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世界最先端レストラン【INUA】の体験デザイン

何度か仕事をしているクライアントであり、シェフである友人にINUA(イヌア)に連れていってもらった。INUAは何度か世界最高のレストランに選ばれているNOMA出身のシェフが、KADOKAWAの出資を受けて日本にオープンしたレストランだ。(前提として、この記事自体にグルメレビューとしての価値はあまりないと思う笑)

結論から言うと、すごく面白い体験だった。
すごく美味しかったというより、すごく面白かった、がしっくりくる。美味しかったのだけれど、それを語るときに、美味しさは一番前に来ないというのが正しいように思える。

どんな体験かというと、このINUAというレストランは、入ってから出るまでずっと「?」と「!」が頭に浮かび続ける稀有なレストランだった。

例えば、インテリアからちょっと違う。さりげなく天井に畳のような文様と素材が入っていたり、すだれのようなパーティションがあったり、欄間のようなディテールが入っていたり、全て日本を題材にした、一見それとはわからない隠喩のようなインテリアデザインだった。

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日本を題材にしているからだろうか。とても落ち着く空間だけれど、それがすぐにはわからない。なぜ落ち着くのだろうと見回していると、やがて連想ゲームのように「ここは日本の空間だ」というのが腹に落ちる。(デザイナーはデンマーク人のトーマス・リッケ)

そんな「?」が「!」に変化した気持ち良さは料理や飲み物によってより強まっていく。素材は見たことがないものが多い。例えば生花をまるで野菜やスパイスのように風味や歯ざわりを活かして扱う。例えば不思議なエキスやオイルが複数混ぜ合わせられる。例えば食べたことがないものを、さらに発酵させて使う。何かに似ているような気がするけれど、それが全然わからない。

ネタバレになりたくないので、一皿だけ紹介すると、生の花を出来立ての湯葉で巻いて食べるというのがあってとても面白かった。花の歯ざわりの良さと香りが、塩が効いた湯葉の味ととても合っていた。

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常に問いをぶつけられ、それを考えながら口に運ぶ。そんな経験は初めてだ。やがて気がつく。自分がレストランに入ってからずっと新しい謎を、とても洗練された方法で、エレガントにぶつけられ続けたことを。

アートの存在意義を、「よくわからないこと」だと言ったキュレーターがいた。わからないからこそ考える。普段使わない脳みそを部分を使う。だからアートを見た後はマッサージのように頭の老廃物が循環しスッキリするのだと。自分の実感としてはそれに近い。

食べたものや味はそれぞれ行った人ごとに意見があると思うし、気にいる人もいれば、さっぱりわからない人もいるだろう。かなり価格も高いし。

「?」を手にし、触れ、身体に入れられる機会だと思えたからか、
大変に面白い機会だったと思っている。

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