見出し画像

No.5 | 心がまあるくなるケーキ「kokoro」の舞台裏。

2008年6日28日に千葉県八千代台にオープンし、今年15周年を迎える小さなケーキ屋さん。
ひとつひとつ手作りのケーキや焼き菓子の甘い香りでいっぱいの、素敵なお店です。
 
オーナーのwakoさんは、ASSEMBLAGE代官山店(2020年11月閉店)等で何度かイベント出店していただきました。
明るくエネルギッシュな印象のwakoさんに、いろいろお話を伺ってきました。


― ケーキを作り始めたきっかけを教えてください。

「母がフランス菓子を習っていてよく家で作ってくれていたので、私もお菓子作りに興味を持ちました。
弟が食物アレルギーを持っていたので、母は卵や乳製品を使わないお菓子を作ろうと苦労していたのを覚えています。
それを見て、自分にも手伝えることがあったらやってみたいと思うようになりました。
最初に母の手伝いをしたのは9歳の頃です。
 
誰かの役に立ちたい。そのツールとして、興味のあるケーキ作りを選びました。」


― 人生のターニングポイントを教えてください。

「毎年日経新聞が「優れた会社ベスト10」を発表するんですけど、新卒で当時1位だった半導体のメーカーに入社することができました。
親もすごく喜んでくれましたが、2年目の時に会社で倒れちゃったんですよ。
会社の人たちもそんなに大事だと思わなかったみたいですが、病院で検査を受けたらあと少し発見が遅れていたら命に関わっていたほどの大病だったことがわかって、すぐに手術しました。
 
その後一度会社に復帰したんですけど、毎日熱が38度前後あるような状態がずっと続いていました。
当然仕事のパフォーマンスは悪いし、みんなに迷惑をかけている自分が情けなくなってしまって、上司と話し合い退職しました。
 
こういった経緯から、身体に良い物を作ろうという気持ちはすごく高まりましたね。」


― お店の名前の由来を教えてください。

オープン15年目にしてようやく出来たという自慢のロゴ。

「『目に見えないもので一番大切なもの』をお店の名前にしたくて、「kokoro」にしました。
自分の病気の経験から、色んな方にケーキを通して癒しをお届けしたい!という想いが生まれて、それが「kokoro」の原点になりました。」


― この場所を見つけた時、なにかインスピレーションを感じたりしましたか?

「すごく感じました!
光が差し込んでいるように見えたんですよね。
なんというか…かぐや姫が月に帰る時に、ふわっと光が差しているみたいな感じ…って言えばなんとなく伝わりますかね?(笑
4件見ましたが、本当にこの場所だけ。
広い空間よりも、身の丈に合った小さなところから始めたい気持ちもあったのでこの場所に決めました。」

店内のどこを見ても温かみのある家具や雑貨が置かれています。


― お店を持つきっかけになった出来事はありますか?

「きっかけは父の死です。お店を開く一年前にガンで他界しました。
父は、自分の死と引き換えに、私を世に送り出してくれたんだと思っています。
そうじゃなければ、私はきっと今でも家の中で、趣味としてケーキを作るだけで終わっていたんじゃないかな。
背中を強く押してもらえたと思います。」


― wakoさんにとって、お父さんはどういった存在でしたか?


「小さい頃は「怖い」しかなかったですね!
いつも仕事かゴルフで全然家にいない、すごく忙しい人。
今になって、自分に一番厳しくて本当は優しい人だったんだろうなと思います。
威厳があって一家の大黒柱って感じです。
 
私が大人になって、やっと話が出来るようになりました。
昔は怖くて話なんて出来なかったので。
 
時間に厳しくて、子供の頃は21時回っていても起きてたらすごく怒られました。
父が帰宅して玄関チャイムの音が鳴ると、「やばいー!」って走って部屋に戻っていました。自宅ピンポンダッシュ状態です。
門限とかにもすごく厳しかったですね。時間を過ぎると、弟が私の捜索に駆り出されていました。(笑
 
それでも父に対しては反抗とかは一切しなかったですね。」


― 反抗しなくて良かったと思いますか?


「良い悪いとかじゃなくて、そうするべきだと思っていたので反抗はしませんでした。
私は物事を選ぶ時、それが良いか悪いかではなく、するべきかしないべきかで決めるようにしています。」


― wakoさんのケーキに対する想いをお聞かせください。

人々に癒しを届けてくれるケーキの横には、インスタグラムでも度々登場するブリキの人形。
フランスの蚤の市で購入されたそう。

「私を含め、誰もがみんな口に出して言わないだけで、必ず何かしら苦労していたり悩みがあったりすると思います。
そういった人たちに、ケーキを通して癒しと元気をお届けしたいんです。
 
以前に私のケーキを「こころがまあるくなるケーキ」と言っていただいたことがすごく嬉しくて、ずっとその言葉を使わせてもらっています。
そんな表現、自分では思いつきませんでした。
 
何回同じ質問をされても、この想いはずっと持ち続けています。この先も変わることはありません。」

― ケーキを作るうえで、こだわりのポイントはありますか?

「材料へのこだわりはもちろんですが、自分が美味しいと感じた物じゃないと絶対お店に出しちゃいけないと思っています。それが一番のこだわりですかね。」

たくさんの雑貨が並ぶ棚とテーブルには、お客さんからいただいた
メッセージ付きのイラストも大切に飾られていました。
Wakoさんのケーキに対する想いやこだわりは、
しっかりお客さんにも伝わっているのだと感じられます。


― 数あるお客さんとのエピソードの中で、特に印象に残っているものはありますか?

「たくさんありますけど…お父様と高校生のお嬢様とのエピソードでしょうか。
自分自身と重ねていた部分が大きくて、余計に印象に残っています。
 
入院されて闘病中だったお父様と高校生のお嬢様から、同日に同じケーキのオーダーをいただいたことがありました。
お父様からのご予約メールには、『口数の少ない娘がいつもkokoroさんとあなたの話を楽しそうにしており、それを聞いて私も嬉しくなります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。』と。
お嬢様からは、『父が一時退院をするタイミングなので、kokoroさんのケーキを一緒に食べたくて。父に喜んでもらいたいです。』と書かれていました。
 
ケーキをお渡しした翌日、お父様から長文のメッセージをいただきました
『お陰様で幸せな時間を過ごすことが出来ました。これからもよろしくお願いします。』と何度も何度も書かれていました。
 
その後二度とお父様にお会いすることは出来なくなってしまったのですが、お嬢様はずっとお店に通い続けてくれました。
高校生だったお嬢様がもうすぐ成人式を迎えると聞いた時、「あの時にお父様からいただいたメッセージを見せるチャンスだ!」と思いました。
晴れ姿でわざわざお店まで来てくれた彼女に、お父様からのメッセージをプリントしてお渡しして、それを読んだお嬢様も私も号泣してしまいました。
 
大切な人と過ごす貴重な時間に、kokoroのケーキを選んでくださる方が本当に多くて、緊張感と共に感謝の気持ちが溢れて止まりません。」


― 以前私がお店に伺った際、中学生の女の子が定期試験の終わりに、自分へのご褒美としてケーキを買っているのを見て感動したことがあります。

「中学生や高校生くらいの子でも、また食べたいと思ってくれる子が多いみたいです。
しかも親に買ってきてもらうんじゃなくて、自分で買いに来てくれる…嬉しい限りです。
 
他にも、小学生の子が毎日皿洗いのお手伝いをして、頑張って貯めたお駄賃でお母さんの誕生日ケーキを買いに来たこともありました。
「お母さんがkokoroさんのケーキ好きだから!」って言って。
すごくないですか!!?
こんな感じのエピソード、たくさんあるんですよ。
大切な誰かを想って、その気持ちを伝えるために私のケーキを選んでくれるって本当に嬉しいし、すごいことだと感じています。
 
面白いエピソードだと、高校生で反抗期真っ只中の息子さんがいるお母さんのお話ですかね。
その息子さん、お母さんが「ご飯だよ」って呼んでも全然自分の部屋から出てこないのに、「今日kokoroさんのチーズケーキ買ってきたよ」って言ったら、すぐに出てきたそうなんです。
「息子と会話が出来るのも、kokoroさんのお陰なんですよ」って言ってくれて。そのお母さんは今でもよく店に並んでくださっています。
 
私のケーキで、人の心と心を繋げることが出来たら最高ですよね。」


― 人生の道の少し先を走っている先輩として、若い世代に伝えたいメッセージありますか?

「私の過去の経験から言うと、何をすべきか・何をしなければいけないかで選ばなくていい…ということでしょうか。
「すべきこと」を優先してしまって、「やりたいこと」を選べない人もいると思うんです。
何をしたいか・この先自分がどうなりたいか、で選んでいいんですよ。
 
結果を求めるよりも、これをやりたい!っていう自分の心に正直に生きましょう、って感じですかね。」


― 大人気のスコーン。これを作り始めたきっかけを教えてください。

卵アレルギーでも食べられる、優しい甘さのスコーン

「このスコーン卵不使用なんですよ、卵アレルギーの方でも食べられるように。
というのも、4年くらい前に千葉が台風で二度被災して、かなりひどい状態になってしまったんです。
その時に「アレルギーを持つ子供が食べられる物が何も回ってこない」という被災現場の声を聞きました。
それを聞いた瞬間に「じゃあ私が!」という想いで、すぐにこのスコーンのレシピを考えて、被災地に届けました。
 
今ではこのスコーンを求めて、小田原や茨城、栃木といった遠方から買いに来てくれる人もいるんですよ
利益がどうこうじゃなく、誰かの役に立ちたいと思ってやったことって、未来になって自分にかえってくるんだなぁと感じました。
 
ケーキを作り始めたきっかけもそうでしたけど、何かをする時って誰かの役に立ちたい!という想いから始めることが多いです。
利益とかあんまり考えないから、お客さんから「ちゃんとお金とって!」と言われるくらい商売っ気が無いです。
本当に商売人じゃないんですよ、私。」


― wakoさんにとってかけがえのないものは?

「時間…ですかね?漠然としててすみません。
スタッフや友人、お客さんといった、大切な人たちと過ごす時間です。」


― アッサンブラージュ代官山では、何度かイベントでケーキを販売していただきました。その時の思い出はありますか?

「アッサンブラージュは最初はもう緊張して緊張して…。
本当にお客さん来てくれるの?とか、こんな代官山の駅近のお店で美しい雑貨に囲まれた中で、私が作る手作り感満載ケーキがお客さんの目にどう映るの?とか、とにかく緊張と不安でいっぱいでした。
でも、気が付いたら常連さんが付いてくださったり、お店の近くでお仕事されている方が結構来てくださったりしていましたね。
わざわざこっち(八千代台)から来てくれる方もいて。
これ、よく考えたら本当にすごいことですよね。お客さんが来てくれることのありがたさを改めて感じました。」


― 今後幕張店や町田店でイベントをする際は、ぜひご協力いただければと思います。ありがとうございました。

 


―取材を終えて

過去に大病を患っていたことなど微塵も感じさせないほど、バイタリティに溢れたwakoさん。
幼い頃から「誰かの役に立ちたい」「ケーキで人を元気にしたい」という一貫した想いがあり、その揺るがない信念がwakoさんの強さの源なのだと思います。
常連さんも、ケーキの美味しさはもちろん、wakoさんに会いたくてお店に足を運んでいるんだなと感じました。
 
取材後、スコーンとマドレーヌをお土産にいただきました。
手作りでしか出せない優しい味で本当に美 味 し い …!
取材時にいらっしゃったスタッフの方(元常連さん)が「一度食べるとまた食べたくなる」と仰っていた意味がよーーくわかりました。
美味しさを知ってしまった今では、kokoroのブログでおすすめ商品や新作の情報を見ては「食べたい!」と思う日々です。
東京からは少し遠いですが、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。


【店舗情報 

kokoro(ココロ)
〒276-0031  千葉県八千代市八千代台北5-3-9
TEL:047-411-6882

【アクセス】
電車:八千代台駅西口から徒歩約4分

【営業時間】
主に金曜日17時、土曜日12時(売切れ次第閉店) 営業日はブログでご確認ください

・WEBサイト: https://ameblo.jp/kokorocake/
・instagram: kokorowako
・E-Mail(ケーキのご予約やお問い合わせ): kokoro.cake@gmail.com



■ 南海通商株式会社 公式サイト

■ 公式Instagram

■ 公式Facebook

■ 公式Twitter
Twitterでは展示販売や新商品のご紹介、noteの新着記事情報などを随時発信しております。→ @Nankai_tsusho | Twitter

©2011- NANKAI Tsusho Co., Ltd.All Rights Reserved.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?