だから、虹を見ようよ

雨が降っている。

視界を真っ白に遮断して激しく雨が降り続く。

排水溝から水があふれ、道路も溝も見分けがつかない。

おっと危ない、足が沈んじゃう。

昔の道は土だったから雨が降ると泥水だらけになったんだろうな。

今はアスファルトの横に溝があるから、雨は素早く吸い込まれていく。

排水溝はライフラインに欠かせないけど、誰もそんなの気にしないよね。

大雨が続いて排水溝から水が溢れて、やっとその役割の大切さを知るんだ。


養老孟司さんの著書で好きな話がある。

仕事とは道を平らにする事だ。

デコボコ道で困っている人を助ける為穴を埋め平らに均すのが仕事なのだ 。

そういう事が書かれてあったよ。

著書は【 バカの壁 】だったと思う。

まさに自分たちの仕事だと思った。

嬉しかったな。

あんな有名な人が、地味で目立たぬ事こそ仕事だと言ってくれたんだ。


介護や保育は目標を掲げて日本一の利用者を勝ち取る事が仕事じゃ無い。

オムツ交換やお風呂は不快を無くし清潔を保つ為。

食事は空腹を満たす為。

日常生活は可もなく不可もなく続くのだ。

絶景の露天風呂で癒され旬の料理をInstagramでアップする

そんな毎日はあるはずないんだもの。

たくさんの当たり前をやり続けたご褒美としての一瞬のハレの日。


日常生活なんて、食べたら食器を洗う。

着たら洗濯をする。

掃除は毎日やってもキリがない。

病棟では夜ごと徘徊したり

帰りたいと訴える患者さん達をなだめている。



だから私は憧れるんだ。

歳よりも年齢を刻むこの手が憧れる。

世界中の美をまとって指先からつま先まで優雅に舞うダンサーを。

見たこともない世界を体験させてくれる俳優や映画やドラマの監督。

感動で時を忘れさせてくれるミュージシャンなど、全ての芸術家を。

そう、ハレの日を心待ちにして頑張っていけるんだ。

芸術家って単に仕事と言うより魂の輝きを見せてくれる特別な存在。

当たり前の仕事があって、特別な存在があって、世界は幸せに回るんだ。


今日も雨が降っている。

身体も心も冷たく凍えてしまうその前に

雨上がりの虹を見せて欲しい。


それはうたかたの夢幻だとしても

見ているだけでも幸せにしてくれる

特別な存在だから。










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雨の日をたのしく

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