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核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン

G7 広島サミット 2023 のニュースを見て、私が会社員になって東京に出て来たばかりの1986年5月、東京で第12回先進国首脳会議 (東京サミット) が開催されたときの様子を思い出します。日比谷公園に程近かったオフィスのまわりも大変物々しい警戒が行われていました。

1986年と言えばソ連の崩壊 (1988 - 1991) の直前で、また、東京サミットの直前にはチェルノブイリ原発の事故が起こったばかりでした。東京サミットでは「東京宣言」「東京経済宣言」のほかに「国際テロリズムに関する声明」「チェルノブイリ原子力事故の諸影響に関する声明」が採択されています。

あれからすぐ後、ソ連が崩壊し東西冷戦が終焉したように見えました。1970年に発効した「核不拡散条約 (NPT)」が機能しているなかで東側の代表ともいえるソ連が崩壊し冷戦が終焉したわけですから、もし核不拡散条約が本当に効果があるのであれば、条約が目的とする核不拡散、核軍縮、そして核廃絶がもっと進んでも良かったように感じます。

しかし実際には現在、核不拡散条約に加盟しない核保有国が存在するだけではなく、核不拡散条約に加盟しているはずのロシアや中国の核が、まるで米国や日本が核や核の傘を手放せない正当な理由のように説明されています。まったく核不拡散条約が世界の核廃絶のために機能していないことを端的に表しているのではないでしょうか?

状況がどうなろうとも核保有国が核を手放したがらなかったことが現状を作り出しているような気がします。核抑止の理論は米国や日本など「こちら側」の国々だけが核を持つ根拠にできる理論ではありません。「あちら側」の国々も同じ理論で核を持ちたがるわけです。

もし何かの理由で現状の核保有国と対立する国が生まれたら、その国は核抑止を根拠として核保有を志向してもおかしくないということです。国家間の対立のいかんにかかわらず核兵器をこれ以上拡散させないようにするには、核保有国が核抑止に固執しない道を選ぶ以外ない気がします。

今回の G7広島サミット 2023 で発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」はそういう意味で、今までと同じく、核抑止を前提とした上でまったく成功していない核不拡散、核軍縮の具体性のない言葉を並べただけのようで、理論的にまったく前進が見られないという悲しい感想を私は持ちました。

そしてもう一点。この広島ビジョンでは2023年1月10日現在、92か国の署名と68か国の批准を集めている「核兵器禁止条約 (TPNW)」について全く触れていないことです。

現在核を持たない国々が核兵器の禁止を求め、また、核兵器の開発・実験・生産・製造・取得・専有・貯蔵の禁止を自らコミットしているわけですから、これ以上明確に核兵器不拡散のコミットメントと核兵器廃絶に向けた明確なメッセージを示している国々はないわけです。

この核兵器禁止条約と条約署名・締約国に対してなにもリスペクトしない広島ビジョンには私は大変がっかりしています。

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