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2023年2月に読んだ本まとめ

今月は結構忙しかったのですが、それなりに本を読むことが出来ました。特に『地図と拳』はめちゃくちゃ面白かったです。Kindleで読んでいたので実感はなかったですが、本屋で見かけると異常に分厚い本でした。
また、COTEN RADIOの深井さんが書かれた本を2冊ほど読み社会学に興味がでてきたので、3月は読んでみようと思います。

文芸書

小川 哲著 『地図と拳』

ラストシーンが美しすぎるんだけれどもそれ以上に、「日華青年和合の会」やら「仮想内閣」のように満州やら当時の日本なんかの情勢を巡る複雑な状況を鮮やかにそして分かり易く描写しているところが本当にすごい。
この説明を見るためだけにでもこの小説は読む価値があるなぁと思わされる。参考文献の数とその情報を頭に入れたうえで大きな齟齬なく、心動かすストーリーを紡ぐってのはマジですごい。
キャラクタも非常に魅力的で、無敵超人の細川はもちろんのこと、高木の人間臭さも、明男や丞琳のおぼこさも、中川の哀愁も、安井の弱さも、石本の強さも、孫悟空の奇妙さもいずれも印象深い。
個人的には町野軍曹の「俺に言われたから撃つんだと自分に言い聞かせろ」という台詞が好きです。
あと、明男の船のシーンも高木との対比でご飯何杯でもイケるぐらいよかった。
著者の作品は初めて読んだのですが、この人凄いのでは?と思いました。非常によかったので別途まとめたいところです。

朝井 リョウ著『少女は卒業しない』

「四拍子をもう一度」が面白かったし、ちょっとした甘酸っぱさもありメリハリが効いていて最も好みです。「the long and winding road」いいですよね。
「在校生代表」も非常に良かった。自分の高校であの送辞があったら面白いながらもちょっと引く気がしますね。
「夜明けの中心」は私も高校が取り壊されることになって、夜にその校舎に忍び込んだりしたので懐かしかったりしました。
「寺田の足の甲はキャベツ」もなんか思い出すことがありましたなぁ。別に別の未来に向かうから離別しよう見たいな記憶はないですが。
「ふたりの背景」は正道君の描き方が好みでした。
「エンドロールが始まる」は甘酸っぱく爽やかな口当たりでした。

千早 茜著『しろがねの葉』

ページをめくる手が止まらない小説だった(Kindleで読んだので実際のところめくっちゃいないけど)

時代小説ではあるものの、主人公ウメの感覚は現代人に通じるものがあり、死別、離別を性差をより鮮烈に描き出すために、後から舞台を持ってきたんじゃないかと思いました。

前半の、喜兵衛に拾われ才能が開花していく辺りは『塞王の楯』と同じような流れでこういったストリーラインって流行ってんのかね?と思ったりしましたが、後半は全然違う話になったので、比較して読んでみると面白いのではないかと思ったりしました。

人文書

深井 龍之介著
『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』

COTEN RADIOのパーソナリティ深井龍之介氏の著作です。以前からCOTEN RADIOでも語られていたような歴史を学ぶ有用性が分かり易くまとめられていたので、記事にしてみました。

深井 龍之介, 野村 高文著
『視点という教養(リベラルアーツ)世界の見方が変わる7つの対話』

視点を持てば持つほど生き易くなると思って本を読んでいる節があるので、こちらの本は非常に楽しく読むことが出来ました。
個人的には社会の中で起こる現象を構造的に捉える文化人類学、社会学や、我々の基本OSである西洋哲学とは別の方向から世界を捉える東洋哲学、科学から我々が世界をどう認識しているのかを探る脳科学辺りはさらに突っ込んで本を読んでみたいと感じました。

中村 淳彦著『パパ活女子』

ふわっと出てきてしっかりと定義がない「パパ活」を、よく構造化して描けているなぁと感じました。この本では基本的には買い手である、おっさんの欲求からその構造を見ているのですが、そこから見たことによって、上手くいっているパターン、行ってないパターン(買い手が金額分のリターンを得ていないパターン、売り手が買い叩かれるパターン)などを綺麗に説明できている気がします。

ふわっとして定義がしっかりしていないものだけに、全く違う見方が出来る可能性もあったりするわけですが。

何を売っているのか把握していないパパ活女子の中に、この本を読んだ人が入れば売上めっちゃ上げられそうと思ったりしました。水商売でも、風俗でもなくパパ活に精を出すおっさんが何求めてるのかなんて、まぁまぁ自明なんじゃないのとは思うものの、私がおっさんだからこそ、そこが自明になってるだけなのかもしれないですが。

関係ないですが、この文脈で精を出すって言葉はややこしいですね。

植田 統著
『2040年 「仕事とキャリア」年表――日本の「雇用制度」は崩壊した』

興味深い内容だったので、以下の記事にまとめました。

実用書

鈴木 祐著
『YOUR TIME : 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』

安斎 勇樹著
『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』

何の気なしに読んだらよい本でした。
メンバーと1on1をやったり、ミーティングのファシリテーターをやる機会が増えて、さらに今月から他部署の人をまとめて進めるプロジェクトのファシリテーターもしないといけないので、本当にちょうど良い本でした。
本書では「問いかけ」を「見立てる・組み立てる・投げかける」の3つのステップに分けて良い「問いかけ」とはどういったものなのか?解説されています。一見「えっ、問いかけって、なんかありません?」って聞いたらええだけちゃう?と思ってしまいますが、それを3つに分けてこの本一冊かけて解説されているというのが「問いかけの」奥深さを物語っています。とりあえず聞いてみると、上記の3つのステップを経て出てきた問いかけでは大きな違いがあると思います。
ファシリテーションがうまいと言われている人達が実際のミーティングで、この本に紹介されているような問いかけをされているのを見かけることがよくあります、意識してなのか、していないのかはわからないのですが、こちらの本に出ているような技術を利用されているのだと思います。
また、自身のコミュニケーションスタンスを把握しておくというのは大事だと思いました。私はバリバリの整理タイプなので触発タイプに憧れたりすることがあるのですが、無理せず自分らしくファシリテートできればよいなぁと思ったりもしました。
逆に、本書で紹介されている、悪い問いかけの例を自分が良くやってミーティングがシラケたことが何度もあり、胸に来るものがありました。

フランチェスコ・シリロ著
『どんな仕事も「25分+5分」で結果が出る ポモドーロ・テクニック入門』

以下の記事にまとめました。

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