見出し画像

パワハラ上司がやってきた話

また、あいつと同じ空間で働くことになってしまった。

今の会社に入社して最初に配属された部署で、僕は課長とその取り巻きにハラスメントを受けていた。

主犯格は課長の腰巾着みたいな係長と、その係長のウエストポーチみたいな主任であった。

その内容もしょうもないもので、

  • まともに仕事を教えてくれない

  • 質問をしても「で?」としか返答してもらえない

  • わざと聞こえるように悪口を言われる

  • 必要な連絡を通知してもらえない

など、
“職場の陰湿ないじめ”
のサンプル百貨店のような行為をされたのであった。

そして、これらを相談したときに、

「君にも問題があるんじゃないのぉ?」

と、全く取り合ってくれなかったのが、当時の課長である。

僕はこの課長こそが、諸悪の根源であると思っている。

もちろん主犯格は、腰巾着とウエストポーチなのだが、

「上の機嫌を取ることが最優先で、部下や後輩のことはぞんざいに扱ってもよい」

という職場の雰囲気を醸成していたのは間違いなく課長であり、
「マネジメント」という管理職の仕事を放棄して、そのしわ寄せを末端に背負わせていた
のも、間違いなく課長であった。

一般的に、“パワハラ”というと怒鳴ったり無視したりすることを思い浮かべがちだ。

でも、それだけではなく、「つらい」と訴えている部下に対して、職場の責任者が

「君にも落ち度があるだろう」
「両方悪いところがあった」

と、事なかれ主義で幕引きさせることも、立派なハラスメントであると思う。

「守るべき立場の人が守ってくれない」というのは、とても罪深いことなのだ。


結局、その課長は僕を全く守ってくれなかったばかりか、新人が配属されたときに作成する「新人育成シート」のようなものに、

「僕はマネジメントがんばったけど、新人に難ありだったんですぅ!」

と言わんばかりの自己弁護を記入したのだった。

そして結局、僕が別の勤務地に異動になったため、いじめは終了した。

新人がたった数か月で異動したということで、社内には

「よっぽどダメなやつだったんだな」

という噂が飛び交ったらしいが、僕は新天地で穏やかに働くことができていたので、それはもうどうでもよかった。


それから数年間は平和に過ごしていたのだが、この1月から、なんと
その課長が僕の勤務地に異動してきやがった。

部下を蔑ろにして、上に媚びを売り続けたことが功を奏したのだろう。
それなりに若くして、“部長に昇進して”やってきたのである。

人事異動が発表されてからというもの、僕は急に顔が火照って汗が止まらなくなったり、胃が痛くなったり、憂鬱な気持ちが続いたりと、絶不調に陥ってしまった。

自分ではもう過去のことと割り切っていたのだが、僕の心に蓄積したトラウマたちが

「おいおい!勘弁してくれよ!」

と、騒いでいるようだった。


そして案の定、やってきたそいつは相変わらず嫌なやつであった。いや、相変わらずどころか、
ちょっとパワーアップしていたのだった。

上に媚びを売り続けて昇進した人間は、自分が上に立つと、

「さあ、今度は自分が気を使ってもらう番だ」

と、でかい態度になりがちだ。

そいつも例に漏れず、横柄な態度と雑な物言いを装備してやってきたのだった。

異動してきて早々に、僕が所属する係が担当している仕事を指して、

「こんな仕事なんて、ここでやる必要ねえんだけどな。まあ仕方ないか、がはは」

と、デリカシーゼロの発言をしたのだった。

それを聞いて、僕はもうどうでもよくなってしまった。
投げやりという意味での「どうでもいい」ではない。

「なんでこんな低レベルな人間にかき乱されなけりゃならんのだ」

という、吹っ切れた「どうでもいい」である。

思えば、人事異動が発表されてからというもの、僕はトラウマに揺さぶられ、視野が狭くなっていた。

僕には、嫌なことがあったからと言ってすぐに転職できるほどの若さも、能力もない。

でも、何者でもない存在として挫折を繰り返しながら生きてきた結果、
こういう難局を乗り切るときの心の保ち方
を身に着けていたのだった。

月並みではあるが、

「幸せは自分の心が決める」

ということを、僕は知っているのである。

とはいえ、いざ難しい局面に遭遇すると思考が鈍り、ネガティブになってしまいがちだ。

自分で「心の保ち方」を再確認するためにも、備忘録として4つの対処法を記していく。

その1 寝る

巷では「メンタルを病んだら寝ろ」とよく言われているが、
そんなに簡単に眠れたら苦労しないのだ。

ご存知のとおり、病んでいる時には

悩む→眠れない→脳が疲れる→ネガティブになる→さらに悩む→眠れない…

のループになるのである。

でも、だからこそ、眠らなくてはならない。
たとえ睡眠導入剤に頼ってでも、寝なくてはいけないのだ。

何も恥じることはない。頭が痛いときには頭痛薬を飲むし、腰が痛いときには湿布を貼る。
同じように、眠れないときには眠れる薬飲むのである。

何より、一晩ぐっすり寝るだけで、このループから見事に抜け出せる。
第一歩として、まずは元気な脳みそを取り戻すことが必要だ。

その2 哀れむ

いじめやハラスメントをしてくる人たちは、総じて哀れな人間なのだ。

僕をいじめてきた人たちは、みんな40歳以上のおっさんだ。
考えてもみてほしい。白髪混じりになるほど年齢を重ねてきたのに、そんな生き方しかできないのである。もう、気の毒で仕方がなくなってしまう。

気の毒すぎて、僕が前日にぐっすり寝て絶好調の時などは、
“私をいじめることであなたの気が済むなら、それでもいいのだよ”
と、聖母のように雄大な心で受け止めることができるくらいだ。

また、
こういうやつらに限って子持ち
なのも特徴的だ。

「こんな親に育てられてしまう子供がいるのか」

と思うと、また哀れみの気持ちが溢れてくる。

職場でいじめをするようなレベルの親に育てられるということは、成長をするうえで明らかなハンディキャップだ。
この恵まれない子供の未来が、どうか明るいものになりますように、と願わずにはいられない。

その3 堂々とする

職場でいじめをするようなやつは、自分に自信がない。
だから、「上下関係」という有利な盾に身を隠しながら、安全な場所で大きな態度をとるのだ。

その取り巻きもそうだ。「職場で力を持っている人」に取り入ることで、自らの身を守っているのである。
そして、こちらが委縮すればするほど、 味を占めてマウントを取ってくる。

本当に嫌なやつらであるが、対処法は意外と簡単だ。

そういうやつらと接する時は、こちらも堂々としていればいいのである。

  • 背筋を伸ばして

  • まっすぐ相手の目を見て

  • 低めの響く声で

  • 堂々と対応する

これだけで、面白いくらい相手の視線は泳ぐ。

「自分はこんな脆いやつにいじめられていたのか」

と、拍子抜けするほどだ。

その4 起きてもいない未来は考えない

「管理職に嫌われたら、自分が不利な立場に置かれてしまうかもしれない」
「僻地に飛ばされたらどうしよう」

このように生活を人質に取られることで、人々は権力にひれ伏してしまう。
気持ちは非常によくわかるが、それらは全部、頭の中で勝手に想像しているだけの話だ。

もちろん管理職に嫌われることで、良くない環境に置かれる可能性はある。

ただ、まだ実際に起きていないことを怖がる必要はない。

それよりも、
「現時点での自分のメンタル」
を大切にしなくてはならない。

仮に、もう辞めてしまいたいくらい酷い扱いをされるようであれば、好き勝手に振る舞ってみるといい。

好き勝手というのは、傍若無人に振る舞うことではない。
もちろん業務はしっかりとやりつつも、
「意思表示をしっかりとする」
たけだ。

嫌なことをされたら、しっかりと「嫌だ」というようにしたり、休暇を取得したい日に誰の顔色も窺わずに取得するようにしたり、「必要のない我慢をしない」ということだ。

それを続けることで、意外と居心地がいい環境が築ける場合もあるのである。

◎最後に

「世の中は理不尽だから」

と、よく言われる。

まあ実際、そうなのだろう。
だって、「つらい」と言っている人に対して、「世の中は理不尽だから」と追い打ちをかけてくるようなやつがいる時点で、もう世の中が理不尽なのはわかる。

でも、世の中が理不尽だからと言って、
すべての理不尽を甘んじて受け入れる必要はない。

人生には、「自分では対処できないような理不尽」がたくさんある。だからこそ、
「押し返せる理不尽」は押し返さなくてはならないのだ。

未来は誰にもわからない。
僕だって、結局今の仕事を辞めてしまうかもしれない。

でも今のところ、ハラスメント上司のことは、「『肉の塊』と認識する」
という段階まで到達している。

これによって、何かを言われても、

「ああ、肉の塊が声帯を揺らして音を発しているなぁ」

と、あしらうことができるのだ。

「上司」ではなく、「有機物」として認識できたので、とりあえずは安心と言ってもいいだろう。

さあ、理不尽よ。今日も襲いかかってくるがいい。
あんたには、色々な力があるかもしれない。でも、僕の思考までは変えられないよ。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?