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優秀な編集者はなぜ絵を描くのが好きなのか?

先日、取材したファシリテーターの方から、「バタフライボード」という携帯用ホワイトボードをいただきました。

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バタフライボードは、福島英彦という方が開発・商品化したものだそうです。A5〜A3サイズのノートのような体裁で、簡単に持ち運びができるホワイトボードです。ボード自体がとても薄いマグネットになっているので、ノートのようにきれいに重ねられています。一見、ノートにしか見えません。

では、ノートと何が違うのか。ホワイトボードなので何度も繰り返して書いて消せる点です。そして、1枚1枚バラバラにできるので、会議などでもみんなで分けて使ったり、机に広げて絵や図など描きながら説明ができます。

そして、バタフライボードには絵が似合います。というか、絵を描きたくなってきます。ノートはふつう自分の記録として使いますが、バタフライボードはノートとしてはもちろん、みんなに情報を共有したり、説明したりするときにその特性を発揮します。

絵は文字より情報量が豊富です。だから少ない文字、少ない時間でその主旨や内容を人に伝えやすくします。

「絵心なんてないし、描けるわけがない」という人も多いかと思います。でも、人類が文字を使い始めたのは3000〜5000年前、絵を描いたのは4万年前とされています。つまり、人類は文字を発明するずっと以前から絵を描いていたとされます。文字が書けなくても絵は描けていたのです。

絵心がなくても絵は描ける 

『ラクガキノート術』という本をご存知でしょうか。タムラカイという方が出されているのですが、彼は「落書きは誰でもできる」と提唱しています。お絵描きは難しいとみんな勝手に思っているけど、そうじゃないと。

たとえば、人の顔はパターンさえ覚えれば誰でもすぐに100パターンを描けるようになるとのことです。これを覚えておくだけで、会議やブレストが盛り上がることは想像に難くありません。

『ラクガキノート術』によると、顔の表情を決めるパーツは、眉毛と目と口の3つ。その目と口は5種類のパターン、眉毛は4種類のパターン。そのパターンさえ覚えれば、5×5×4で100パターンの表情が描ける」とのこと。

私もさっそく試してみたのですが、本当に魔法のようにさまざまな表情の顔が描けます。

絵を描くことで得られるさまざまなメリット

絵心のある人はコンテンツ力もある――これは私が編集者の経験で確信していることです。では、なぜ絵を描くことがコンテンツ力につながるのでしょうか? 絵の上手い下手はあまり関係ありません。ただ、描くのが好きな人は自然と上手にはなります。上手になれば表現の幅が広がるとともにアイデアの幅も広がります。絵は文字よりも情報量が圧倒的に多く、人間は情報の90%近くを視覚から得るとされています。

アイデアを考えるときも、絵を描くことは文字や話す言葉以上の豊富な情報を具体的なカタチにしているのです。またビジュアル情報は会議やブレストでもホワイトボードなどで共有することで、参加者にもインスピレーションを与えることができます。そうすると議論が盛り上がりやすく、アイデアも活性化するメリットがあります。

会議がつまらないなあと感じたら、とりあえず絵にしてみる。ホワイトボードに下手な絵でもいいのでみんなで共有してみる。絵はコンテツを制作し、伝えることを生業とする私たちにとって、もっと重要視すべきことかもしれません。

私の経験上、コンテンツ力のあるクリエイターは、会議やブレストで率先してホワイトボードの前に立ち、絵や図表を描くのを好みます。そのほうが参加者が理解しやすく、納得してくれると知っているからです。絵を描くことは、すなわちファシリテーター、クリエイター、プレゼンテーターの一人三役を兼ねることになるので、その存在感もひときわ大きくなります。

あなたがある企画を立てて、上司の承認を得なければならないとしましょう。そのとき、企画書に手描きの絵や図表があると、あなた自身がとても説明をしやすくなり、上司も面倒臭がらないで聞きたがるものです。長い文章を嫌う人は多いですが、絵を嫌う人はほとんどいないのです。

ヘタウマでもいいので自分で絵を描こう

特に雑誌の編集では「ラフを切る」「サムネイルを起こす」という作業が少なからずあります。これらはいわゆるページ構成がひと目でわかるように全体図を書き起こすことです。

さらにコンテンツ内容をもっと具体的に落とし込むときに「絵コンテを作る」こともあります。どのような順番でどのようなストーリーを作るかを可視化することで、クライアントの承認を得たり、ライターやカメラマンが記事の全体像を把握して、取材の段取りをスムーズに進めるためです。

近年のWebメディアでは、レイアウトや構成が限定されているせいもあって、このような「ラフを切る」「サムネイルを起こす」「絵コンテを作る」といった作業は減っているように感じます。作成するとしても、Webメディアでは「ワイヤーを切る」という言い方で、エクセルやパワーポイントなどを使うことが多く、手書きで作成することはほとんどなくなっています。デザインに落とし込むための構成案であればそれで問題ありませんが、コンテンツ案を考えるときはやはり絵が必要になるのです。

ラフやサムネイルや絵コンテは、そのシチュエーションが説明できれば、自分や周囲の人が楽しめて、理解を深められればそれでよいのです。味わいがあって、自分で描く物語を説明できればよいのです。○と△と□と棒線だけでもよいのです。


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