【物語#2】星洗い②


【 物語 #2 】星洗い②


*自作です。続きでるかも。


💗ちかいうちに朗読をUPします!パッと読むと文体が硬く見える場合がありますが、わたしの声と世界観で読んで、ちょうどよくなるように作ってあります。お楽しみに!





◇◇◇◇◇◇【 星洗い ② 】◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇ ふじおひろみ ◇◇◇◇◇◇


①夜。


②世界は、夢をかき集めている。


いろとりどりの夢。いろんな味の、夢。


③出逢うべき星と出逢えた夢は、惑星のみんなが眠っている夜にだけ[ヒト]の世界へ降りてくる、宇宙のオキアミによって 引き逢わされる。大役を果たしたオキアミは、ほかよりもエネルギーが高い。


ほうき星となってまで惑星へとくだった

《すべてがととのった「かなしみ」》に身をささげる。

大切な約束を、果たせるように。


④そうして、ぐっすりと眠っている[約束のヒト]のもとへとゆき、ひとしきり周りをゆらゆらとたゆたったあとに、からだの中へと吸い込まれていく。

⑤『ようやく、いっしょになれたね』

流れ星


⑥ある、[ヒト]が いた。

 奇跡を夢みるヒトだった。


⑦その[ヒト]には、あらゆる[夢]が見えていた。

 金平糖のように、淡く、柔らかで、やさしくて、甘い。

⑧たくさんの[夢]のなかで、たった一つ、ほかとは違うものがあった。海辺の砂のように、かたく、密度も高いけれども、ときに、やわらかに寄せる波にさらわれてしまう。それでも、崩れ去ることはなく。また、かたまり。また、さらわれてゆく。


⑨カラリ。ころり。

はるかどこかから、透明な音が聞こえる。

その音に呼応するように、その[夢]は 甘い香りを放った。

 たくさんの[夢]のなかで、特別な、それ。

 

 


⑩『自分は特別な人間だから』


その[夢]にとって、特別な、人間だから。

 ぼくだけが

 きっと

 その[夢]の、夢を、叶えてあげられるんだ。

⑪星洗いのじいさんには、めったに悩みがない。

 毎日。毎日。たくさんの「かなしみ」を洗濯して、宇宙へと送り出し、[約束のヒト]を みつけてゆく 星たちを眺めることで 胸が いっぱいだからだ。

ただ、最近は、珍しく、弱りきってしまった。


⑫なんど洗っても洗っても、ぴかぴかにならない「かなしみ」が出てきたからだ。たったひとつ、こいつだけが、星洗いのじいさんの腕をもってしても、本来の輝きを取り戻せない。


⑬小さく柔らかなヒカリを、ぽわんと灯して。

 宇宙に送り出すよりも前から灯りを点しつづけている「かなしみ」は、じいさんにとっても、初めてのことだった。

いつもよりも、たくさんのセンタクウオを使い。

いつもよりも、たくさんのオキアミを使った。

銀河の砂星も使ってみたけれども、その「かなしみ」は、やわらかに光るだけで、生命力やきらめきを導きだしてやれなかった。


⑭悲しそう。


じいさんには、本当に、そう見えた。


⑮「かなしみ」とは、惑星に住む「ヒト」の心のなかにある[夢]が傷つき、くすみ、泣きたい気持ちや、くやしい気持ちや、諦めの気持ちや、そういった、いやなものが固まってしまったもののことだ。

「かなしみ」に支配されると

[ヒト]はもろくなってしまう。


⑯じいさんは、あるとき、

その「かなしみ」を吸い上げて

宇宙へと逃がしている仕組みに気がついた。

誰がやっているんだか。なかなか、粋なことをする。


⑰見ているだけしかできなかったじいさんは

星洗いを始めた。


逃がされてくる「かなしみ」を集め

洗う機械を創りあげた。


宇宙をたゆたう、ある性質をもつ魚に [センタクウオ]と名付け、仕事を与えた。もちろんオキアミにも。


⑱『おまえさんほどの頑張り屋には、初めて会ったよ』


じいさんは、目が開かなくなるほどに泣いた。

ここまで深い「かなしみ」を

どう 洗ってやれば 善いのか。

流れ星


⑲その[ヒト]は、高い場所が好きだ。


 


⑳風に吹かれる

見晴らしの良い、たった一人に なれる 場所。


想いを巡らせ、考え、膨らませることのできる場所。


いっさいの邪魔が入らず

平和で、幸せで、あたたかで

やわらかく、すべての感情が【プラスのみ】である場所。


 

そんな場所で《たったひとつ》を見つけた。


㉑これ以上の幸せは、ないと思えるほどの [ 夢 ] 。


『これは絶対に、ぼくのために用意されたものだ』


奇跡だった。

㉒ある朝。

目覚めたら、なにかが 違った。

忘れていた感覚だった。

求めていた感覚だった。

夢を、見ていた。

深い、宇宙の夢だった。

㉓「わたしには 足りないものが ある」

 それは、泣いていた。

㉔「わたしには、足りないものがある。それは、多くの人間は持っている、人間らしさ。ほんの少しの歪み、汚れだ。わたしには、それが、無い。汚れが無くては、生きている資格すら、持てないのだろうか」


㉕しっこくが、ゆらいだ。


[ヒト]は、応えた。


㉖『おれは、きれいなものが、すきだ』


㉗『きれいであることの、なにが、わるいものか』

『たくさんの[ 夢 ]を見てきた。きみは 特別であるべきだ』

 

 


[夢]も 応えた。


「多くの人間とは、ちがってしまっても?」


㉘『きみは。だれのために生きている』


㉙「わたしと、わたしを想ってくれるひとのため」

[夢]は、笑った。

世界が、耀いてみえた。

㉚空は晴れわたり、自由の風が吹きぬけた。

カラン。ころり。と。ときたま、ひかえめに響く。

歌うように軽やかな。透明な音。

甘い、香り。


㉛夜。


世界は、夢を かき集めている。


いろとりどりの 夢。いろんな 味の、夢。


㉜出逢うべき 場所へ、導くために。


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