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店舗への改修とDIY

掃除がおおむね完了した後、業者さんによる工事(大工、電気、水道、建具、左官)が始まり、それと並行して、自分たちでできる作業をDIYで進めた。

壁色はライトカーキ

当時はセルフリノベーションブームで、DIYがもてはやされていた。自分達もそれに乗っかっていたわけだけれど、開店当時はこの店舗が「完全セルフリノベーション」かどうかをたずねてくる人が多かったことを思い出す。そういうブランディングが流行していたのだ。そう質問をされることも最近はなくなったので、DIY的なるものも落ち着いたのだろうな、という感触がある。

私たちのスタンスは中間(ものごとはグラデーションでかつ個別だ)で、できないところはプロにお任せし、できることは極力自分でやりましょう、というものだった。これはシンプルに費用を抑えるためであり、また「自分たちの手でできることを増やす」という、これからできる店の主題を実践するためでもあった。建築士もDIYに理解のある方を選んでいた。

現在は本棚後ろにある壁面

DIYそのものは初めてというわけではなかった。というのも、店を始める3~4年ほど前からすでに住まいのDIYを(その時点で半分飽きている程度には)さんざんやっていたからだ。それでなんとなく心得はあったとはいえ、やはり店舗となるとわけが違っていた。人に見られる空間を触るというのは独特の緊張感があるし(「住めば都」というわけにはいかない)、何より業者さんの進捗の邪魔になってはいけなかった。

こうして、大工さんはじめ業者さんたちと進捗状況を擦りあわせつつ、ペンキや漆喰塗り、それに伴う養生、クッションフロア貼り、シロアリ対策の薬剤塗布、本棚、机の製作などなど、そこそこの量の作業を自分たちで行うこととなった。けれど、それも私たち夫婦二人だけでやったわけではない。掃除に引き続き、噂をききつけた友人や知人らが少しずつ声をかけてくれて、集まり、手伝っていってくれた。本当にありがとう。

空の下でペンキを乾かす

作業の中で特に印象的だったのは、外壁用板のペンキ塗りだった。100枚以上は塗ったのではなかったか。当初は火を起こして焼き板にしよう(!)という案もあったくらいなので、それに比べればかなり安全かつ早い手法に落ち着いたわけだけれど、それでもかなりの時間を要した。表裏二回ずつ、塗って、乾かして、塗って、乾かして。目の前の田んぼがちょうど転作で、麦が刈り取られた夏季以降には空いていたので、そこに板を並べさせてもらい乾かした。それは、みたことのない、けれどなんかいいなあという光景だった。当時は丁寧に、ピカピカに塗ったつもりだったけれど、六年後の板の状態を見れば、雨と日差しに耐えてきた時間の経過が刻まれていて感慨深い。

素人が「DIY!DIY!」と騒いでいるのは、プロからすると非常に邪魔であったであろうことは想像に難くない。それでも終盤には、大工さんはあきれながらも「こいつらようやるな…」と思ってくれているようだった。いや、勘違いかもしれないが。いずれにしても、とことん付き合ってくれたY建築さんには今でも感謝しかない。

大工さんに美しくはり付けられた板

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