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第23号(2024年4月5日)恐怖!機動中国軍・無人艦隊(2月期)

 皆さんこんにちは。新生活が始まってまだ落ち着かない方もいらっしゃるかもしれませんが、いかがお過ごしでしょうか。
 今号では2024年2月期の話題と論文をご紹介いたします。



中国軍が開発中の新型USVはガンダムSEED風

概要
Naval News が2024年2月8日に発表 (記事本文)
原題 "China Unveils Next-Gen Attack USV ‘Thunderer A2000’ At WDS 2024"

要旨
 2024年2月4日から8日までリヤドで開催された展示会で、中国国家造船集団公司(CSSC)は、新型戦闘用無人水上艦船(USV)「Thunderer A2000」を発表した。このUSVは構想段階ではあるが、興味深い設計を持つ。
 船体はトリマラン式型で、総排気量280トン、全長45mである。武装はVLS(垂直発射システム)を8セル搭載し、VLSには短・中距離対空ミサイルを搭載するものと見られる。それに加えて右舷と左舷に配置された24セルのランチャーには、自爆ドローンを搭載する予定だと報じられている。後部にはISR用のVTOLドローンを搭載可能なプラットフォームを持ち、ドローン母艦としての役割も持つ。このUSVはその汎用性から、平時から有事まで様々なシナリオに対応できると報じられている。

Naval Technologyによる報道

コメント
 二郎系USVとでも言うべき何でもモリモリマシマシ~なUSVですが、研究会メンバーでディスカッションしていたのは「何か見たことあるデザインだな」というところでした。
 ガンダムのモビルスーツ母艦の無人版みたいな印象を抱いたのですが、皆さんはどうでしょうか。しかし他国がこうして2次元の空想を現実に取り込んでいるのに対して、日本は!?どうなんですか!!??ってなってしまうのが悲しいところで、武器輸出(自主)規制が多少緩和されれば、防衛省のニーズに囚われない自由な発想の装備開発が進むと信じたいところです。
 特に日本が実力を発揮しなければならない事態は、必ず経済封鎖が付きまといます。武器弾薬どころか食料の供給もままならなくなるかもしれません。まずは外交でそういった事態を全力回避するのは勿論ですが、他の国よりも環境的に努力が必要にもかかわらず、自分の国の生存に有益なことを考えることもままならないというのは残念なことです。いやお隣さんの方が自由な発想で開発しているって、どういうこと?!という視点で改革が必要だと思います。(以上S)

 二郎系USVと形容されるような、対空から対艦そしてISRまでマシマシUSVの設計はかなり野心的と言えるだろう。ここまでマシマシにすると単価が上がり、数を揃えられなくなる懸念が生じる。少なくとも日本には、このようなマシマシUSVの設計は向いていない。
 まずはそこそこの性能で量を揃えることに注力すべきだろう。もう一つ、USVを弾薬庫として機能させているこの設計は、米国のUSV開発にも通ずるものがある。艦隊に随伴して弾薬庫として機能することが、現代戦でUSVに求められている機能と言えよう。
(以上NK)

米海軍作戦部長が示す米海軍無人化のプロセス

概要
The Defense News が2024年2月14日に発表(記事本文
原題 "Franchetti confident prototypes will usher in manned-unmanned fleet"

要旨
 米海軍リサ・フランケッティ作戦部長は今後10年以内に、米海軍が有人・無人艦隊を運用できる見通しだと述べた。米海軍は、第5艦隊、第4艦隊、第7艦隊で無人システムの実験を実施しており、2024年度から2028年度までの5年間で試作と実験、29年度から33年度までの5年間で無人システムの購入と使用開始、そして次の5年間で無人艦隊の完全運用という計画で無人システムの運用を進めようとしている。
 フランケッティ作戦部長はこのスケジュールで導入を進め、実際の任務で無人システムを「スピードと規模で」運用することになると語った。作戦部長は米海軍が現在行っている実験に加え、インフラ、ネットワーク、作戦概念といった将来の無人作戦を可能にする枠組みについても整備を進めていると述べた。
 またスピーチの中で、積層造形、ロボット工学、ビックデータ、人工知能といった技術が重点分野として挙げられていた。これらの技術は実際に取り入れられており、例えば空母や強襲揚陸艦では積層造形が船の修理に用いられているという。
 加えて海軍はこうした技術を兵士が使いこなせるように、訓練の機会を増やしたり、有人・無人ハイブリッド艦隊を運用する際に求められるエキスパートの育成にも力を入れていくようだ。

コメント
 私が注目したのは後半の「作戦を可能にする枠組み」についてです。積層造形(3Dプリンタを用いた造形と思われます)、ロボット工学、ビックデータ、人工知能…これらの話題が出始めたのはかなり前のことになると思いますが(ロボット工学黎明期なんて、皆生まれてないかも?)、米海軍も軍隊内では取り入れているものの、艦隊やより小さなグループ内で、となると難しそうな現状が伺えます。
 まあ当たり前と言えば当たり前で、そんな知識があったら別な進路に行っているよ!という人々に知識を付与しつつ、並行して各界のエキスパートたちにはどのように軍にコミットしてもらうかが課題になると考えられます。
 今まで軍事技術は軍隊の発展とともにあったので、小さな規模の変化を細かく繰り返せていたものの、民生技術から進歩を重ねかなり高いレベルになってしまったこれらの技術は、いきなり崖から突き落とされて成長しなければならないような状況です。
 これは勿論どの国も例外ではありません…。今後米海軍の「枠組み」が、どのレベルまで自己完結し、どのレベルを外注するのかに関しては一つのスタンダードになっていくと思われます。(以上S)

 無人システムの運用に積極的な米海軍のトップが、いかに無人艦隊を運用していくかという今後の展望を語った記事である。2024年度から無人システムの実験と試作が本格化するとのことで、今年は今まで以上に米海軍の話題が増えると予想される。
 既に第5艦隊にあるTF59のような無人システムを運用することに特化した部隊がもう一部隊結成されることが明らかになっており、これも無人システムの実験段階の一部だろう。
 またS氏の指摘していた「作戦を可能にする枠組み」についてだが、特にメンテナンスの面については注意する必要があるだろう。例えば米海軍が現状テストしているUSVは、大きくわけるとISR用に長期間活動するタイプと有人艦と共に活動して弾薬庫として機能するタイプの2種類に分けられる。
 これらは、ウクライナの自爆USVのような使い捨てUSVではなく、再利用可能なUSVであるためメンテナンスの必要が出てくる。これについては米国で以前から議論されていた問題で、米海軍はどのような対策を講じるか注目すべきだろう。(以上NK)

君たちはブラッドレー装甲戦闘車で、T-90M戦車とどう戦うのか―ウクライナに学ぶ新しき戦車戦―

概要
The Warzone に1月20日掲載(記事本文
原題 ”Armor Experts Breakdown Video Of Ukrainian M2 Bradley Mauling Russian T-90M Tank”

要旨
 ロシア軍のT-90M戦車が、ウクライナ・ドネツク州ステポヴォイ近郊でブラッドレー戦闘車に搭載された25mm砲とFPVドローンの組み合わせにより撃破された。
 ウクライナの第47機械化旅団が公開したドローン映像によると、ブラッドレーの乗員は25mm砲を使い装甲の比較的薄い戦車後部を攻撃したり、戦車の光学装置を攻撃したりしていた。
 その結果、戦車は戦闘不能となり砲塔がスピンし、木に激突している。行動不能になった戦車にFPVドローンがとどめを刺した形となっている。他方で、戦車乗員は全員が無事に脱出しており、戦車の堅牢さも印象付けた。
 記事に登場する専門家は、この攻撃がブラッドレーの能力とその乗員の技量の高さを示していると指摘する。こちらの記事によると、車長のセルヒーと運転手のオレクサンドルは、12月にドイツでの訓練から戻ってきたばかりで、2回目の任務であったようだ。セルヒーは、以前プレイしたことのあるビデオゲームの経験をいかして、T-90Mの弱点に攻撃を加えてミッションキルを達成したとのことだ。

コメント
 組み合わせがモノを言う現代戦の象徴的な戦闘に関する記事です。2月に放送されたNHKスペシャルでは戦車が地雷の攻撃を受けたり、ドローンが妨害電波の影響を受けて墜落したりする映像が出ていましたが、組み合わせによりそれぞれの不利点を補い合い、目標達成をより確実なものに出来ると思います。
 また、ゲームでの経験的な動きが実際の戦闘に取り入れられているのは興味深いですね。最近のFPSゲームなどは非常にリアルで(勿論実際の戦闘車や戦車の操縦はより複雑ですが)、例えば演習の前段階のイメージアップやトレーニングに有用だと思います。
 例えば陸自に入ると訓練としてプレイできるゲームソフトが出たら結構面白いと思うのですが、いかがでしょう。日本の森林や都市を模したフィールドで隊員が行ったプレイを録画し、実際の戦闘で再現可能かどうかディスカッションするのも面白い上、既存のゲームシステムを使うことが出来れば制作費用も抑えられると思います。
 日本の場合ゲーム制作会社が防衛に協力してくれるか?という問題はあるかもしれませんが、伝統的な軍隊の活動だけで国を守れる時代は終わりつつあり、部分的にはもうすでに古いものになっています。 (以上S)

 セルヒー氏がやったゲームだが、ブラッドレーやT-90が実装されている陸戦ゲームとなるとWar thunderだと推測される。ちなみに小生も一時期やっていたが、リアル性を売りにしており体力性ではなく、各部に損害が出ることで撃破判定となる。War thunder内で自分の主砲で太刀打ちできないような格上と遭遇した時の鉄則は、敵の履帯や砲身を破壊して無力化することである。例え撃破できなくても、無力化できれば味方の戦車に撃破してもらえるチャンスが生まれるからだ。ミッションキルの概念をゲームを通じて学んだのだ。ゲームは役に立たないと言われるが、そんなことは決してない。 (以上NK)

韓国が進める有人・無人チーミングの将来ロードマップとは?

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