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横浜トリエンナーレ(神奈川県横浜市・みなとみらい駅他)

3年ごとに開催される都市型アートイベントの一つである横浜トリエンナーレ。20世紀末あたりから国内でも展開されはじめた芸術祭のひとつで、今回で8回目の開催となる。「野草:いま、ここで生きてる」と題された今回の主要となる会場は横浜美術館旧第一銀行横浜支店BanKART KAIKOで、そのほかにもいくつかのエリアで展示がされている。他のエリアによっては別のチケットを準備する必要もある。

・横浜美術館(神奈川県横浜市・みなとみらい駅)
今回の横浜トリエンナーレは改修工事のため長らく休館していた横浜美術館の再開館に合わせる形にもなっていて、久々に訪問できることも嬉しいところ。世界的な建築家である丹下健三が設計したことでも知られており、印象的なファサードや天井まで吹き抜けとなっているロビーなど、建築としての見どころもたくさんある。

横浜トリエンナーレの会場になったのもあってなのか、これまで入館して企画展へ赴く際には右手のエスカレータから上っていっていたのが、今回は左手のエスカレータから上る形の順路に変わっている。

久々に会ったぜ どっから行こっかな

こちらはもともと常設展示室として設けられていたゾーンでもあるので特に抵抗があるわけではないけれど、もしかしたらリニューアル後は順路も変わっているのかもしれない。エスカレータを上ると会場マップが配布されており、横浜美術館の館内に展示されている各作品の場所紹介も兼ねている。

エスカレータ上がったところ ラファエラ・クリスピーノ
これが火炎瓶ときた エクスパー・エクサー

特に決まった順路があるわけではないので、空いているところから順に観てみることに。大都市の横浜で開催されるアートイベントということで訪れる見学者も非常に多い。

ヨアル・ナンゴ 人の切れ目は一瞬

展示品は絵画、インスタレーション、映像がそれぞれ同じくらいの比率で構成されており、なかなか飽きさせない構造。現役アーティストによる現代アートが多いため、作品を見ながら「これは何を語ろうとしているのか」を考えながら観てみると面白い。

個人的にはこれが良かった マシュー・ハリス

草月流の創始者である勅使河原蒼風によるいけばなではない作品や、長谷川潔に小野忠重といった版画家、岡本太郎や児島善三郎といった物故しているアーティストによる作品も紹介されている。

勅使河原蒼風 でかい
岡本太郎や児島善三郎も

個人的には(美術館がいつのまにか閉館になっている様子の)小野忠重の貴重な作品が見られるのが嬉しいところ。

ここにおったんか 小野忠重
おつかれちゃん ジョシュ・クライン

基本的にはどの作品も写真撮影OKなのだけれど、個人的に最もシンパシーを感じた富山妙子の作品だけは写真に収めておけなかったのは残念でならない。死の匂いが漂う作風で人生は愛と死という欠かすことのできない命題を体現できている作品のような気がする。

これも暴力的な死生感 ステファン・マンデルバウム

展示室にはほかにもベッドがあったり、『ポピーザぱフォーマー』みたいな仮面の作品があったりとバラエティに富んでいて面白い。坂本龍一の生前に残した映像作品も紹介されている。トイレはウォシュレット式。

ケダモノみたい アネタ・グシェコホスカ

・旧第一銀行横浜支店(神奈川県横浜市・馬車道駅)
横浜の馬車道エリアには歴史的な建造物が多く立ち並んでいる。キングの神奈川県庁、クイーンの横浜税関、ジャックの横浜開港記念館、そしてジョーカーとして知られる神奈川県立歴史博物館はもちろんのこと、普段は入ることのできない旧第一銀行横浜支店もこのエリア内にある。

やっと入れたぜ旧第一銀行横浜支店

今回ようやく横浜トリエンナーレの会場として設定されたことで入館が可能になったということで、これだけでも横浜トリエンナーレに訪れる理由になるというもの。

旧第一銀行横浜支店では前衛的なアートを中心とした展示を展開している。天井まで吹き抜けている1階の空間では、中央線界隈でよく見られる劇団のようなアナーキズムに満ちた表現を中心とした作家たちの作品を紹介。スタイリッシュな作風の横浜美術館の作品に比べるといくらか泥臭さが強調されており、横浜トリエンナーレを通じて表現の多様性を感じられるだろうか。

松本哉 安いね

階段を上った3階も展示室となっている。こちらでは映像作品が中心。少しエロ・グロな表現もあるのでこの辺りは好みが分かれるところだろうか。なんというか、本来の横浜らしさ(野毛っぽさ)みたいなのを個人的には感じる。トイレは隣接する横浜市役所との間にあり洋式。最新鋭でないのが意外なところ。もしかしたら旧第一銀行横浜支店の名残りなのかもしれない。

妙にグロい プック・フェルカーダ

・BanKART KAIKO(神奈川県横浜市・馬車道駅)
BanKART KAIKOを訪れるのも2回目。旧横浜生糸検査所附属 生糸絹物専用倉庫として復元された北仲ブリック&ホワイトの1階部分にギャラリーとしてあるBanKART KAIKOも横浜トリエンナーレの常設会場となっている。

こちらではクレモン・コジトール、ピェ・ピョ・タット・ニョ、パピーズ・パピーズ、丹羽良徳の作品が展示されている。

SARAYAがいっぱい パピーズ・パピーズ

特にパピーズ・パピーズによる壁に立てかけられた手指消毒液の列(子供用に低い位置に設定されているのもある)と、丹羽良徳による「所有しているものを買い直す」という試みは斬新で面白い。トイレはウォシュレット式。

所有しているものをレジに通すという面白い試みをする丹羽良徳


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