Open Floor

Forgotten Millionsに引き続き、海外でのおもしろ体験・スイス編について今日は少し書いてみたいとおもいます。

タイトルのOpen Floorというクラスで私は2年ほど不定期でピアノを弾かせてもらっていました。これはインストラクターの指示に基づき、参加者が自由に想像性を用いてダンスをするというある種のセラピー。ヨーロッパでは割と色々なところでこのクラスが開催されています。

まずは何故私がそこに参加することになったか。

遡ること2014年・スイスに引っ越して間もない頃、当時の大家さん(舞台美術家)のアシスタント女子と語学エクスチェンジ的に友達になり、その彼女がある日新しいアパートに引っ越すことになったのでハウスウォーミングパーティに招かれる。しかし開始時間が11時から、まだスイスのカルチャーをよく知らなかったのでこれは夜の11時だよねってことで勝手に解釈。

22:30くらいにちょっと早いけど今から行くねとテキストをして登場した私。着くと7、8人くらいのゲストがまったりと出来上がってらっしゃる。帰る人もちらほら。や、これってもしかして昼の11時からだったってこと??しかし友人は、子供連れゲストのために早いスタートにしただけだから全然大丈夫だよー!飲もう飲もうって(涙)

で、そこでたまたま居合わせたスイス育ちイギリス人のサラ。日本に旅行したことがあるという話から、彼女が南米で某サーカスのツアーマネージャーをしていたこと、体調を崩して辞めたけど今はOpen Floorというダンスセラピーのインストラクターになる勉強をしていること、などを聞き私が音楽を作ってる話をしたら「何か一緒にやろう!」ということになったのです。

後日彼女が主催する実験的なクラスに参加し始め、後に大きな会場に移ってからは即興でピアノ生演奏をさせてもらうことになりました。そんな訳でこの出会いは私がパーティーに時間を間違えて行ってなかったら会ってなかったという伝説の事件から始まったのでした。

クラスのコンセプトは毎回テーマを変えて、その時々で出し合ったインスピレーションに基づきサラはダンスの方法を考え、私は音楽を考えました。当時彼女は買い手のつかないお城で他のミュージシャンやアーティストと共同生活をしており、そこでのミーティングも古いグランドピアノを弾かせてもらったりみんなでワイワイ話したりすごく楽しかった。お城にお邪魔できる機会はそうそうないですからね(今ではアメリカの某大学が買い取ったそう)

Open Floorのクラスは人とのコミュニケーション、人間的な繋がりをとても大切にしてます。まず参加者が輪になり簡単な自己紹介から、そしてインストラクターがその日のテーマを説明してウォーミングアップ、その段階ではストレッチや思い思いに体を動かすところから。テーマは秋の実りや自分との対話、夏の太陽など季節によっても変わります。

そしてペアになって踊ったり、椅子を使ったり、とにかく与えられたテーマの中で自由に体全身で表現する。肘を使って踊りましょうとか、腕だけでとか、別の生き物になってみたりとかも。音楽も様々で私の演奏以外にはサラの選曲で流すのですが、音楽オタクの私が関心するくらいバラエティに飛んでいる。

すごく興味深かったことは、最初はほどんどの人が自分を解放しきれずちょっと遠慮がちに踊る感じが少しずつみんな体の緊張(心の緊張)が解けていき、最後には顔の表情まで変わる。終わるとまた輪になって感想を述べるのだけど中には泣いていたり、胸いっぱいで何も言えない人も。。

来る方の層も様々で常連さんのマダムたちからおじさま、おじいさま、若いアーティスト、レズビアンのカップル、自身が歌手で自分もここで歌いたい!という人など。サラとは毎回やりきったねっていう感じですごく良いバイブスに満ちて自分たちも感動をもらってクラスを終えてました。

音楽的にも私は多くのことを学ばせてもらいました。最初は弾くことにだけ集中していたのが、少しずつ参加者の表情に注目しながら弾き方を変えるようになったり、他のミュージシャンとのセッションも何回かあったのでイベントが1日中ということもあれば、時には音楽的なことだけではなくスイス人のコミュニケーションの仕方も勉強になったり。

スイスの人は日々ルールに基づいて隣人で適度に監視しあって生活をしているので(それゆえにあの美しい景観を保てるのです)自分を解放できる場所では思ってもない姿を発揮する。そのギャップに私もおーっとなりました。

とても保守的で基本的に外国人を好意的に思っていない方も多いので(しかしこれは大手企業がスイスに本社を置き、そこに来る各国からの駐在家族がスイス文化へのリスペクトなく生活していることへのフラストレーションもあると思います)スイス人の友達がいると他の国の人たちには驚かれたりもしましたが日本に対してはすごくリスペクトしてる人が多いのも事実。

ちなみに何ヶ国語も話せるのはどこに行っても仕事ができるようにだそう。イギリスのように階級制度もなく元はみんなが農民だった国。セレブ文化もなければ、それぞれが個を保ちつつ静かに暮らす文字通りの永世中立国。とにかくスイスに誇りを持っている方が多くその愛国心には本当に感心させられたものです。そういった発見もOpen Floorを通して関わった方たちから教わりました。

今でもサラはスイスに行くと必ず会う友人のひとり。彼女は結婚して赤ちゃんが生まれたのでダンスのクラスはお休み中ですが将来またスイス⇆イギリス間で何か出来たらいいな。

意外なところで意外な人同士が繋がって、意外な面白いことが起こる。こればっかりは狙ってできることではないけれどそういう出会いをこれからも引き寄せたくてたまらないロックダウン中のイギリス・グラストンベリーからでした💙

読んでくださってありがとうございます。

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