タイトル5助産師面談で腹をくくる

【助産師面談で腹をくくる】ならきちの泣き虫妊婦生活記⑤

妊娠18週目の検診の時、助産師面談というものがあった。助産師さんと二人になって心配事を相談できる貴重な機会だ。

ベテラン助産師さんは私を見るなり「うん、大丈夫ね。元気に産みそう!」と言った。その時の私はまだ妊娠前の体重に戻ってすらいなくて(妊娠前-2キロくらい)、自分としては決して元気ではなかったので、「えっ」と思った。

いやいや、全然元気じゃないですよ…。私のこの、でかい尻を見て、骨盤広くて安産そうだなと判断したのか…?確かに、テーブルの角に頻繁に腰骨をぶつけてしまうくらいには骨盤広いと思うけど…。

とはいえ、助産師さんは数えきれないほどお産に立ち会っている紛れもない出産のプロだ。言葉の重み、説得力が違う。

「最近の若い妊婦さんはねぇ、すぐネットで調べて不安になっちゃうの」、「でも妊娠も、出産も、妊婦さんごとに全然違うし、赤ちゃんごとに全然違うのよ」、「まずは自分の体に自分できちんと向き合うこと」、「あなたと直接会って診てくれる、先生や助産師の言うことを信じていればいいからね」、「ネットに書いてあることはぜーんぶ嘘だと思っていいから」

「最後、極端だな!」と思いながらも、ネット検索するたびに不安を煽られていた私はとても救われた。それからはネット検索の回数が格段に少なくなった。

助産師さんは私の問診票を見て「あら!尿管結石になったことあるんだ、私もあるある、痛いよね~」と言った。「あれは人生で一番痛かったですね…救急車呼びました。でも、出産ってもっと痛いですよね…?」「うーん、そうだねぇ、出産のほうがかなり痛いねぇ…」

私は絶望した。ただでさえ、出産の痛みにビビっていたのだ。赤ちゃんに会えることはなによりも嬉しいことだけれど、相当痛いに決まっている。出産経験のある人はみんな、死ぬほど痛かったと言っている。妊娠が発覚してから、お産が不安で泣いた日もあった。なのに、あの尿管結石よりもかなり痛いとは(そりゃそうだ)。現実を突きつけられた。

(後述するが)尿管結石はめちゃくちゃ痛いのだ。あんなちっぽけな、数ミリの石であれほど痛いのに、赤ちゃんなんて約3キロもある。(そもそも出す場所が違うから比べること自体間違っているのだが…笑)赤ちゃんは重さにして牛乳パック3本分!それだけの大きさのものが果たして自分の股から無事に誕生するのか…?怖くて仕方がない。そして、尿管結石仲間の助産師さんがはっきりと“出産のほうがかなり痛い”と明言したのだ。私は絶望した。

しかし、助産師さんはこう付け加えた。

“でも、痛みの先にかわいい赤ちゃんに会えるっていう大きな幸せがあるから耐えがいがあるよ

確かに、尿管結石は、できてくれても嬉しくもない石が勝手に腎臓の中に生成され、激痛を伴って生み出してもなんの達成感も喜びもない。それに比べれば、待望の我が子に会える出産は、どれだけ痛かろうが素敵なことに違いないと思えた。

また、“ネットに頼りすぎず自分の体としっかり向き合うべし”という素晴らしい教訓を得た助産師面談だった。

【おまけ】尿管結石になった話

私が尿管結石になったのは大学4年生の冬だった。年末年始にアルバイトを入れすぎた。ろくに食事をとらず、水分もとらず、連日8時間超の立ち仕事を続けていたら、おしっこがでなくなった

近所の病院に行ったら“膀胱炎”と診断された。もらった薬を飲んでも症状は改善せず、ある日、突然、腰に激痛が走った。

気持ち悪いし、おしっこが出そうで出なくてお腹も痛かった。いてもたってもいられず泣きながら悶える私を見て、母が救急車を呼んだ。

母は後日、「痛い!痛い!」とわめきながら搬送される私を見て、「こりゃ子どもでも産むんじゃないかと思ったよ、痛そうで気の毒だった」と言っていた。

ちなみに、搬送された私は病院についた直後、看護師さんにガバっとズボンを下げられ、華麗に痛み止めの座薬をお尻の穴から入れられたあと、点滴を打って横になっていた。

安静室と書かれたその部屋には具合の悪そうな人がたくさんいて、「痛いよ~、痛いよ~…」といううめき声が聞こえてきたり、お年寄りが看護師さんにしきりに話しかけて煙たがられたりしていた。「健康って実に尊いものなんだな…」と思いながら、私は鈍くなった痛みをこらえていた。

泌尿器科の待合スペースに移動すると、見事に年配の男性しかいなかった。点滴をぶら下げ、パジャマ姿でぐったりする20代女性の私を見て「痛いよねぇ、若いのにかわいそうに…」と励ましてくれた。彼らは幾度となく尿管結石を乗り越え、尿管結石と共に生きている、ベテラン患者たちなのだ。

先生からは「尿管結石は遺伝するからね~」と言われた。祖父・叔父・そして次が私ということで、親戚3代にわたって受け継がれたことは間違いない。我が子にこの体質が遺伝しないことを切に願うばかりだ。

結局、処方された薬を飲んで安静にしていたら、気付かぬうちに石は出て行ったようだった。それからは、ノンカフェインの飲み物をこまめに飲み、トイレに行きたくなったら我慢せずに行き、一日三食、十分な睡眠を心掛けるようになった。幸い、ここ3年間は再発していない。

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