ヒツジ【江森敬治「秋篠宮」書評】
日本の皇室というものは世界でも指折りの”伝統的な組織” であるようで、時折現在の居住国でもネットニュースを見かける。外国人が日本の皇室に興味があるのかは謎だが、砕けた言葉でいえば「ガチガチの体制」であることは否定できない。
アマゾンのオススメに挙がっていた「秋篠宮」をさくっとkindleで読んでみた。秋篠宮家の立場、役職などについての解説は省略するとともに、連日の報道については言及せず書評を展開する。
本書の著者は元毎日新聞皇室担当の記者、皇室ジャーナリスト。
本書は天皇交代のタイミングからコロナ禍、と誰にとっても激動の数年間だったともいえる5年間の取材をまとめたものだ。
読み進めると秋篠宮様の、動物学に対する造詣の深さや学問を愛する姿が浮かび上がる。当時天皇であった父は小学生の息子たちに旧漢字で書かれた江戸時代の書籍を読ませるなど、やはり質の高い教育をされているんだなぁと伺えた。
と、思えばペットのカエルを死なせてしまったら父に池に投げ込まれた、など意外と普通のエピソードも出てくる。
個人的に興味深かったのは、彼自身の性格や人生に対する考え方だ。
天皇交代に際して役職が変わり、記者にその心構えを問われてこんなことをおっしゃっている。
あっぱれな、文字通りご自身を貫いた回答である。だが、賛否両論あるというのは、言うまでもない。
例の結婚騒動をしつこく言及されてひとこと。
おお、なんだか論理的な、男の人といった印象である。
さらに、宗教行事では予算(国費)を削減すべきだともはっきり述べている。ここに予算をかけて国民に利益があるのか、と問う。宮内庁長官がそれに対して聞く耳を持たなかった、ともれっきとした態度で語る。強い人だなあと思った。
記者の取材のみが情報源であるが、自分を持った、かなり頭の良い人なんだろうなあという感想。言うのは憚られるが、一般人として生まれていたら、きっとマイペースで研究熱心な学者であっただろう。
本書について触れると、正直文体や構成は、良いとは言いがたかった。目的がはっきりせず、話題と時制がコロコロ変わり混乱する。さらに記者の突っ込んだ質問はどうもこちらが不快になるものが多かった。
ユニークなお人柄だからこそ、内容を一貫させ、主題のはっきりした一冊であれば、読者の興味をかなり惹いたと思う。
総括して、皇族という立場の苦悩は彼の発言からじわじわと伝わってきた。
生まれる国や家は選べない。そして、いつか必ず死ぬ。
人類平等なのは、この2点だけかもしれない。
【余談】
アメリカの、司法精神科病棟に関する本を読んでいる。かなり興味深く面白いのでこちらもそのうち書評を。
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