見出し画像

広島 建築巡り49,736歩の記録

アート巡りで訪れた広島は予想以上に建築の街だった。車窓から見過ごすにはアパート、ビル、学校、公共施設の建物が魅力的過ぎて、乗り物移動は早々に捨てて、川の街を2日間歩き回ることにした。

まずは、建築時にはおそらくかなりの話題になったであろうこれ。

生き物が大きく口を開けたような建築

アストラムライン新白島駅

デザインの円が作る光の輪と、円く切り取られる空。

駅の内部と外界との結界を敢えてふわっと曖昧にするような出入口が楽しい。

設計: 小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt +パシフィックコンサルタンツ

その駅を抜けると見えて来る

広島県営長寿園高層アパート/ 基町高層アパート群

採光のためのジグザグな配置

戦後日本最大規模の再開発計画において建てられたアパート群。無数の窓/ベランダの配列とそれを包括する巨大建築にぐるりを囲まれ、のまれる感覚に陥る。設計の大高正人氏は前川國男の弟子、すなわちル・コルビジエの孫弟子とのことだけど、知らずに見てもピロティ(1階部分が抜けていて2階以上が実用部分になっている構造)など、コルビジエの流れを汲む方であることがわかる。

設計: 大高建築設計研究所

圧倒されたままアパート群向かいの異彩を放つ建物へ。

広島市立基町高校 

建物が大きすぎて全体像がとらえられる撮影スポットを見つけられず。

強く朝日を反射して逆光のガラス壁面。これが学校とはにわかにはわからない。一階部分は人が行き来できる空間(ピロティ)になっていて、奥には建物が囲むグラウンドが見えた。

高校なのにエスカレーターがあるらしいけど、奥に見えるこれかな。「君の名は」の主人公の男の子が通う高校のモデルになったとか。中に入って見てみたい衝動をぐっとこらえた。

設計: 原広司

広島市医師会館

これも広島に数多存在する(ことは今回知った)モダニズム建築のひとつ。

裏から。窓の窪みが作る白黒の陰影。かっこいい。
もう一軒良く似た建築

中国新聞本社ビル

白い。大きい。神々しい。川沿いに建っていて橋の上から雄姿が拝める。残念ながらこの白い2軒の設計者はわからず。

広島市内に存在する建築の多くは当然のことながら戦後のもの。中で数少ない戦前の、しかもモダニズム建築へ。

広島市袋町小学校平和資料館

コルビジェが東京に国立西洋美術館を建てる20年以上も前のモダニズム建築。取り壊しから逃れたこの部分が今も平和資料館として残る。建てられたことと残していること、両点において広島の建築に対する意識の高さを感じる。

設計: 広島市役所

もみじ銀行広島本店

もみじ銀行の本店が、サイドカーみたいな右側の建物も含めてかっこよく、気をつけて見てみると市内各所にある各支店にも新しい建物なりのこだわりを感じた。この銀行の文化なのかな。本店の設計者は調べても出てこない。誰のいつごろの建築なんだろう。

広島県庁舎

ファサードのモダニズム感。老朽化が見られ、存続と建て替えの狭間にありそうなことが感じられた。簡単に存続だけを願うことはできないけど、迷わず取り壊す東京には広島にあるものがない。

設計: 日建設計

ファサードと言えば

広島そごう

も美しかった。

品があって普遍的。

そして、広島を巡るならいろいろな文脈において必ず行くべき場所へ。

世界平和記念堂

教会内部には外観とはまた別のステンドグラスが演出する世界が広がっていた。

周りの建物と隣接していて、高い塔と横の広がりを1枚に収められるスポットがここでも見つけられず。全体も細部も、美しく荘厳だった。

設計: 村野藤吾

ルーテル平和大通りビル

その後、教会と商業施設が合併した珍しい建築を発見。村野藤吾が見たら驚くかな。右の階段を上ったところから教会が展開され、左側の商業施設とは動線を分けつつ共生している。

設計: 沖本初

その近くにあったインパクトあるアパート。

アパートにもデザインの手を抜かない、街に表情を与えようとする感じがいい。

広島のアパートには表情のあるものが多かった。歩いていると競うように個性を主張してきてシャッターが止まらない。そういう建物は、陳腐でなく、平均点を探ろうとせず、まじめにふざけるという空気において揃っている。

広島市営平和アパート

戦後の焼け野原に初めて建った集合住宅が今も残る。

かわいい入り口。

最後に谷口吉生建築。

広島市環境局中工場

アトリウムは一般見学可能。工場を内側から見られる仕掛け。

工場をそのまま見せています、というテイでありつつ、観覧者の目線は十分に意識している。

通路を抜けると視界の限り瀬戸内海。ファミリーが敷地内芝生でデイキャンプを楽しむ好立地で開かれた建築。みんなが集まる清掃工場って新しい。

設計: 谷口吉生


広島の建築の底力をこの旅に来るまで知らなかった。路上で発見した建築は、事前の旅リストを反故にして余りあるほどはるかに魅力的だった。広く深く実力を見せつけられて、約50,000歩の間わたしはずっと笑っていた。また、まだまだ行かなければならない。

広島には建築がある。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?