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熊谷守一美術館(東京都豊島区・要町駅)

池袋エリアでまだ訪れていない美術館も残り少なくなってきた。ここもぜひ訪れたかった美術館の一つ。今年度からはぐるっとパスの対象にもなっている。もともとあったアトリエを改築して美術館としている。

謎の生き物

打ちっぱなしの壁が基地のようで面白い。3階建てで1フロアずつ展示室があり階段を利用する。

池袋モンパルナスの一翼を担いながらも絵が売れず、生活に困窮しながらも自分の好きなように作品を描いた熊谷守一。家族からはモリという愛称で呼ばれていたという。5人の子供をもうけたものの3人を若くして亡くすなど悲しい背景もある。友人たちの援助を受けながら絵を続けていた守一は後年になり評価を受け、ひっきりなしにファンや記者たちが押しかけるようになり難儀したという。

たぬき寝入りモリ

1階にはカフェも併設されており、館長でもある次女の熊谷榧の作品をはじめとした展示品を見ながら一息つくこともできる。
ドアーを開けて展示室へ入ると目の前に飛び込んでくるのは熊谷守一の絵画のほかにブロンズ像や手捻り茶碗。絵画のモチーフになった作品もある。絵画はクレパスもあるが油彩がほとんどで、布の他に板をキャンバスにすることも多いため特徴的な盛り上がったような塗り上がりになっている。時代ごとに作風が変わっており、初期はチューブから捻り出したような作品が多いのに対し、後期になるともっとシンプルな作風へと変化する。1階の展示室は勾配がある。これは美術館の建設時になるべく天井を低くするという建築家の意図によるもので、なんとなく地下へ潜り込むような気持ちになる。

傘立てが洒落てる ドアノブのデザインも熊谷守一

2階の展示室では熊谷守一が最晩年に描き、「自画像でもある」として亡くなるまでアトリエに飾ってあった『夕暮れ』をはじめとして、墨絵や書も残されている。中でも興味深いのが『念ずれば花開く』とある書で、頼まれて書かれたものできっとそんなこと考えていないはず、と館長がコメントしていること。モリを身近に見てきた人だけに面白い。

3階のみ写真撮影可能。趣味だった囲碁の盤だったり、遺品を中心にして生前のアトリエを再現した展示がされている。演奏が趣味だったようで、画材に混じって三味線や笛なんかも置いてある。もっとも笛は吹かなかったらしいけれど。1階の展示室にも若い頃に使っていたというチェロが置いてある。
どの展示室も休憩用の椅子が設けられていて見学者に優しい上、館長の一言コメントが見られたりしてゆったりできる。トイレはウォシュレット式。

3階はアトリエの再現


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