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「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んで

ブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読み終えました。

文章のタッチとしては、母と息子の日々のやり取りなのだけど、そこから広がる今の社会への考察が深く、面白く、非常に頭がほくほくする1冊でした。舞台は英国・ブライトン、ときに日本だけれど、場所を問わずとっても普遍性がある内容。

例えば、
大雪の中のホームレス支援 は 英国の緊縮財政の話へ。ミセス・パープルの話 は 社会的包摂括費の話へ。サッカーW杯 は 英国のEU離脱派/残留派の話へ。制服のリサイクルと授業で習うFGM が 日常に散らばる“地雷”の話へ。

ここから分かることは、具体的な事象とみられる日々の出来事は、結局「子どもたちの方が、より剥き出しの形でトリッキーな社会問題を日々体験することを余儀なくされている」ことの表れなのだということ。

そんな中での教育現場。
11歳の中学生の期末試験に「エンパシーとは何か?」という問いが出され、彼が「自分で誰かの靴を履いてみること」と答えたという場面は、本書のハイライトと言って良い。

「EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって。つまり、他人の靴を履いてみること…」

分断、ヘイト、レイシズム…。まさに「双方が双方を許せない」状態。「仲間外れをして、喧嘩をさせようとしている」「人間は人をいじめるのが好きなんじゃないかな。罰するのが好きなんだ」「憎んで反撃して、それで終わりはどこにあるの?」 そんな子どものストレートな視点・言葉が、本質的でぐさぐさ刺さる。

大人はこれでいいのだろうか。冷静に、社会にはいろいろな考え方の人が生きているということを受け止めているのは実は子ども。社会は二項対立の溝をどう埋めていくのだろうか。あるいは、埋められぬまま年月は流れるのだろうか。

二項対立からどう脱するか。これは、最近読んでこれまたよかった山口絵理子さんの「サードウェイ」にも通ずる話。この本の感想も近々。

少し脱線してしまったけれど、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んで、私は、本当に大切な体験をし、多様性に触れ、エンパシーの能力を得、自らの行動を考え、成長していく子供たちが、正直とっても羨ましかった。多様性に富んだ異国で教育をやり直したいと思うほどに。焦りに近い感情かもしれない。

長くなってきたのでこの辺で。ブレイディみかこさんのパンクな感じの母ちゃんっぷり、その文体も好みでした!「最近読んだ本でおすすめしたい本って何?」と聞かれたら、ぜひ紹介したい一冊です。

それではまたお会いしましょう~😊

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