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納屋らしい本棚

改修工程も佳境に入ってくると、什器や備品の方にも目が向いてくる。ブックカフェなので、とりわけ本棚をどうするかというのは大きな課題だった。

本棚については基本的にDIYを想定していた。とはいえ、他にも山ほどやることがある中で、5つも6つも大きな本棚を拵えるというのは避けたいところではある。だから、何か別の方法を探していた。何か他に本の収納を解決する手段はないか。それも、できれば「納屋らしいかたち」で。

ちょうどその頃、知人であるKさんから、廃業されるという元家具職人のIさんを紹介してもらった。テーブルや椅子、あるいはその材料で、店にゆずっていただけるものがないか、みんなで倉庫を見に行かせてもらうことになった。Iさんの倉庫には、家具の材料が載せられた棚が奥の壁際にずらっと設えられていた。太めの木材を切断したブロック。それがところどころ脚として積み重ねられていて、木の板が渡されている。たぶん置かれているだけ。

「これじゃん」と思った。

旧馬小屋においてあった板

同時に思い浮かんでいたのは、旧馬小屋(実質的なうちの納屋だ)の奥にしまってある、重く、大き過ぎて、邪魔で仕方がないイチョウの板のことだった。埃をかぶったその板は、それなりに枚数があり、また、本を載せても問題がなさそうな厚みがあった。なにより納屋にあった板だ。納屋の本棚にはうってつけに決まっている。

後日、知人づてで紹介してもらったお隣り庄川町の材木屋さんにそのイチョウの板を持ち込み、表面だけ削ってもらうことにした(厚すぎる板は半分にしてもらったような気もする)。よくわからない、かつお金にもならない依頼だったと思うが、快く引き受けていただけてよかった。きれいに製材してもらったその板をよく拭き、最後は柿渋で仕上げた。

耐震のための補強も忘れずに

積み上げるブロックは当初全て木のものを想定していたが、調達できる分は木で、それ以外はホームセンターで手に入るコンクリートのブロックを使った。納屋の無骨さと、木の温もり。初めからここにあった材をうまく使えたのが嬉しかったし、それはこの場所にとてもなじんでいた。こうしてコメ書房のトレードマークのひとつである、メインの本棚が完成した。

自作の棚

いま音楽、美術系の本たちが配架されている棚や絵本の棚など、いくつかは自分でいちから作った。オープン後に棚が足りなくなってきたので、少しずつ増やしていったものだ。設計が甘かったのか、厚みが足りなかったのか、本を入れたらそのうちに底がたわんできたのはご愛嬌。これはこれでもちろん気に入っている、うちの自慢の本棚だ。

そのほか古道具屋さんで調達した本棚もある。いま、映画と演劇の本たちが入っている棚がそうだ。古い箪笥には、引き出し部分を抜いて文庫を入れている。海外文学の文庫が入ってる棚は、確か井波の町の方にもらったんだったかな。しかし年代の古いものは、年代の古い建物によく似合う。

箪笥の棚は面置きにもいい

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