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大きなテーブル

コメ書房のど真ん中に鎮座した大きな一枚板のテーブルは、田園風景を切り取る大きな窓や、特徴的な本棚と並んで、当店を印象付けるものだ。と、私たちは思っている。このテーブルを作成してくれたのは、店舗全体を手がけたY建築の大工さん。天板と脚はこちらが準備したもので、その出自は別々だ。

天板は、家具職人であった知人のIさんが在庫として保有していたもので、廃業のタイミングだったということもあり、私たちの手の届く額で譲っていただいた。通常なかなか手の出ないような一枚板の貴重な材なので、間違いなく応援の意味もあったと思う。Iさんだけでなく、コメ書房をつくる際にも、オープンしてからの六年間もうちはたくさんの応援に支えられてきた。感謝してもしきれないくらいの応援に。これについてはできればまた別の記事で書きたい。

大黒柱の余り

この場所に住み始めて何年か経った頃(店に着手する二年ほど前)に、母方の叔父が亡くなった。葬儀に参列した帰り、親戚に「そういや日曜大工みたいなことやって家直してるんだってな、おいといてもしょうがないからこれもっていきなよ」と渡されたのは、大工だった叔父が自分で建てた家の大黒柱、その余りだった。バカでかい鉛筆を途中で切断したようなそれは非常に重く、固かったので、「一体これにいつ、どんな出番があるというのか…」と思いながら車のトランクに積み込んだ。

店内真ん中に存在感のあるテーブル

思いのほか、すぐに使いどきはやってきた。Iさんから譲り受けた一枚板の厚手の天板は重かった。だから、頑丈な脚の材が必要だった。そして、うちには頑丈な大黒柱がある。はずかしげもなく運命論的なことばかり言って申し訳ないが「あのときの大黒柱は、まさにこのために自分に渡されたのだ!」というようなことを思った。ある目的のために突っ走っているときには、まるで自分の周りに前方へ向かう集中線が伸びており、全てのピースがひとつの形に向けて美しく収斂されていくような全能感があるものだ(必ずそれは終わるのだが)。かくして、間違いのない材料に、大工さんの確かな技巧が加わり、実に重たい、最高のテーブルが出来上がった。

自作の耐熱テーブル

ちなみにキッチンやカウンター内のテーブルや什器はDIYで作成。テーブル(兼作業台)は三つ作った。ホームセンターで買うことができる角材や合板に、耐熱のキッチンパネルを張り付けたもので、沸騰したお湯やコンロの使用を想定した耐熱仕様だった。大した細工をしたわけではないものの、目立ったダメージもなく、六年間ちゃんと仕事を全うしてくれた。全部終わったら、こうしたものひとつひとつにも「お疲れさまでした」を言いたいなと思う。

キッチンに設置したテーブル(作業台)

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