コメ書房

「コメ書房」は富山県南砺市旧井波町の農村にある、納屋を改装したブックカフェです。 20…

コメ書房

「コメ書房」は富山県南砺市旧井波町の農村にある、納屋を改装したブックカフェです。 2024年3月30日に閉店します。

最近の記事

閉店のごあいさつ

本日、2024年3月30日(土)をもって、コメ書房は営業を終了しました。 準備段階、2018年4月のオープンから今日に至るまで、当店に関わっていただいたすべての方にお礼申し上げます。 この地域と住民の皆さんには特別な感謝を。 お店を始めると決めたとき、まず、町内の方々にお話をしにいきました。心配してくれた方はいらっしゃいましたが、反対なさる方はどなたもいらっしゃいませんでした。農村の納屋で商いを始めるということについて、私たちには確信があっても、地元の方にとっては当時はよ

    • 二階への階段

      これまで何度かふれてきたように、コメ書房の店舗である元納屋には二階がある。かなり変則的な構造(全然フラットでない)ではあるものの、ほぼ一階と同じ広さのスペースが存在する。ただ、いかんせん階段がないので、二階への昇降にはハシゴを使うこととなり、例えば本の入った段ボールを上げるといったことすら現実的ではなかった。ハシゴをかけることができるのはちょうど古本が置いてあるスペースの真上で、吹き抜けのような構造になっていた。 オープン当初はまだ蔵書も少なく、二階のスペースが必要という状

      • 大きな窓

        数多ある富山県の農山村のなかで、私たちが「この場所にしよう」と思った決め手は、里山を背に北へ向かって段々と下っていく美しい田園風景だった。ちょうどとなみ野に広がる散居村景観の終点のような場所で、うちの辺りから眺めるならば電線も民家もその眺望を妨げない。だから、この納屋を店にしようと決めたとき、私たちの一番のこだわりは、その風景がよく見える大きな窓をしつらえることだった。 額縁のように景色を切り取る大きな窓は、季節ごとの農村景観の変化を、その絶え間ないグラデーションを映し出し

        • コメ書房オープン

          話は2017年の春にさかのぼる。 その年の秋頃にブックカフェのオープンを考えていた(結果的にずれ込んだが)私たちは、まず、新たな古本イベントの形態としてすでに全国的に定着していた一箱古本市に参加してみることにした。「コメ書房」の屋号でお客さんに本を販売したのはこのときが初めてだった。 出店したのは2017年3月19日(日)に開催された「第43回金沢一箱古本市」。一箱のみならず、この日の夜に同じ会場で催されたトークイベントも参加する動機となった。トークのゲストは当時開業前だ

        閉店のごあいさつ

          大雪

          この辺りの積雪は、県内山間部とは比較にならないほど少ないものの都市部よりは少し多い。工事も最終盤にさしかかった頃、年が明けて2018年となった冬は、今から振り返ってもこの十年では一、二を争う大雪だった。ちょうど県外で子どもが生まれたのがこの時期で、出産とその後の経過を見届けて深夜にここに帰ってくると、駐車スペースが完全に雪で埋まっていた。それから家に入れるわけもなく、諦めてその日は別のところに泊まった。 翌朝、何時間かかけて車が入るかたちに雪をくり抜き、重労働の末に玄関まで

          大きなテーブル

          コメ書房のど真ん中に鎮座した大きな一枚板のテーブルは、田園風景を切り取る大きな窓や、特徴的な本棚と並んで、当店を印象付けるものだ。と、私たちは思っている。このテーブルを作成してくれたのは、店舗全体を手がけたY建築の大工さん。天板と脚はこちらが準備したもので、その出自は別々だ。 天板は、家具職人であった知人のIさんが在庫として保有していたもので、廃業のタイミングだったということもあり、私たちの手の届く額で譲っていただいた。通常なかなか手の出ないような一枚板の貴重な材なので、間

          大きなテーブル

          天井にあいた穴

          コメ書房の天井を見てもらうと、まずはきっと大きな梁やサーキュレイター(コロナ禍のときに取り付けたものだ)が目につくだろう。そしてさらに見まわせば、穴が二つあることに気付くかもしれない。「どうして天井に穴があいているのか」という質問には、「これは元々あいていたんです、そのまま残しているんですよ」というのが回答になる。 もう少し説明が必要だろう。以前のポストでも話題にしたが、ここは元々納屋だったので、二階には農業資材や藁などたくさんのものが残っていた。当然ながら、農業のためにフ

          天井にあいた穴

          なごり

          コメ書房へと改装した元納屋は築約90年ほどの建物だ(と聞いている)。ご近所のMさん(現在80代)からは、大工だった彼のお父さんたちが近所の山から切り出してきた木をすぐ近場で製材して建てたのだと伺った。農地の区画整理が進む前は、この場所のすぐ近くに川だか池だかがあって、その水が製材の機械の動力になったのだと。 いろいろな方からいろいろな由来を聞くので、それぞれがどの程度定かな話なのかはわからない。どれも真実を含むかもしれないし、どれも記憶ちがいがあるかもしれない。話を聞いた、

          納屋らしい本棚

          改修工程も佳境に入ってくると、什器や備品の方にも目が向いてくる。ブックカフェなので、とりわけ本棚をどうするかというのは大きな課題だった。 本棚については基本的にDIYを想定していた。とはいえ、他にも山ほどやることがある中で、5つも6つも大きな本棚を拵えるというのは避けたいところではある。だから、何か別の方法を探していた。何か他に本の収納を解決する手段はないか。それも、できれば「納屋らしいかたち」で。 ちょうどその頃、知人であるKさんから、廃業されるという元家具職人のIさん

          納屋らしい本棚

          初めからここにあったもの

          戸についてのお話。 現在のコメ書房のつくりでは、入口(建物東)を入って正面がカウンター、向かって左側(建物南)が壁となっている。これが元は、入口が壁、左側はほぼ全面がシャッターだった。納屋時代はそもそもこのシャッターが入口だったのだ。内装からはわかりづらいが、外から見るとあきらかにそうとわかる痕跡が残っている。 雪国で扉の位置を決める際に考慮すべきは、屋根からの落雪の場所だ。この建物の場合、シャッターの側に雪が落ちてくることになるため、おのずと東側の壁を改装して入口にする

          初めからここにあったもの

          店舗への改修とDIY

          掃除がおおむね完了した後、業者さんによる工事(大工、電気、水道、建具、左官)が始まり、それと並行して、自分たちでできる作業をDIYで進めた。 当時はセルフリノベーションブームで、DIYがもてはやされていた。自分達もそれに乗っかっていたわけだけれど、開店当時はこの店舗が「完全セルフリノベーション」かどうかをたずねてくる人が多かったことを思い出す。そういうブランディングが流行していたのだ。そう質問をされることも最近はなくなったので、DIY的なるものも落ち着いたのだろうな、という

          店舗への改修とDIY

          解体作業

          納屋を店舗にして商売をするにあたり、当然ながら駐車場の確保が課題になった。この辺りは農地の区画整理がしっかりと行われており、地元の農事組合法人が広域に管理している。また、空き家が少なく(居住していなくても持ち主が定期的に世話をしている)、空き地というのも存外少ない。そのため、うちの敷地内で駐車場を確保せざるをえないということになったのだが、土地面積そのものはそれなりに広いものの、母屋、納屋、旧馬小屋、蔵などの建物が並んでいるため、実質的に駐車できるスペースはそれほど広くない(

          大掃除

          コメ書房がオープンしたのは2018年の4月の初め(3月末にプレオープン)。前年である2017年はその準備に追われており、特に前半は、事業計画作成以外のほとんどの時間を、店舗となる予定の大きな納屋の掃除に費やすこととなった。振り返ってみて、店をかたちにしていく上で最も大変だったのは、この大掃除だったと思う。 一階には元々近所の方が所有するトラクターなどがしまわれており、私たちが引越してくるタイミングで移動してもらっていた。そのためフロア一面がものに覆われているという状態ではな

          コメ書房の記録

          富山県南砺市旧井波町の農村にある、納屋を改装したブックカフェ「コメ書房」と申します。2024年3月30日をもって閉店することとなりました。 準備期間及び2018年からの六年間の営業を通して、実に様々なことがありました。閉店前に、駆け足かつ、ごく部分的にではありますが、ここにコメ書房についての記憶を留めておきたいと思います。きほん、ただの備忘録です。ご興味のある方はどうぞご覧ください。

          コメ書房の記録