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福沢一郎記念館(東京都世田谷区・成城学園駅)

成城学園周辺は台地の上という土地柄なのか、採光をしっかりとした邸宅が多い。もちろん高級住宅街というのもあって広い家も多いのだけれど、そういった採光を生かしたアトリエが多く存在している。そんな中で、画家の名前を冠して開放されている記念館がこの福沢一郎記念館である。

福沢一郎とはどういう人物なのか、実はあまり知らなくて以前に訪れた鵜の木のアトリエにあった吉井忠と同じような前衛的な作風を描く、という情報だけしか知らないままに色々と調べてみるとかなり興味深い人物だった。日本におけるシュルレアリスムを切り開いた第一人者と言っても過言ではなく、その言動もかなりロック。無頼派といった感じだろうか。格好いい。

床に散らばる絵具痕も良い

そんな事前情報を知ってしまったら行かないわけにはいかないと、まあそんな想いで訪れたわけである。閑静な住宅街にある特徴的な色の屋根、恐る恐るドアーを開いて中へ入れば、もうそこは既に光に溢れるアトリエである。今回は「旅する福沢一郎」と称して旅好きでもあった本人を写真と素描で辿る展示を開催。吹き抜けの高い天井からの採光はもとより、なんともレトロなストーブまで置いてある。

高い天井へ伸びるストーブの排気管

福沢一郎記念館に訪れる人の多くは本人の作風のファンか常連の人ばかりだそうで、一見で訪れる人はとても稀なのだそう。特に今回はその独特の作風であるシュルレアリスムの作品はあまりなかったけれど、彼の人と成りを辿るような感じになっている。かなり旅行好きだったらしく、色々な場所へ取材へ出掛けては現地の民芸品なども入手してきていたらしい。

メキシコで購入したっぽい謎マスク

寝室だった部屋へ入るとフランスの蚤の市で購入したという十字架のコレクションなんかも飾ってある。別にクリスチャンというわけでもない深沢はデザイン性に惹かれて入手したらしい。寝室の窓から見られる庭には巨石もある。独特のセンスの持ち主だったことが窺える。

ジーザスがいっぱい

アトリエと繋がっている事務室は生前は書斎として使われ、数多くの画集がひしめいている。その没後は建築家(清家さんと言っていたので清家清だろうか)の事務所として使われていたらしい。変わった構造をしている建物で温室もある。現在は物置として使われているため入室はできないけれど、整理されたら面白い作品展示場にもできそう。トイレは寝室から入れる。個室ウォシュレット式。

事務室に溢れる画集 反対側にもある


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