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夫のいない日の食事

夫が1週間ほど日本に行っている。

その間は、お店からのごはんを持って帰っては息子に食べさせて、っと!

ある日、
今夜は、ハンバーガーをテイクアウトして食べようか!?
提案すると、息子もニヤリと賛成する。

主夫である夫がいないので我が家はこんな感じ(笑)。

私自身、食べるものはとてもシンプル。
とりたてて何もない日でも、生野菜と、寒い日にはあったかいお豆腐があれば十分。
生野菜のときには白ワイン、
あったかいお豆腐には熱燗。
そして食後のデザートがあれば、赤ワイン。
私の食事は、お酒を美味しく飲むためにあるかもしれないな。
だからなのか、朝食にもランチにもほとんど興味がない(笑)。

生野菜も、お豆腐も、上にのせるトッピングやドレッシングでバリエーションが豊富にある。美味しくて、簡単で、ふだんは料理から離れている私には好都合。

お肉は取らないし、チーズ以外の乳製品が苦手な私は、夫が自分自身や、息子に食事を用意してくれるだけでありがたい。
店で、10数年も厨房に立っていただけあって、彼の料理はどんなものでも私には美味しい。
「専業主夫」宣言を突然告白されたときには、先を越されたと悔しかった。でも、お店のことだけしていればいい、今の境遇は自分にはオトクなのかも、と思うようになった。

料理は好きだけど、それが毎日になると、今の私には修行。

店を始める前は14年間、専業主婦で、子供たちに食べさせるものには神経質なくらいこだわっていた。
カリフォルニアではほとんどの食材を、手ごろな価格で、有機野菜を手に入れることができる。
お味噌やお豆腐を手作りしたり、マクロビオティックの世界でもしばらく遊んだ。
けれど、一日中、家にいて子供たちと料理をしながら過ごす時代は終わって、夫と二人で商売を始めると、私の暮らしは変わった。
「お店」という新生児を育てることに、時間を費やすようになった。

そして夫が主夫宣言をしてからは、私は好きなときだけ、家で料理ができるようになった。

子供たちが家に戻って来た時や、ネットで見つけたレシピにインスパイアされた時、友達とのおうち飲み会のおつまみを考えるのも、その先に待っているものを想像してにやけてしまう。寒い日にはスープをことことさせて、部屋中がスープの香り漂うのが好き。

夫は日本に発つ前日に、沢山のご馳走を夕食に用意してくれた。

「冷蔵庫の中の食材はなるべく使ったからね、
あとは、買ってきたばかりのフレッシュな野菜とお豆腐が冷蔵庫にあるよ」
と言って。

In-N-Out というカリフォルニアだけにあるハンバーガーのチェーン店は、カリフォルニアでは断トツの人気。
お肉を食べなくなって、ハンバーガー屋さんに行くことはなくなったけれど、この日は、息子に付き合って、私はお肉なしのチーズバーガーを注文してみた。フレッシュなレタス、大きなトマト、輪切りの玉ねぎがしっかり入っていて、期待を裏切る美味しさだった。

ハンバーガーには、やっぱりビールかな?。
普段ビールは飲まないけれど、我が家には、ときどきビール好きのお隣さんが、やって来る。
ビールを切らしたと言ってやって来る。
大好きな彼をがっかりさせたくないから、ビールはいつでも常備しているのだ。

息子の仕事は10時半に終わるので、私たちの夕食は遅い。
ハンバーガーをあっという間に平らげて、私はもう一本のビールを開けた。
息子が、「そういえば、小学校のときの先生にばったり会ったよ」、と話し始める。
彼女は私の店にもたまに来る。
ずい分と痩せたし、息子が彼女に最後に会ったのは15年くらい前だから、良く彼女だと分かったわね?と尋ねた。
息子は、
「声だよ、他の人と話している声で分かったんだ」と。

そうか、声、なんだ。

シュタイナーメソッドの公立学校で、6年間、同じ先生だった。
6年間も、あの先生の声を聞いていたんだよね。

夫はあさって戻ってくる。
外は、連日の雨。
私は明日、クリームシチューを作ろうと思っている。
ヴィーガンのバターで小麦粉をゆっくり炒めてルーを作り、アーモンドミルクで仕上げる。マッシュルームと玉ねぎをよく炒めて、ほっかほかのポテト、セロリ、ニンジン、たくさんのイエローコーン。白菜を入れてもいいな。夫はそれに小さなマカロニを入れるのが好きだし、息子はたっぷりのチーズをかけて食べる。私は茹でたケールの葉と、パセリをトッピングする。

シチューやスープはいつも、一晩寝かせたほうが魔法のように美味しくなる。

そして夫婦の間も、たまにはこうして何日も寝かせてみると、何かしらの魔法がかかる。




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