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去年父が、今年は母があの世に逝ってしまいました。 幼い日の思い出や日々の出来事を、つら…

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去年父が、今年は母があの世に逝ってしまいました。 幼い日の思い出や日々の出来事を、つらつらと書いていきます。

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    本にまつわるエッセイをまとめてみました。

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紫陽花とカタツムリ

子どもの頃はよく走り回っていた。幅が微妙に違う石段や、傾斜15度の坂道をピョンピョンどれだけ早く走れるか。昨日の自分をいかに超えるか、みたいな。 今では、グルグルグルグルグルコサミンをいくら飲んでも膝の関節がもたない自信があるけれど。 雨上がり、例のごとく走り回っていたらパリッパリッと足元から音がする。ふと見て「 ギャー! 」悲鳴をあげてしまう。 地面には無残にも打ち砕かれたカタツムリの残骸があちこちに転がっていた。ごめん、ごめんよ。 災難を逃れた大小のカタツムリは、

    • 泳ぐ

       書くことを怠って、本を読んだり動画を見てばかりいた毎日。 たまには言葉を綴ってみようと思ったのは風待ちさんのnoteのおかげでした。 「私が求めているのは読者ではなく、同志だから」とのつぶやきは、同士とまではなれなくても(彼女のファンとして同士だなんて畏れ多い!)ここにいる、緩い感情が行き交う住人としての現在地を示そうと、重い腰を上げるのに充分すぎる言葉でした。 だから、ちょっとづつ思いを吐き出していこうと思いました。  最近ベランダの鉢植えを観て気づいた事は、植物は太

      • ドラマ 誰にもいえない

         TVerを観てると、昔のドラマ特集があり「誰にもいえない」が放送されていた。冬彦さんで一世を風靡した「ずっとあなたが好きだった」の続編っぽいドラマで、賀来千香子、佐野史郎、野際陽子が引き続き出演している。  二十年以上昔のドラマなので、不適切にもほどがある、があちこち散りばめられているのが面白い。まず、驚いたのは日帰りのキャンプでお昼から生モルツを飲み、夕方には飲酒運転して帰っていたことだ。おいおい、飲酒運転の概念はないのかな?また、仕事で外に出た彼女をつかまえて、強引にタ

        • バランス 生活の大半を占める職場がものすごく忙しいと、その渦の中に自分のすべてが沈み込んでしまいそうになる。そんな時、突然親戚のおじちゃんが母の仏壇に手を合わせに来てくれた。ちょっと面倒くさいと思いつつも、しばらく言葉を交わすうち、穏やかな気持ちになった。自分の座標が確認できた。

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        紫陽花とカタツムリ

        • ドラマ 誰にもいえない

        • バランス 生活の大半を占める職場がものすごく忙しいと、その渦の中に自分のすべてが沈み込んでしまいそうになる。そんな時、突然親戚のおじちゃんが母の仏壇に手を合わせに来てくれた。ちょっと面倒くさいと思いつつも、しばらく言葉を交わすうち、穏やかな気持ちになった。自分の座標が確認できた。

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          黄昏れて

           今季の好きなドラマの第一位は「たそがれ優作」だ。令和のゆるい寅さんというか、印籠が出てくる時間が想像できる水戸黄門のようなというか、とにかくわかりやすく、ゆるい恋愛ドラマである。  北村有起哉さん演じる北見優作は、バツイチの名脇役俳優である。毎回いろんな女性と美味しいご飯を食べ、お酒を飲みに行く機会が訪れる。その度ほのかな恋心を抱くが、恋に発展することはない。傷心の優作は行きつけのバー「ともしび」に寄る。そして、坂井真紀さん演じるママの茜に愚痴るが、軽く叱咤されるのがおちで

          黄昏れて

          通り過ぎるもの

          寒暖差が激しいと、体調が悪くなる患者さんが多くなる。去年の秋も八十歳を超えた男性患者さんが立て続けにお亡くなりになった。私の父も去年の秋、九十歳を超えて天に昇った。きっと大往生。長く苦しむこともせず、入院三か月で逝ってしまったのだから。そうは思うのだけど…。  最近入院患者さんの発熱が多く、食事量や体調の変化に気をつけていた。  山田さん(仮名)は最近体調が悪く、昨日も夕食がなかなか入らなかった。そこで、食事介助をして栄養があるゼリーを食べてもらった。 「元気になるよう

          通り過ぎるもの

          温活

           職場で体調を崩すスタッフが後を絶たない。患者さんも咳や微熱が出てる人が多くいる。寒暖差が身体に及ぼす大きさを実感している。  オムツ交換や入浴介助で動いていると感じないが、家でじっとしていると寒くてたまらない。  昨日急遽しまむらに行って、あったかグッズを買い揃えた。裏起毛のスパッツ、厚手の靴下、膝下まである靴下、おヘソをすっぽり覆うパンツ、昔でいうところの毛糸のパンツ。  先週に比べて10度は寒い外気温。しかし、万全の準備で気持ちよく外出ができたことが嬉しい。こんなこ

          生き上手

           以前から気になっていたカフェに行ってきた。ベーグルサンドが美味しくて、海が見渡せる場所にある。家から車で二十分かからない。しかし、私は運転をしないので、バスに揺られて四十分。ちなみにそこへ行くバスは一時間に一本しか出ていない。そこそこ田舎の小高い山のほとりにカフェはある。  バス停から歩いて三分、白い平屋の建物が姿を現した。店に入ると、手作りのアクセサリーや絵葉書、色とりどりの麻で作られたエプロンなどお洒落な雑貨が並べられている。長い髪と前髪を後ろでまとめた三十代くらいの

          生き上手

          母の四十九日と両親の初盆を無事終えて、慌ただしい日常生活に戻った。時折浮かぶ思い出の数々が、宙に舞い踊っている。薄れゆく記憶をただひとりで見つめているだけ。きちんと寂しさを感じられるのは、今、何不自由なく過ごせているせいだろう。生きるのに精一杯だと振り返る事すらできないのだから。

          母の四十九日と両親の初盆を無事終えて、慌ただしい日常生活に戻った。時折浮かぶ思い出の数々が、宙に舞い踊っている。薄れゆく記憶をただひとりで見つめているだけ。きちんと寂しさを感じられるのは、今、何不自由なく過ごせているせいだろう。生きるのに精一杯だと振り返る事すらできないのだから。

          手のひらサイズの幸せ 

           夜勤明けの朝は、家に帰ってすぐシャワーを浴びる。そして、朝と昼をかねた食事をゆっくり食べ、夕方まで眠るのがその日のルーティンだ。  髪を乾かした後、バケットを二センチの厚さに切って、スライス玉ねぎとチーズを乗せてトースターで焼く。冷凍保存していたカボチャのスープを解凍して牛乳を入れて温める。微糖のヨーグルトに小さくちぎったバナナを入れ涼しげな器に盛る。コーヒー豆を挽いて沸きたてのお湯を注ぎ、牛乳と合わせてカフェオレにする。そして、食後デザートにチョコレートを食べる。  食

          手のひらサイズの幸せ 

          数十年ぶりに占いの館に行き、健康と仕事面を占ってもらった。「身体は丈夫だから無理しなければあと十年は充分働けます」だそうだ。二十代の頃は恋愛至上主義者で占いは恋愛の事ばっかりだったな。懐かしい。今夜の一曲は、大貫妙子さんの「夏に恋する女たち」〜短い愛の戯れは 鮮やかすぎて哀しい〜

          数十年ぶりに占いの館に行き、健康と仕事面を占ってもらった。「身体は丈夫だから無理しなければあと十年は充分働けます」だそうだ。二十代の頃は恋愛至上主義者で占いは恋愛の事ばっかりだったな。懐かしい。今夜の一曲は、大貫妙子さんの「夏に恋する女たち」〜短い愛の戯れは 鮮やかすぎて哀しい〜

          玄関を開けると冷たい風が流れてきた。エアコンの故障が直ったのだ!これで夜に洗濯するサポーターも乾くし、心地よく眠れる。不便と不幸は違うけど今夜の私は堪らなく幸せ。 寝る前に聴く曲、ウルフルズ「笑えれば」〜 とにかく笑えれば それでも笑えれば今日一日の終わりに ハハハと笑えれば 〜

          玄関を開けると冷たい風が流れてきた。エアコンの故障が直ったのだ!これで夜に洗濯するサポーターも乾くし、心地よく眠れる。不便と不幸は違うけど今夜の私は堪らなく幸せ。 寝る前に聴く曲、ウルフルズ「笑えれば」〜 とにかく笑えれば それでも笑えれば今日一日の終わりに ハハハと笑えれば 〜

          一年前のポカリスエット

           頑張ることをちょっとだけ止めてみた。読書会に参加するため、本を頑張って読む、それが楽しい時期もあったけれど、今は目の前のことで精一杯で余裕がない。    最近、慢性の腰痛がぶり返し、湿布や鎮痛剤の助けを借りながら、仕事を休まないよう気をつけていた。そこへ、五類になったはずのコロナが忙しさに拍車をかけてきた。職員が感染すると、最低一週間は休まなければならない。夜勤の勤務変更はあるし、日勤の人数は不足して毎日バタバタだ。    患者さんが感染すると、その部屋に入るたびに防護服を

          一年前のポカリスエット

          再び患者さんや職員が、コロナに感染してしまった。。長時間勤務で蓄積した疲労感を吹き飛ばすには、お笑いと歌の力が必要だ。今夜の一曲は小沢健二さん「今夜はブギー•バック」〜僕をそっと包むようなハーモニー ブギー・バック シェイク・イット・アップ 神様がくれた 甘い甘いミルク&ハニー〜

          再び患者さんや職員が、コロナに感染してしまった。。長時間勤務で蓄積した疲労感を吹き飛ばすには、お笑いと歌の力が必要だ。今夜の一曲は小沢健二さん「今夜はブギー•バック」〜僕をそっと包むようなハーモニー ブギー・バック シェイク・イット・アップ 神様がくれた 甘い甘いミルク&ハニー〜

          母の香典返しを選んでいる。残された母の妹や弟に、形あるものを渡したくて。面倒にみえるしきたりも、よくよく考えてみると、故人を偲ぶ時間を与えてくれる大切なもののひとつなんだね。今夜の一曲は柳ジョージさんの「青い瞳のステラ」〜 褒めてくれよ しゃがれた声で 芝生の中で眠っていずに 〜

          母の香典返しを選んでいる。残された母の妹や弟に、形あるものを渡したくて。面倒にみえるしきたりも、よくよく考えてみると、故人を偲ぶ時間を与えてくれる大切なもののひとつなんだね。今夜の一曲は柳ジョージさんの「青い瞳のステラ」〜 褒めてくれよ しゃがれた声で 芝生の中で眠っていずに 〜

          泥濘んだ足跡

           エアコンが壊れてしまった。外は曇り空。湿気を吸った雲の塊が上空に漂っている。部屋にある古びた扇風機は、ガタガタと唸り声をあげる。私は隅っこにあった除湿器をそばに引き寄せ、冷風のボタンを押した。  この除湿器を使い始めて、とうに十五年以上は経つだろう。その頃、家にあったエアコンは、しとしとと水を垂れ流し、使用不能になっていた。電化製品の故障は続くもので、洗濯機も脱水ができなくなっていた。  当時、失業中の夫と子どもらを抱え、パートと新聞配達で家計をやりくりする我が家には、新

          泥濘んだ足跡