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連載小説「憂鬱」-11 体育館の用具室へ沙知絵から呼び出されたユリアはどうなる?

ユリアが授業を受けていると、小さなメモのようなものがデスクに回ってきた。沙知絵が斜め前の席からユリアのほうへ振り返り、メモを受け取ったことを確認したようだった。

「体育館の用具室へ、学校が終わってから来てね。来なければ、あなたの大事な彼女に、私たちが声をかけて、あることないこと喋っちゃうからね。」

ぜったいに一人では行きたくなかったが、玲実に彼らを近づけることだけは、避けたかった。自分が行かなければ、学校が違っているとはいえ、玲実もネットで素性を調べられて、放課後に後をつけられて・・・。

最悪の場合は、巻き込まれるのでは?という恐怖を感じていたからだ。

体育館の用具室へ入ると、すでに沙知絵とその仲間の美樹が椅子に座っており、キスを撮影した則人のほかにも、男子生徒が二人来ていた。彼らは、3人で立ち話をしながら、携帯の写真を見ていた。

「マジかよ。女同士でスゲー。生で激写ってやつだな。もしユリアがモデルになったりしたら、雑誌とかに売れるんじゃね?」などと言いながら、笑いながら見ていた。

ユリアは入口まで来てたのだが、ドアが開いていたので、男子生徒の会話が耳に入ってきた。一瞬たじろいだが、会話の内容から、玲実とのキスの写真を撮られたことに、気付いた。

「やっと来たわね。」沙知絵が立ち上がった。
「何の用なの?」ユリアは少しキレ気味の声で言った。
その間に、男子生徒がほかの人が入れないよう、ドアを閉めた。

「もうわかってるでしょ。あなたたち二人の写真を、則人が公園で偶然見かけて撮影したんだよね。めっちゃキレイに撮れてるから。ほらっ。」と、携帯で画像を見せた。

公園の薄暗い中だったが、ユリアの顔半分は本人とわかる感じで撮影されていた。

「どうするつもりなの?まさかSNSにあげたりしないわよね?私はそんなこと気にしないけど、玲実に迷惑がかかるから、それだけはやらないで。」

「へぇ〜っ、玲実ちゃんって言うんだ。学校の制服でどこの学校なのかもわかるから。特定できちゃうからね。」

「彼女に近づいたら、私もタダで済ますつもりはないから。」

ユリアは、いつもはいじめられても立ち向かわなかったが、玲実のこととなれば、黙っていることができなかった。

「タダで済ます?なんだか、怖いわねぇ〜。まぁ〜こっちからは単純な要求なんだけど。」沙知絵は、美樹と目をあわせながら、ニヤニヤと笑った。

「何をすればいいの?お金?」
「お金なんて、家はお金がたくさんあるから、不自由してないんだよね。できれば、この男の子たちにあなたの胸を見せてあげられないかな?」

「胸を?」
「そう。」
「いいわよ。そんなことで終わるのならば、見せてあげるわ。ただし触れたらすぐに警察に行くから。あと撮影もぜったいにしないでね。」

ブラウスのボタンを外すと、フリフリのついた白いブラに覆われた胸がむき出しになった。ユリアはさらに背中へ両手を回して、一瞬で、その白いブラのホックを外したのだった。

真っ白で丸いきれいな形のメロンパンのような乳房に、淡いピンク色の乳首が上をむいてついている。男子生徒は興奮した声をあげながら、近寄っていった。

「すげぇ〜、マジかよ。見せてくれるんだ。ありがたい。」それぞれが、口々に好奇心いっぱいの言葉を発しながら、ユリアの胸を舐めるようにマジマジと見ている。

優等生ばかりの私立の高校なので、それ以上の犯罪的なことをやる勇気のある男子生徒はいなかった。

しかし、ユリアは胸を見せた後になると、われに返った。急いでブラウスを着ると、家へ向かって泣きながら走り出した。

泣いているユリアを見て、母、敦子が心配したのだった。
「ユリアちゃんどうしたの?なんで泣いているの?」ユリアは泣きじゃくりながら、体育館での出来事を母親に訴えた。敦子は弁護士であった。

目の中に炎がともったように怒りをあらわにした敦子は、すぐさま学校へ連絡をとった。残業で数名の教師と、校長がたまたま残っていた。

「今から、学校へ娘と向かいますので。とてもお電話でお話できるようなことではございません。校長先生も残っていていただけるように、お願いします。」

敦子は、そう言い残すと、さっさと電話を切って、ガレージにとめている白いBMWの運転席に座ると、ユリアをせかすように助手席に乗せ、猛スピードで走り出したのだった。



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