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オランダ・私のパワースポット①:デザイナーの夢が詰まった「PIET HEIN EEK」

これまで世界のいろいろな都市で生活してきたが、どこに住んでもときどき訪れたい自分のパワースポットはあるものだ。今、私が住んでいるEindhoven(アイントホーフェン)では「PIET HEIN EEK(ピート・ハイン・エイク)」がその筆頭に挙げられる。街の中心部からちょっと外れたところにあるので、しょっちゅう行くわけではないのだけれど、なにも予定がない日がちょろっとできたりすると、自転車でぶらりと出かけてここのカフェで一人お茶を飲んだり、ショップを覗いたりする。

いろんな色の木の廃材を使った家具はピート・ハイン・エイクの定番

ピート・ハイン・エイクはデザイナーの名前で、この敷地内に彼の工房とショップとホテルが建っている。彼は廃材から家具やランプなどのインテリアを作っていて、サステイナブルが叫ばれる随分前からサステイナブルであった。昔はフィリップスの工場だったこの敷地自体もリサイクルされていて、だだっ広い工場跡で、今は何人もの家具職人たちが手作業する姿が見られる。

こういうインダストリアルでミニマムなデザインも。ランプもピートデザイン。

ペンキの禿げた木材とか、鉄のパイプとか、廃材丸出しの素材は、ピートの独特のセンスで色や素材が組み合わされ、工業的な雰囲気とレトロな温かさを備えたオシャレな商品に生まれかわる。そして、その値段は目が飛び出るほど高い。ざっくりいって普通のイスやテーブルの4倍ぐらいである。廃材の価値をここまで高めるのは、やっぱり彼のデザイン力なんだなあ。ちなみに、デザインコンシャスな日本人の中にはここまで彼の家具を買いにきている人もいる。日本への輸送代なんかも入れると、もうテーブルなんて百万円をゆうに超えちゃうレベルである。

市場にはニセモノもいろいろ出ているけど、こういう色合いはピートにしか出せないのだ!

ピートの素晴らしいセンスは家具とインテリアだけにとどまらない。ここのセレクトショップがまたすこぶるオシャレで楽しいのだ。キャンドルホルダーやメガネフレーム、タオル、食器など、ピートデザインのアイテムのほか、彼がセレクトした寝具、掃除用具、食器、文房具、書籍、オモチャ、バッグ、衣服までが取り揃えられている。さすがお目の高いピートさん、日本の文房具にも関心が高いようで、レトロおしゃれな日本製のノートやペン、セロテープカッターなども並んでいる。

セレクトショップに並ぶ日本製ののレターセットやノート

この日はもうすぐ誕生日を迎える近所のレオ二にデンマーク製のブラシ+ちりとりセットを買ってしまった。掃除道具を誕生日に贈るなんてちょっと変なのだけど、ビビッドな色とシンプルな形がかわいくてお掃除が楽しくなりそうだと思ったし、なんといってもデザインにこだわった掃除道具なんてなかなか自分では買わないだろうから。

ピートの家具は、複数揃えると実に絵になる。でも1つだけだとシャビ―になるリスクも。

近年、ピートはこの敷地内に自分ブランドのホテルまで立ち上げた。もちろん、インテリアはすべてピートのデザインだ。敷地内にはこのほか、ピートデザインのカフェやら、フライドポテトなどの揚げ物を売る軽食店もある。ピートの「大好き」が詰まった、ピートのディズニーランドである。デザイナーとしてここまで自分ワールドでまとめることができたら、本当に楽しいだろうなあ。

ホテルを作ったあたりから、実はファイナンシャルの面では苦しい局面を迎えたらしいのだが、彼のデザインワールドはそんなことではめげない。その楽しさは訪問者の私にも伝染して、ここをじっくり楽しんで帰るころにはすっかり気分が上がる。私の大切なパワースポットである。

毎年10月にアイントホーフェンで盛り上がる「ダッチ・デザイン・ウィーク」では、ピート・ハイン・エイクも主要会場に。写真はショップ入り口

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