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『人生は出来事に意味があるのではなく、その捉え方に意味がある。脳腫瘍からのサバイバー。』

陽に焼けた浅黒い顔。
胸の筋肉の盛り上がりが透けて見えるシャツ。
引き締まったボディ。

どこからどう見ても
健康そのものに見えるアスリートの彼は…
脳腫瘍からのサバイバーだった。

檀野俊さん。
陸上 十種競技の現役の選手であり、
合同会社Gollirabの代表だ。

脳腫瘍の発症は23歳。
円盤投げから十種競技に鞍替えして
全国大会を目指そうとしていた矢先。

ある朝、
驚くほどの耳鳴りがあり
病院に行ったと言う。

検査の結果、
下された診断は『脳腫瘍』。

まさか…自分が。

手術をすれば生き残れる。
しかし…
手術後、重大な後遺症が残る。

脳腫瘍を患って復帰したアスリートはいない。
手術をしなければ、長くは生きられない。

たとえ長く生きたとして、
『生きがいのない人生に意味はあるのだろうか?』
アスリートとして生きられない人生なんて…
彼は考えた。

全国大会はあきらめ切れない。
でも、生き残りたい。

出した答えが…
全国大会までは手術をせず、
毎日ハードな練習を続け、
結果を出してから手術をする!!

しかし…
天は彼の願いを叶えなかった。

全国大会を待たずに症状が進行し、手術。

手術のあと目覚めたベッドの上で
彼は愕然とした。

右耳が全く聞こえない。
右の顔面が麻痺している。
平衡感覚の著しい障害。

これではスポーツどころか
歩くことさえ困難な状況だった。

しかし、
彼は前向きだった。
とりあえず歩けるようにやるまで頑張ろう。

まずはライバルを設定し、
1人ずつやっつける。

1人目は『赤ちゃん』だった。
自分で身体を動かしてハイハイをする。
術後の彼は、それすら出来なかったのだ。

辛いリハビリを重ね
ハイハイが出来るようになった。

次のライバルは保育園の子供、幼稚園、小学生…
1人ずつ、やっつけた。

ようやく歩けるまでになったが、
そこで平衡感覚の問題が
彼の前に立ちはだかる。

彼の世界はぐるぐる回り続けていた。
手すりなしでは歩けない。

ましてや
まっすぐ歩くなんて!

なんとか立ち上がり
まっすぐ歩こうとしても…
右に傾いて行ってしまう。

しかし、
彼はやっぱり前向きだった。

それなら!
まっすぐ歩くためには、
左に進もうと意識したら良いのではないか!

真っ直ぐ歩くには🟰左を目指す。
右に行くには🟰真っ直ぐを目指す。
左に行くには🟰めっちゃ左を目指す。

コントロールの仕方、意識を変えたらイケる!
そうやって
彼はまっすぐ歩くことが出来るようになり、
やがて走ることすら出来るようになったのだ。

ここで彼は考える。
脳腫瘍の手術で復帰したアスリートが居ないなら
自分が、
その初めての復帰アスリートになれば良い!!

気の遠くなるほどのリハビリと
挫折と失敗を乗り越えて…

なんと!
陸上の十種競技の年代別日本記録を出そうと決め
彼はトレーニングを続けた。

そして!
彼はやり遂げる。

医者から「もう陸上は出来ません。」
そう言われた彼が!
普通にトレーニングしても難しい
日本新記録を更新したのであるっ!




『脳腫瘍』だと診断された
衝撃の瞬間のことを
檀野さんが話してくれた。

「人間は死にます。それが1年後かもしれないし、明日かもしれない。それは分からないけれど死ぬということが心から実感できたんです。
その瞬間、人生における大切なことランキングがガラガラと崩れ、新しくなりました。
1秒でも早く自分にしかできないことをやろう。自分にしかできないことで人のために役に立とう。」

そして、彼はアスリートをしながら
児童発達支援や放課後デイサービスなどを行う
事業を始める。

そこに居るスタッフは
現役のトップアスリートたちである。

「この挑戦を達成できたのは、リハビリで歩いたり走ったり出来たとき「回復している」と実感できたことです。“小さな成功体験が、夢や目標を達成する原動力になる”。そう確信できたので、それを子どもたち、とくに障がいを持った子どもたちに伝えたいと…。」

運動を通じて成功体験を積み重ねる。
「できる!」を知ることは
自己肯定感を高めることにつながるのだ。

それは子供だけでなく、
私たちの日々の暮らしでも、
同じように
モチベーションの向上に繋がるはず。

檀野俊さんの生き方は
多くの人たちに勇気を与え、
生きる喜びを思い出させてくれる。

もちろん私にも。
自分の身に色々なことが起こっている今だからこそ
檀野さんの言葉は深く大きく響いた。

言葉は人生を変える。
伝えることが大きな勇気になる。

檀野俊さんに講演の場を設けて下さった、
『レオ財団』の橘俊夫さんに
感謝しても仕切れない。



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