低い?
所属組織や職位によりますが、国税庁の資料によると、日本人の平均年収よりも高いとされております。また一般的にアカデミアよりも民間企業の方が高いとされております。さらに研究で実績をあげることで、講演料、発明特許、著書、事業化からの収入も期待できます。研究者の多くの方が収入にあまり重きを置いていないため、このように言われているだけかもしれません。

安定しない?
多くの研究者とくにアカデミアの研究者は、任期制の雇用形態のため、確かに安定しておりません。ただ今の時代、どのような職種でも絶対に安定していると言えない状況なので、研究者に限った話ではないかと私は思います。むしろ時代のニーズに合った分野であれば、今後重要度があがることが予想されます。また研究者が安定しないと言われる所以として、ポスドク一万人計画で競争率があがり、職がない研究者が生じるというポスドク問題がありました。現在では研究者のキャリアパスが見直され、雇用形態の改善や多様なキャリアパスの支援がなされております。

転職が難しい?
専門職だから転職先が限定されるという文脈でよく言われることです。ただ必ずしも転職が難しいかと言うと、むしろ研究者の経験が求められる有利な側面もあります。同業種の研究職はもちろん、リサーチアドミニストレーターやメーカー企業の営業など専門知識を活かした職があります。実際、私の周りの研究者も別の業種に転職されている方が多くいます。

男性が多い?
確かに男性の研究者が多く、特に管理職になると顕著です。ただ多くの大学研究機関や企業で女性活躍推進の制度が導入される等の改善が図られています。また最近では学会のシンポジウム等で講演者の男女比が意識されるケースが多くなっておりますので、分野によっては他の職種よりもむしろ女性の活躍が進んでいるかもしれません。

以上のように研究者のデメリットと考えられていることをあげましたが、現在では少し状況を変わってきていると言えます。

4. まとめ

AI技術の進展や感染症の流行など、時代が大きく変わろうとしている今、クリエイティブな職業の一つである研究者は今後注目される職業になることが期待されます。

また研究職のデメリットとこれまで考えられていた特徴も時代の変化によって必ずしもデメリットではなくなっています。

もしクリエイティブなことをして世界を変えたいと思っている方、研究者という職業を一つの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

研究者の魅力についてもっと知りたい方へ、私が学位を取得して研究者になった頃に読んだ本をオススメします。

ブレイクスルーの科学者たち

また知り合いの研究者から紹介された本もオススメします。
この本にも研究者のロマンが詰まってお り、世紀の大発見がどのように達せらたのか、研究者たちのプロフェッショナルな仕事を臨場感を持っ て体感できます。

時を刻む湖

今回は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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