成澤 郁夫

元工学系(高分子)大学教員。退職後は中小企業(製造業)の技術支援をしていましたが、傘寿…

成澤 郁夫

元工学系(高分子)大学教員。退職後は中小企業(製造業)の技術支援をしていましたが、傘寿を迎えたこともあり、新型コロナが流行し始めてからは外出控えて庭仕事や人類史の勉強をしています。

最近の記事

第2章 プラスチックの特徴とその構造

2.1 プラスチック材料の特徴  プラスチック材料は、高分子といわれる分子量の大きな分子から成り立っている材料であり、ゴムとか合成繊維と同じ仲間である。その構造についてはあとで詳しく説明するが、透明性というプラスチック特有の性質を利用して製品になるもの、プラスチックの軽さを利用して金属材料に置き換えた製品(部品)もあるし、半導体の基板もプラスチックの絶縁性を応用した製品である。  石油を原料としているから問題であるとか、環境汚染の原因は腐らないプラスチックであるというのプラ

    • 第1章 材料強度と強度設計の基本

      1.1 強度設計の流れ

      有料
      200
      •       壊れる                     プラスチック材料の強度と耐久性               

         令和6年は能登半島の地震で年が明けた。元日のこととて帰郷して一家団欒のときに家屋が倒壊するような災害が起きたことは本当に不幸なことであった。災害の復旧も、余震や道路の損壊などが激しく思うように進んでいないことは甚だ残念なことである。  地震は地殻の破壊によって起きる。地殻のひずみが限界まで達すると一挙に破壊してひずみエネルギーが解放される。日本周辺の地下では北米、ユーラシア、太平洋、フィリッピンの各プレートが衝突している。4枚の大きなプレートが相手を引き込もうとしてせめぎ合

        • 脱炭素政策を急ぐな!!

                ー老科学者の遺言(1)ー           カーボンニュートラル政策  日本は2050年に炭酸ガスの排出をゼロにするという、いわゆるカーボンニュートラルを実現することを前菅政権が国際的に約束した。これを受けて 経済産業省は先日第6次エネルギー基本計画を策定した。この計画では、2030年には炭酸ガスの排出量を2019年と比較して46%、できれば50%減を目標にしている。日本のエネルギーの総需要は石油換算で約350百万キロリットル(2018年) であり、まず203

        第2章 プラスチックの特徴とその構造

          (連載2)人類の来た道、行く道

           3.人類の重み 地球におけるホモサピエンスの影響を分析しよう。まず、重量である。地球の生物は約5~6千万トンと推定されている。その90%は植物であり、約4500億トンである。次にバクテリア類が800億トンである。動物類はその残りでせいぜい0.5%の25億から30億トンといわれる。そのなかで哺乳動物になると約4,500種でせいぜい10億トン程度である。この哺乳動物の内訳をみるとんでもないことになっている。まず、人類は78億人、平均で重さ50kgとしても4億トンぐらいになってい

          (連載2)人類の来た道、行く道

          (連載1)人類の来た道、行く道

          1. プロローグ現在(2021年)、世界の人口は78億人である。地球が養うことができる人口は、農業技術などの進歩により300億人までという試算もあるようだが、その前に資源が枯渇するかも知れないし、今年のように予想しない感染病が流行したり、あるいは核戦争さえ起らないとはいえない。地球温暖化がどのような影響をもたらすかも分からない。いずれにしてもこの数字の根拠をもう一度検討する必要がある。  開口健に「チンパンジーは笑う」というエッセイがある。600万年前にチンパンジーの先祖と別

          (連載1)人類の来た道、行く道

          (連載7 最終稿)ポストコロナ時代の大学選び

          7. 大学が変わるための処方箋  7.1 問題点の整理   前章までにいろいろ取り上げてきた日本の大学の問題点を簡単に整理してみます。 1)大学全体について 1)18歳人口の減少、進学率の飽和で今後大学進学者は漸減する。大学を選ばなければ志願者全員を大学に収容できる時代が来ている。少しでも偏差値の高い大学に入りたいという競争があるため、定員割れする地方や小規模の私立大学で経営困難校もでてきている。 2)大学卒業のためには国公立大学であっても、私立大学ではさらに高額な学費を必要

          (連載7 最終稿)ポストコロナ時代の大学選び

          (連載6)ポストコロナ時代の大学選び

          6 体験論的国立大学の現状と問題点   筆者は、大学生としても、教員としても地方の国立大学の工学部で約30年以上過ごしてきました。校舎も古い木造の教室と研究室、少ない研究予算、パソコンもなく学生のレポートや研究発表は手書きのポスターなど、今では考えられない大学環境でありました。しかし、学生も含めて大学内や研究室はなにかしら生き生きとした雰囲気がありました。もちろん、筆者が若かったこともありましたが、なによりも当時は日本の高度成長期の最初であり、しかも理工系ブームといわれた時代

          (連載6)ポストコロナ時代の大学選び

          (連載5)ポストコロナ時代の大学選び

          5 日本の大学の国際的レベル5.1.世界ランキングにおける日本の大学  国際的なグローバル化の波を受けて市場化が進む中で、法人化して16年経過した国立大学法人、名門とされる私立大学、学際的な名前で改組あるいは新設された日本の大学の国際的比較でみた実力はどの程度なのだろうか。  英国の高等教育専門誌が毎年発表しているTimes Higher Education (THE)というランキング表があります。各大学のエントリーを受けて研究と教育面を点数として評価して順位づけをしたもので

          (連載5)ポストコロナ時代の大学選び

          (連載4)ポストコロナ時代の大学選び

          4.大学設置基準等の変遷  4.1大学設置基準   かつての大学の設置は今のように簡単ではありませんでした。大学設置基準という文部省(現在は文部科学省)が1925年(昭和31年)に省令として制定した規則にしばられていました。この規則は大学としての教育・研究水準を保つことを目的に、収容学生数に応じた専任教員数、校地および校舎面積、図書館の蔵書数などを細かく決めており、事前に認可申請を出して、これらの基準をクリアしなければ大学の新設はもちろんのこと学部の増設さえも認められていま

          (連載4)ポストコロナ時代の大学選び

          (連載3)ポストコロナ時代の大学選び

          3 日本の大学を取り巻く状況3.1日本の大学数は多いのか  このままでは、日本の大学は駄目になるということを客観的に分析し、だめにならないようにするためにはどうすればいいのかということを提言したいが、まず、ここでは、日本の大学が直面している現況について見てみます。図3.1に示すのが1965年(昭和40年)から2017年(平成29年)までの日本における大学・短大の数の変遷を示したものであります。 高等教育を担う大学・短大の数は2001(平成13年)に1228校と最大となったも

          (連載3)ポストコロナ時代の大学選び

          (連載2)             ポストコロナ時代の大学選び

          2.大学卒業のための投資 日本の大学の学費は高い  今年から従来の大学入試センター試験は大学入試共通テストと変わることになるます。当初は英語の民間資格試験や検定試験を代用するという予定でしたが評価の公平性に問題があるため実施しないとか、記述試験は採点の問題で延期とか、文部科学省(以下文科省)の突然の変更で大学志望の受験生は戸惑うことが多かったと思います。最後の大学入試センター試験を受けて入学した学生は、新学期時期の新型コロナのパンデミック騒ぎで入学式もなし、キャンパスも出入り

          (連載2)             ポストコロナ時代の大学選び