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日々の体感速度と、ゆでたブロッコリーのダメになる速度[2024/3/6(水)〜3/12(火)]


2024/3/6(水) しあわせなら ゆび ならそう

娘は8時になっても起きてこなかった。起こしに行くと、まだ眠たそうだ。「抱っこする?」と聞くと、かすかに頷いた。お姫様抱っこをして、階下のトイレまで運ぶ。

「今日はぬらし絵の日だから、ちょいとばかし早くいかなきゃいけないんだ、オイラたち」と言うと、「オイラ...?」と半分目を開けながら聞き返された。

トイレに到着すると「昨日さ、ウミガメ出てきた、夢に」とにこにこ。

朝ご飯を食べる。娘が箸の先を見ながら、「これさ、丸ごと食べられる?」と聞く。箸の先ほどの小さいものを食べられるかどうかということらしい。「食べられるよ」。「じゃあこの家は?」。家...?飛躍がすごい。「食べられないと思うよ。〇〇ちゃんは?」「〇〇ちゃんはゆっくりなら食べられるよ」。食べられるのか。

ようちえんの今日の活動はぬらし絵で、親子で参加する。年長さんは最後のぬらし絵だ。これからなんでも「最後の」が続くから、センチメンタルになる。

家に帰って、仕事。昼ご飯を食べたらあっという間にお迎えの時間。車で行こうと思ったら、駐車場が満車との情報が入り、自転車で。坂をのぼってゼーゼーしながら駆けつける。

お友達ママのIちゃんからレモンをもらった。鼻に近づけるといい香りがする。はちみつレモンにしよう。

風が強くて寒い日。帰り道に駅前のお弁当や野菜など売っている小さなお店で、金曜に食べるお弁当を予約した。この前買っておいしかった柑橘を買い求めると、いろいろとおまけしてもらった。うれしい。

家に帰っておやつを食べる。ボードゲームを2人でしてみたけれど、簡単すぎてあまり盛り上がらなかった。3人以上でした方がいいかもしれない。絵本などを読む。図書館で借りてきた、麻生知子さんの『こたつ』という絵本が、こたつを上から見た構図がずっと動かない絵本で、おもしろい。2度読む。

早めにお風呂に入った。娘が「しあわせなら ゆび ならそう」と「しあわせなら手を叩こう」のメロディで歌っている。右の中指と親指をこすり合わせると、小さな音がする。私が湯船の中で同じように指ぱっちんをすると、ものすごく大きな音がした。

「どうしてそんな大きい音出せるの?」と娘が振り返った。「ふふふふ」調子に乗って何回も鳴らす。湿っているとやりやすい。あと、風呂場だから反響している。

私の様子を見ていた娘が「目閉じて急いでひらけばいいのかな?」と目をパチパチさせながら指をこすらせていた。私はそんなふうにやっていたのか、と思ったら笑いがこみ上げてきた。

ようちえんのお友達が持っていた「おばけ図鑑」の話から、「トイレの花子さん」の話になる。「トイレの花子さんてどんなの?あとで見せて」「こわくなっちゃうからやめたほうがいいよ」「こんな感じ?」。両手の指を曲げて手のひらをこちらに向けた「ガオー」のポーズで、口を尖らせ、左側へ思い切り曲げている。それはどちらかというと「ひょっとこ」でしょう。

お風呂からあがるとき、娘は毎日「抱っこ」と言う。生まれたときの6倍の重さになっている娘を抱えて立ち上がるのは気合いがいるから、「えー」といつも抵抗するのだけれど、結局抱っこしてあがる。

お風呂上がりのストレッチをしている頃、ちょうど夫が帰ってきた。3日ぶりの父の登場に娘は大喜びだ。

夕飯に夫がお土産にしてくれたます寿司を、おでんと一緒に食べる。

娘はごはんを食べ終わると夫の膝に乗った。やがて夫のフリースの上着の中に、コアラのように入った。二人で「こちょこちょ」をしあって「くすぐったいー」「やめてー」としている。

早めにお風呂に入ったのが功を奏して、いつもより早く布団に入ることができた。

一緒に寝付いたものの、今夜も鼻先を花粉がくすぐってくしゃみで目が覚める。午前1時。「お母さんどこ行くの?」と娘に聞かれて、トイレだよ、と言う。戻った頃に、娘はもう寝ていた。


2024/3/7(木) これは絶対嘘じゃない、愛してる

朝、部屋で仕事をしていると寝室から声がして、夫が自室を出ていく足音がした。娘が起きるといつも夫がすぐに駆けつける。だけど大体眠たいときの娘は私と一緒にいたいらしい。「ママー」と呼ぶ声がして寝室を訪れると、「ママ一緒に寝よう」と寝っ転がったままの娘に呼ばれる。夫は渋々と退散し、私も「お母さん起きたいんだ、じゃあね」とちょっとおどけながら自室に退散する。

自室にいるとドアが開き、娘がやってきた。「ママ、一緒に寝る」。迎えに来られたら仕方ない。寝室に戻って、一緒に布団に入った。

娘は咳をしている。「コーレンココア飲む?」。コーレンという、咳に効くらしいれんこんの粉末とココアを混ぜたものを我が家では「コーレンココア」と呼ぶ。ココアの響きに、「うん!」と娘が反応して布団から脱出することができた。

朝食を食べ、身仕度をし、町民センターに向かう。ようちえんに先生が来てわらべうたをする日だ。昨日に引き続き親子で参加する。

途中、泣いている子がいて、立ち上がれずにいるから抱っこしようとすると「〇〇ちゃんも抱っこしてよ!」と娘に怒られた。娘にとってママが他の子を抱っこしているのは嫌らしい。

A山に行く子どもたちと別れ、帰宅。仕事する。昼ご飯を食べたらすぐにお迎え。

今日の子どもたちは、A山で元力士に身体の使い方を教えてもらったらしい。娘も、手をすり合わせたり、開いたり、と、相撲の作法のひとつである「塵手水(ちりちょうず)」を見せてくれた。

お母さんたちと解散場所でしばらくしゃべっていた。振り返ると娘にあまり元気がない、なんだかぽーっとしている。これはどうだろう。車に乗せて帰る。

車の後部座席で「お熱はからないで」と娘が言う。「どうして?」「お熱はかって、お熱あったらやだから」。調子が悪くても決して熱を測ろうとしない夫と同じことを言う。私は熱があるならある、とさっさとわかって開き直った方がいいと思うのだけど。

帰ってくると、娘はソファで目を閉じた。トイレに連れていき、寝室へ行く。娘は布団に横たわると「一緒にいて」と言った。本を持ってきて隣に腰掛けたが、私が本を読み始めるより前に娘は寝付いた。

2時間ぐらい昼寝しただろうか。夕飯のしゅうまいを包んでいたら寝室からうにゃうにゃと声がした。「おはよう」と声をかけると「お母さん気がついたらいなかった」と怒っている。洗濯物を取り込み、片付けていると、「起きる!」と身体を起こした。

「コーレンココア」をつくる。今日は牛乳が家にあったから加えてみると、「おいしい」と言って2杯飲んだ。少し調子が良くなったようだ。

しゅうまいの続きを包んでいると「くるみあった!」と、いつか拾ったらしいくるみを持ってキッチンにやってきた。「りすさん来ないかな」「なんで?」「りすさんに割ってもらうんだ。りすさんと、〇〇ちゃんと、お母さんで少しずつ食べるの」。

時折咳をしながらも、顔色は随分よくなっていた。昨日のおでんの残りを平らげ、しゅうまいもよく食べた。

「お母さん、これは絶対嘘じゃないんだけど、愛してるよ!」。YOASOBIの「アイドル」の歌詞だ。お母さんは?と聞かれたから、椅子に座ったまま前のめりになり、娘の目を見て同じことを返した。

寝る仕度をしていると、寝室から「ほうせきー!」と娘と夫の声が聞こえる。毛布や布団を2人で両側から引っ張り、「ほうせきー!」と言いながら広げていた。「ほうせき、って言いながらやるの?」覗きにいくと、「前からこうやってるよねえ」「ねえ」と夫と娘が言った。前からそうやってたのか。それで我が家の布団はきれいに保たれていたのかもしれない。

一緒に布団に入ると、娘が私の枕にチュッとして「お母さんの枕から頭、胸に流れて、力になるよ」と言った。

よく昼寝したからか、娘はなかなか寝付かなかった。私がウトウトしかけた頃、娘の「なにか目に入っていたいー!」と言う声で目が覚める。どうして人が寝付いたところで起こすのだ。第一、目を閉じないで開けてるから何か入るのだろう。

眠いときの私は機嫌が悪い。目薬を取りにいき、さしてやりながらもイライラしていると、夫が来てくれた。夫にお任せして、私は壁の方を向いて、丸くなって寝た。


2024/3/8(金) トイレに花子さんはいない

起きてきてトイレに行こうとする娘が振り返って「花子さんいない?」と聞いてくる。2日前にようちえんの友達が持っていた「おばけ図鑑」の話から「トイレの花子さん」の話になって以来、トイレにひとりで行くのがこわくなってしまったようだ。ただでさえトイレに行きたがらないのに、失敗した。「花子さんはふるーい学校のトイレにしかいないから大丈夫!」と言ってみるが、いずれ小学校に通うようになったらこの言い訳も逆効果ではないか、と気づく。

たまに咳が出るが顔色も良く元気そうで、今日もようちえんに行くことができた。

昼頃、実家から母がやってきた。仕事も確定申告も終わらないから、ようちえんの後娘と遊んでもらおうと、来てもらったのだ。母に駅前のお店でMさんのお弁当を買ってきてもらって、一緒に食べる。近所のお友達がやっている雑貨屋さんに遊びに行く。

一緒に娘をお迎えに行った。おばあちゃんが来てくれて娘は嬉しそうだ。

帰宅すると娘はおばあちゃんが作って持ってきてくれた、黄色のドレスを早速着ている。娘と母は白玉粉とよもぎパウダーでだんごをつくり始める。その間に仕事をする。

「おかあさーん!できたよー」と呼ばれて、よもぎ白玉に母お手製のあんこを乗せたものを食べる。母と自分に緑茶を淹れ、咳が出ている娘には、コーレンココアをつくった。

「お口をコップに近づけてね」と言ったのに、コップと口の間を離してスプーンで運ぼうとするから、新しい黄色のドレスの胸元はどんどん茶色くなっていく。

2人が発表会のDVDを観たいというので、デスクトップのパソコンを私の部屋からリビングへ移動し、娘が出ている場面を中心に観た。

そんなことをしているうちに17時近くなった。夕飯をつくらなければ。あれ...全然仕事できていない!せっかく来てもらったけれど、結局一緒に過ごしてしまいひとりの時間はあまり取れなかった。

娘はおばあちゃんとお店屋さんごっこを始めたのが楽しかったようでまだまだ遊んでいたそうだったけれど、雷が鳴って雨が降り出して、母は持ってきた折りたたみ傘を広げながら帰っていった。

夕飯にカレーをつくる。娘は図書館から借りた本を抱えて、何かしゃべっている。「ここは図書館なの」。図書館の貸出カウンターの人になりきっているらしい。

できあがったカレーを食卓に並べても「まだ遊んでるから、終わったら食べる」と言ってなかなか食べ始めようとしなかった。私は食べ終わってしまう。すると娘は、目を閉じて寝始めた。眠かったらしい。

しばらくソファで寝かせておいたが、本格的に眠りそうだったから「お布団で寝よう」と声をかける。娘の歯磨きをして、パジャマへ着替えさせ、布団に連れていく。私も寝る支度をする。「先に寝ててね」と声をかけるが、支度を終えて寝室に戻ると「ママー一緒に寝よう」とまだ起きていた。

布団に入ると「こっち向いて」と言われる。私は仰向けで寝たい。でも仰向けになると「こっち向いて、くっつこ」と言われるので、娘が寝付くまでそちらを向いている。寝息が聞こえた頃にごろんと仰向けになって、気がついたら私も寝ていた。


2024/3/9(土) やっぱりご飯は笑顔だね

朝「チュチュピチュピー」という音で3時に目が覚める。窓辺にやってきた小鳥...ではなく、今朝から導入した目覚まし時計の音だ。なかなか早起きが継続できないからついに購入した。スマホを寝室に持ち込みたくないし、一緒に寝ている家族も起こしたくない。調べてみたら小鳥のさえずりがアラーム音になっている目覚まし時計があり、これだ!と思った。録音された自然な音で、びっくりせずに起きることができる。これは、いい。

朝のやるべきことを色々こなして、シャワーを浴びていたら、背後でドアが開いた。寒い。娘が立っていた。

「目やに、ついちゃった」目の周りにたくさん目やにがついていて、目があまり開いていない。「お顔洗っておいで」と言ってドアを閉める。「とれないー」とうにゃうにゃと格闘する声が聞こえる。

お風呂をあがると、「きれいになった」と言ってさっぱりした顔を見せてくれた。

昨日作ったものの私しか食べてないカレーを、朝ご飯に食べる。夫は娘と今日どこに出かけるか、調べ物をしている。私は洗い物を片付け、洗濯物を干すと、東京へ出かけた。

電車に乗り、インスタの投稿を1件すると、ひたすら本を読んでいた。あんまり集中して文字を追っていたから、電車を降りるときぼーっとした。

久しぶりの下北沢。駅周辺がきれいに整備されていて、私がかつて待ち合わせしたあの"シモキタの駅前"ではなくなっている。

新しく(とはいえ4年前)できた商業施設、ボーナストラックでルーローハンをみつけて食べる。店を出たところで、食事をしている家族がいて、外にも食べる場所があったことを知る。3,4歳ぐらいの女の子が「パパ、やっぱりご飯は笑顔だね」と言っていて、思わず微笑んでしまう。

友達と合流して、即興劇を観劇。今ここでできあがっていく物語にわくわくしながら、涙を流して笑い、泣いた。

買い物やお茶をする。ずっと行ってみたかった「日記屋 月日」さんで、くどうれいんさんの『わたしを空腹にしないほうがいい』という小さなエッセイの本を買った。タイトルと、本のたたずまいのかわいらしさに惹かれた。開いてみると食事について書かれたエッセイで、食いしん坊の心が踊る。電車で帰る。

帰りの電車とバスの中でも、ひたすら本を読む。今朝から読み始めた本の8割を読み終えることができた。しぱしぱした目で、団地仲間が集まる、持ち寄りの食事会にたどり着いた。

黄色いドレスを着た娘は椅子に座って何かを食べていた。私を見つけて顔がほころぶ。「お母さん会いたかった」と娘が言う。

集中して本を読んだせいか、私はとにかくお腹が空いていた。本を読み終えてたどり着いたらみんなが持ってきてくれたご飯が待っていた。ありがたい。いそいそと皿に運ぶ。

途中トイレに行きたいという娘とトイレに行く。トイレの中と外で会話しながら、お父さんと山に行ったこと、お昼ご飯は寒いからと車の中で食べたこと、道が渋滞していたこと、などを教えてくれた。

食事が終わった娘は、食事会の顔なじみの間をあっちへこっちへ移動しながら、やさしい大人たちと一緒に過ごせて楽しそうだった。咳が出る娘が就寝する時間を考えて、少し早めに帰る。寝る時間が遅くなると覿面に体調を崩すのだ。

お風呂まで終えていた娘は、着替えて歯を磨いて寝る体制に入ることができた。私が寝支度をしていると、寝室から「せーの!ほうせきー」と2人の声がする。きっと今日も布団を整えているのだろう。

寝るための準備を終えて階段を登ると、「おかあさーん」と呼ばれる。きれいに整えられた布団の中で待っていた娘の隣に潜り込んだ。


2024/3/10(日) ホットケーキのお布団

部屋で仕事をしていたら、娘が起きてきた。今日も目やにで目が開けられなさそうだ。一緒に顔を洗いに洗面所へ行く。

「どうして目やにつくんだろう」。スマホで目やにを検索しながら、免疫が弱ってるのかなぁ、それとも目の炎症の類なのかなと考える。「もしかしたら、すごくぐっすり目瞑って寝てたからじゃない?」と顔を洗った娘が、親指とそれ以外の4本の指を合わせたり閉じたりを両手でして「目を瞑る」を表現しながら言った。

部屋に戻って仕事する。年度末、やらないといけないところが山積みで、切羽詰まっている。

膝に座った娘が、「もうおしまい」とにっこり私のパソコンを閉じるから、諦めて一旦区切りをつけて朝食をつくることにした。

ご飯を炊いていないから、ホットケーキをつくる。ボールに入れた粉、卵、水を、娘が泡立て器で混ぜる。フライパンに油をしくと、娘が「これがこの子のお布団?」と聞いた。ホットケーキになる子がごろんとするお布団。気持ちよさそうだ。「かけるお布団はなんだろう?」バターやジャムじゃないかな。

できあがったホットケーキに、たったひとかけだけ残っていたバターを娘がうすく伸ばしてくれた。いつも使うバターとメープルシロップ、その両方とも十分な量がなくて、チョコレートスプレッドやピスタチオスプレッド、はちみつ、などをめいめい好きに塗って食べる。

チョコレートもピスタチオもおいしいけど甘すぎる。いろいろ欲張って塗りながらも、結局ホットケーキにはバター。そしてたまにメープルシロップ、がいいという結論にたどりついた。

昨日でかけたものだから、今日は家族で過ごしたいところだが、今日中にやらなければならない仕事がある。夫にお願いして、仕事させてもらう。

12時過ぎたところで「お昼を食べないか」と2人がやってきた。冷蔵庫にあったウインナーとキャベツでパスタをつくる。

食後にごほごほと娘が咳き込んでいる。咳がなかなか治らない。大丈夫かい?と声を掛けると、咳をしながら「お母さんがこんなじゃなくて良かった」と言う。けなげすぎて私の眉も「八の字」になってしまう。

昼ご飯を食べ終わると私は再び仕事。夫と娘は買い物へ出かけた。公園で遊んでくるかと思ったら、思いの外早く帰ってくる。

今度は家の中で「ガラガラガラ、いらっしゃいませー」と2人で声を合わせ、遊んでいる。お店屋さんごっこのようだ。夫が注文を取って、娘が何かつくったり指示したりしているような声が聞こえる。ふと、子どもの遊びこそ即興劇だなぁと思う。

夕方、なんとか今日中の仕事が一段落したところで、階下から娘の泣き声が聞こえた。行ってみると、夫の足のところで何か怒って泣いている。あんなに楽しそうに遊んでいたのに。眠くなったのかもしれない。

私が行くと「ママ」と抱きついてきた。「お父さんから離れられてよかった」。それを聞いた夫が「じゃあ離れるね」と言って自室に向かってしまったものだから、娘は大きな声をあげて泣いた。娘は見放されることに対して傷つきやすい。「そういう...離れるじゃ…な...いー...」泣きながら言うから言葉が途切れ途切れになる。

ちょうど夫が入れてくれたお風呂が沸いたところだったから、「お風呂入って気分変えよう」と娘をお風呂へ促す。

お風呂に入っても身体を洗いながら「また悲しくなってきた」とわぁーと口を開け、涙を流した。おさまったと思ったらこみ上げてきて、またわんわん泣く。私と泣き方が同じだなと思う。

「お風呂上がったらお父さんに、一緒にいたいよって言おうね」と話をした。口を結んで頷く。湯船に入る頃には「気が変わった」とにっこりした。気持ちが落ち着いたようだ。

抱っこして湯船からあがり、身体を拭いて、着替える。娘は、パンツとズボンを履いて、下着を身に着けたところで、「このままお父さんのところに行ってくる」としっかりした足取りで階段を昇っていった。「お父さん、ごめんね、仲直りしよう、大好きだよ」と言う声が聞こえる。夫も応じている。2人の仲直りに、涙が出てしまう。

夕飯は3人で出かけ、焼き肉をたらふく食べた。


2024/3/11(月) 日々の体感速度と、ゆでたブロッコリーのダメになる速度

6時頃に部屋のドアが開いたと思ったら「何も見えない〜」と娘が目やにのついた顔で入ってきた。一緒に洗面所へ行き、タオルを電子レンジでチンしてホットタオルにし、顔や目の周りを拭いてやる。

目が開けられるようになった娘は、布団に戻って再び寝た。「お母さんも一緒に」と言われるが、今しか仕事できる時間がないこと、お父さんがそこで寝てるから大丈夫、と説得して私は仕事に戻る。いろいろな仕事が切羽詰まっている。年度末。

8時過ぎて娘を起こし、お弁当をつくり始める。冷蔵庫の中でゆでたブロッコリーがダメになっていた。良い具合の塩加減と硬さでゆでられていたのに、お弁当にちょこちょこ入れただけで、食卓に出すのを忘れるうちにこんなになってしまった。ゆでたものは足が早い。わかっているのに、私の日々の体感速度と、ゆでたブロッコリーのダメになる速度が、いつも合わない。

卵を2つボールに割り、みりんと塩を入れる。フライパンに油を敷いて、卵液を半分ほど流し込み、表面の色が変わり始めたら端からくるくると巻いていく。空いたスペースにもう半分の卵液を流して広げ、端に寄せておいた固まりを広げたところに転がす。ふわふわの卵焼きになった。

味見してみるとおいしい。いつもよりおいしい。みりんを大さじ1からこぼれるぐらい入れているが、こぼれ方がちょっと少なめだった気がする。一方でひとつまみと思って入れている塩が、今日はちょっと多めだったかもしれない。

ゆでたブロッコリーをダメにして、お弁当の卵焼きがおいしくできる、This is Lifeだな。卵焼きをもうひとつ口に入れながら思った。

娘をようちえんに送り、仕事。夫も家で仕事していたが、お互いのミーティング時間がすれ違いでおのおの適当に昼食をとった。

お迎えに行って、駅前のお店で野菜とパンを買う。ちょうど農家さんが野菜を納品しているところに出会えた。カブはグリルにするとおいしい、のらぼう菜は豚肉と炒めるとおいしい。そんなことを教えてもらって、ではこれもこれもと購入する。

家に帰って手を洗った娘が私の顔をじっと見て「〇〇ちゃんのかわいいお顔がお母さんの目玉の中に映ってる。見えてるってこと?」と人さし指で目の下をトントンとしながら聞いた。「〇〇ちゃんのお目々にもお母さんのかわいいお顔が映ってるよ!見えてるってことだ」と返して、お互いの目玉の中に自分の姿を発見し合った。

仕事で見る必要のあるトークイベントの配信を見る。最初は私の膝の上で娘も一緒に見ていたが、飽きたのだろう、途中から私のスマホで自分の昔の動画を見ていた。

夕飯づくりに取り掛かろうとすると「野菜切りたい!」と娘がキッチンにやってきた。「ここは親子でやってるお店屋さんってことね」。シンクの下あたりに小窓があって、お客さんが来るのが見えるらしい。

「いらっしゃいませ!4名様ご来店です」と言いながら、野菜を切っている。「10名様ご来店です」「そんなに入れるかな?」「奥の部屋あるじゃん?そっちに行ってもらった」。注文もとりにいかないうちにどんどんお客さんばかりやってくるから、なんとなく気忙しい。

今日買ったばかりの農家さんの野菜を、教えてもらったとおりに調理して、のらぼう菜とネギと豚肉の炒め物、カブとにんじんのグリル。あとカブの葉とさつまいもの味噌汁ができた。

早く起きているから7時過ぎたら眠くなる。普段全然飲まないのに、なんとなくお酒が飲みたくなって、冷蔵庫にある焼酎でも一口...と思ったが、蓋が固くて開かなかった。すぐに諦める。

嬉しいお仕事の依頼が来た。と同時に、応募した講座の落選結果が来た。This is Life.


2024/3/12(火) タンカンとミカンはお友達

目覚ましが3時に鳴る。10分布団の中で粘ったが、もう一度鳴り始める頃に縮こまった身体をぐぐっと伸ばして布団から起き上がった。

8時過ぎに娘を起こして、一緒に朝食をとる。昨日買ったパンをトーストする。おのおの好きなものを塗って食べていると、気がついたら娘のパンは中身の白い部分だけになっていた。「耳がもちもちで好き」らしい。好きなものは先に食べるタイプ。子どもはみんなそうか。

ようちえんに向かう頃、小雨が降っていた。夫がめずらしく仕事で車を使っているから、町民センターまで傘をさして歩いていく。10分ほどの距離だ。集合場所へ着くと、「小雨だからこれからお散歩へ行く」とみんな準備をしていた。森のようちえんはたくましい。ちょいとの雨なら散歩する。

娘は私を見て「帰りたい」と言う。なんとなく心細くなったのかもしれない。「行っておいで」と言うと少し逡巡して「わかった」と気持ちを切り替えて、みんながいるほうへ向かっていった。

私は歩いて家に帰り、仕事。昼過ぎに実家から母が来てくれた。今日もヘルプをお願いしている。母が買ってきてくれた中華ちまきを食べる。角煮がゴロッと入っていて、おいしい。

部屋に戻って仕事。娘のお迎えも母にお願いしたから、まとまった時間できる。ありがたい。

ドアが開いて娘の声が聞こえ、階段を降りる。「おかえり」と言うと元気そうな娘がいてホッとした。

大きなタンカンを剥いて3人で食べる。「みかんじゃないの?」「みかんの一種だよ」「いっしゅってなに?」「一種っていうのは...」「ともだち?」そう、友達みたいなものかもしれない。

再び部屋に戻って仕事。母は米粉パンをつくる材料を持ってきてくれたらしい。今頃つくっているのだろうか。はしゃいでいる声がたまに聞こえる。

5時近くなった頃、赤い頬をした娘がやってきて「お母さんできたけど今時間ある?」と聞きにきてくれた。階段を降りて、焼き立てのレーズン入り米粉パンを頬張る。

あとちょっとで原稿がひとつ仕上がりそうで、母にお願いして待っていてもらう。「あと30分」と言ったのに、30分が経つのはなんてあっという間なんだろう。結局プラス15分ぐらい待ってもらって、私の原稿が一個完成したのを見届けた母は帰る支度をした。ありがたい。

娘はおばあちゃんからなかなか離れたがらなかった。玄関の外へ出ると、路地に消えていくおばあちゃんに娘は「またあそぼうねー!」と大きな声で呼びかけ、おばあちゃんも振り返って手を振った。

6時を回っていた。今日届いたばかりの、生協の冷凍春巻きに助けられる。娘がカブを切ってくれて、スープをつくった。

寝る前、私の膝に頭を乗せた娘の歯磨きをしていた。私を見上げて「お母さんのお鼻はそら豆の皮の形。それとハート」と娘が言う。「〇〇ちゃんのは?」と聞かれたから「小さいお山かな。トンネルが2つ」と鼻をツンツンするとくすぐったそうに笑った。

「ハートしてダイヤしてキラキラね」娘が言う。最近の歯磨きの最後の儀式だ。「ハート ダイヤ キラキラ」と言いながら、イーッと並んだ歯たちの真ん中あたりに見えない模様を描いた。



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