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      壊れる                     プラスチック材料の強度と耐久性               


 令和6年は能登半島の地震で年が明けた。元日のこととて帰郷して一家団欒のときに家屋が倒壊するような災害が起きたことは本当に不幸なことであった。災害の復旧も、余震や道路の損壊などが激しく思うように進んでいないことは甚だ残念なことである。
 地震は地殻の破壊によって起きる。地殻のひずみが限界まで達すると一挙に破壊してひずみエネルギーが解放される。日本周辺の地下では北米、ユーラシア、太平洋、フィリッピンの各プレートが衝突している。4枚の大きなプレートが相手を引き込もうとしてせめぎ合っているのである。引き込まれた地殻には大きなひずみが蓄積される。それが限界に達したとき元へ戻ろうとして跳ね上がる。ゴム紐を考えたらいい。限界まで伸ばしたゴムは切れたとたんにパチンと跳ね返る。どの点で跳ね返るかはひずみを蓄積する地殻の性質による。
 現在の科学でも、あるいはもっと科学が進んでも地震発生を予知することは難しい。なぜかというと、まず、地殻の性質を知らなければならい。また、そこにどれだけひずみ(エネルギー)が蓄積されているかを知らなければならない。深海の底、あるいはもっと深いところ地球規模の広さでデータを採取することは不可能であるといえる。
 であるから、日本に住んでいる限り、いつでも、どこでものどこでも地震は起きるものと考えて対処しておく必要がある。堤防、道路、配電設備、通信設備、給排水管、あるいは家屋なども壊れないようにすることが必要である。原子力発電設備については事故の影響の重大さを考えればますます必要になる。
 さて、これらの構造物が壊れるのは、構造物を構成する、とくに力を支える役目の部材が破壊するからである。材料の強度と耐久性についての議論は基本中の基本であることを知って欲しい。
 本書は主としてプラスチック材料の強度と耐久性について議論するが、考え方は金属やセラミックなどの材料に対しても通じるところがある。とくに、有史前から使われてきた金属材料については多くの解説書があるが、第2次世界大戦後、石油化学の発展ともにいろいろ現れてきたプラスチック材料についてはあまり議論されたことがない。地球温暖化とともにプラスチック材料に対してその使用を減らそうとする動きもあるが、現代社会ではあらゆるところにプラスチック材料が使われている。レジ袋だけがプラスチックではないのである。
 本書は次のような10章から成り立っている。

(著者 成澤 郁夫、 山形大学名誉教授、 工学博士)
 第1章 高分子材料の強度と強度設計の基本
 第2章 弾性体,粘弾性体の応力とひずみ
 第3章 プラスチック材料の構造と基本的な性質
 第4章 プラスチックの降伏と塑性変形
 第5章 クレーズの発生と成長
 第6章 プラスチックの破壊
 第7章 プラスチックの衝撃破壊と耐衝撃性
 第8章 環境応力割れとクリープ破壊
 第9章 プラスチックの疲労
 第10章 プラスチックの硬さ、摩擦、摩耗

章ごとに逐次公開していく予定である。関係の方は必要な章ごとに読まれたい。(各章 200円で公開)
よろしくお願いします。

                         

                  




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