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三井記念美術館(東京都中央区・三越前駅 絵のある陶磁器)

リニューアル改修が終わり新たにオープンとなった三井記念美術館。こちらではリニューアル記念として「絵のある陶磁器」展として、三井家所蔵の野々村仁清尾形乾山永樂保全永樂和全の4人の作品を中心とした陶磁器の展示をおこなっている。

三井家が京都から始まっている関係上、自然と京都の陶工との関わりが深く、最初にお目見えする野々村仁清もまた京都で活動した陶工である。展示室1の色絵蓬菖蒲文茶碗にはじまり、決して派手ではない落ち着いた色合いの作品が並んでいる。中でも気になったのは色絵桐巴文水指という作品。桐の家紋が入っている。箱書は金森宗和と言われており、野々村仁清の師匠にあたる人物。この金森家、豊臣家に支えたことでも知られており、それを考えると五三の桐とはいえ、桐の家紋を設えた先とは? なんて勘繰ってしまう。

続いては尾形乾山。絵師・工芸家として知られる尾形光琳の弟で、自身も絵師である他に陶工としていくつもの作品を残している。同じく京都出身の人物で、野々村仁清へと弟子入りして陶芸を学んでいる。その仁清イズムがしっかりと受け継がれた派手さよりも素朴さを思わせるような作品を作っている。格別なのは展示室2に唯一の美術品として設けられた銹絵染付笹図蓋物だろうか。箱と蓋それぞれに笹の絵が朴訥に描かれている。兄と違いつつましやかな生活を送った弟の人柄まで偲ばれるようである。

次の展示室3では国宝とされる茶室「如庵」再現を生かしながら、茶道具取り合わせとして永樂保全と伝千利休所持の掛け軸、釜辻与次郎の雲龍釜を組み合わせた茶会の再現展示をしている。リニューアル後もこの展示室は安定して丁寧な造りをしており面白い。

リニューアル後もこのエレベータは健在 階表示が良い

次の展示室4からは永樂保全と永樂和全の作品が立ち並ぶ。永樂保全もやはり京都で活動した陶芸家。永樂了全の養子となって土風炉師・善五郎の十一代目を襲名、紀州徳川家から庇護を受けて活動している。野々村仁清の写しなどもおこなっている他、松竹梅や鶴亀などめでたい兆しである瑞祥を描いた作品が目立つ。金泥や金箔の文様を施した金襴手と呼ばれる技法を駆使した派手な作品もこの辺りから登場する。中でも金襴手飲中八仙人図茶碗は中にいる鶯っぽい鳥のゆるい感じとかも含めて、手元に置いておきたい茶碗だったりする。

展示室4の奥に円山応挙の山水図屏風を挟んでから次に構えるのが永樂和全の作品である。永樂保全の長男として善五郎の十二代目を襲名している。ここでも目を引くのは赤地金襴手龍文見込染付輪花鉢をはじめとした、赤地の陶器にやはり金襴手を施した作品たち。中にはのちに明治天皇と皇后へ献茶することになる赤地金襴手鳳凰文天目と白地金襴手鳳凰文天目なんて組み合わせもある。
次の展示室5でも永樂和全の作品展示が続く。陶器の他に屏風も描いており、その屏風の絵柄に剃った菊谷焼十二ヶ月絵替茶碗なんかもまた素晴らしい。一月の富士はともかく、四月の西王母とか十二月の俵とか、現代の感覚ではよくわからないものもある。

奥まった場所にある展示室6と最後の展示室7では明や宋の時代に作られた東洋陶磁の中から香合や食器、茶器などを紹介している。これまでに登場した日本の陶工たちの作品たちとの違いを味わってみるのも良いかもしれない。最後は狩野栄信による四季山水図で終了。リニューアル後の美術館、外観が大きく変わったかと思いきや決してそういうわけではなく、もしかしたら内部的なものかもしれない。トイレはウォシュレット式。心なしか広くなっているような気がする。

開放感のある入り口


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