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シナリオ未経験のゲームプランナーがシナリオを書けるようになるには?

はじめまして。こんにちは!
このページにいらした方は、学習意欲のある素晴らしい方とお見受けします。

ゲーム業界で、シナリオ未経験だった自分が「それなりに」書けるようになるまでのプロセスを公開するというものです。
もちろん、ベテランではないので、より良いやり方がこの世界にはあるとは思います。ですが、一人の未経験者が、「それなりに」経験者として現場で戦うまでの道のりは誰かの助け船になるかもしれません。

Why / なぜ、書こうと思ったのか?

施策量が増えたり、自分が他にやらないといけないことがあり、やってきた業務を渡し、メンバーのFBをする機会が増えました。
そこで、自分の中でももう少し、言語化する必要があるかと思い、noteで書いてみることにしました。

Who / ところで、著者は何もの?

ゲームプランナーとしてキャリアをスタート。
数本の新規開発や、数本の運用を経て現在に至る。
Webゲーム時代からネイティブ。ヒットも爆死もどちらも経験。
バランス調整やシステム系よりは、クリエイティブや制作系。

その後、2019年の3月から未経験でシナリオを扱うチームに配属。
以後、原作者とのコミュニケーションを重ねる。
キャラクター、世界観、設定に関わるテキストについて、社内監修者としての役割を担う。シナリオというよりは、骨子となるプロット作成する機会が多いです。

注)
・シナリオとは、実際にゲームで実装されるテキストデータ
・プロットとは、ゲームでは実装されない、他の開発者向けのテキストデータ。どんな感情を与えたくて、どんな出来事があるのかを箇条書きにしたもの、と定義

What / 何を学ぶのか

既に人間の学習は「守破離」の考え方で完成しています。
型を学び、型どおりにやり、自分なりに磨いていく。

また、シナリオに限らず、すべての学習に共通するコツは、インプット量ではなく、アウトプット量がすべて。

料理を作れるようになるには、レシピを眺めるだけでなく、実際に作るしかない。
シナリオを書けるようになるには、本を読むだけでなく、実際に書くしかない。

しかし、最初のアウトプットはそれはそれはヒドイもの。
全員誰だって、初心者からのスタートです。
だから恐れずにやるしかない。

では、最初の一歩で何を学ぶのか?というのを考えてみます。

How / どうやって学んだのか

ここからは、5つのStepにわけて、どう学んだかを書いていきます。

Step1:ログラインという概念を学ぶ

ログラインというのは、「一言でいうと、それはどんな作品なのか」を表現した1-2行の文章です。
ここで惹きがあるものを作れたら、第一関門はクリアです。

たとえば、既存作品で書いてみると以下になります。
それぞれ、アタマに浮かぶのが一つだけであれば、その作品は「エッジが立っている」といって良いでしょう。 

「ある日、ゴム人間になってしまった少年が海賊となり、仲間とともに世界にひとつだけのお宝を探そうとする話」
「とある廃校直前の高校の女子高校生が、スクールアイドルとなり、仲間とともに頂点を目指し、廃校から救おうとする話」
「家族を殺され、唯一残った妹が鬼にされてしまったが、その妹を人間に戻すために、仇に復讐しようとする話」

この概念を学ぶには、『Save the cat』という本が入門書として最適です。
いくつか読みましたが、一冊目として、強くおすすめします。


Step2:他の作品のログラインを自分で書いてみる

上記でやったようなことを数本繰り返してみます。
書いてみたら、他の人や先輩に見てもらうのがよいでしょう。
「この要素も必要じゃない?」というのが出てきたら、それは作品の根幹に関わる大事な中核です。

Step3:担当するタイトルの構造と要素を分解する

自分が担当するタイトルで今度は上記を挑戦してみます。

・どんなログラインなのか

・5W1Hが何なのか(いつ、どこで、誰が、どんな動機や目的で、何を、どのように達成しようとする話なのか)

・どんなメッセージとオチなのか
 メッセージとは、「盛者必衰」とか「因果応報」とか「正義とはなにか」などです

・どんなフォーマットなのか
 フォーマットとは、文体の特徴です「レポート風」「小説風」「師、曰く●●で綴られる」などがフォーマットです


・どれくらいの文字数なのか(篇、章、節)

Step4:自分で書いてみる

次に試しに書いてみます。長くなくてOK。ひとつ外伝をつくるようなイメージで書いてみます。
書いたものをチームの人に見てもらうのも良いかもしれません。
好きなキャラがいれば、それもよし。好きな話のイメージがあれば、それもよし。

しかし、おそらく、ここで1回詰まるはず。
「なんとなくそれっぽいものはできた」が、「面白くない」と。

Step5:読後の感情を定義する

文章が、平坦になってしまうのは「読後にどんな感情にしたいか」が定義できていないからです。
読んだ後にどうなって欲しいか?を決めて、それに必要な小さいエピソードを紡いでいきます。
たとえば、「ヒドイ」をやりたい場合には、「大切にしてきたものが壊される」のような描写が必要です。

例文1

むかしむかし、あるところに桃次郎という男がいたが、桃から生まれたときには既に事切れていた。


いや誰だよ、桃次郎。知らんがな
となるし、あまりに描写が少なく感情移入ができない。
おそらく狙っている方に感情が動かない。

なので、感情をもとにした、描写が必要になります。
たとえば、以下です。

例文2

「我らのことはいい。先にいけ、桃次郎ーー」
三千もの鬼の軍勢を前に、お供の犬が潰れた喉で叫ぶ。

「必ず、お前が鬼の王を討ち取って世界に平和を戻してくれ」
全身の傷を負い、羽が千切れボロボロになった雉は言う。

振り向くな。ここで振り向いては、彼らの決意が泡と消える。
俺があいつらの代わりに、必ず成し遂げる。
桃次郎は、お供たちが紡いだ想いを胸に、鬼の王が待ち構える玉座の間へとたどり着く。

「ゲハハハ。来たな桃次郎。人間どもに虐げられた積年の恨み、晴らしてくれようぞ」
鬼の王が不快な笑みを浮かべ、舐めるような視線をこちらに向ける。
「では、まずはコイツらと戦ってもらおう」
「……してくれ」「こ……ろして…れ」
そこに現れたのは、全身が血まみれで、羽がもがれた雉と、顔が腫れて原型をとどめていない犬だった。

「やめろ! クソッ、操られているのか!?」
桃次郎の声も虚しく、雉と犬は桃次郎へと容赦なく襲いかかる。

「ハッハッハ!選べ。どちらかをころせば、どちらかを一匹は生かしてやろう」

いや誰だよ、桃次郎
と最初のよりはならなくなったはず。
桃次郎をちょっと応援したくなったはず。

・桃次郎にとって、雉や犬は大切な存在という描写を追加
・それが脅かされる、壊される描写を追加
となると、当初の「ヒドイ」という感情に近づきます。

なので、ゴールとなる感情を定義し、それに必要なエピソードを組み立てる、というのがひとつのアプローチです。
そして、その感情の逆となることをやると、持っていきたい感情に近づいていきます。

・ハッピーエンドなら、事前に悪いことが起こるが、それを乗り越える
・バッドエンドなら、事前はよかったと思うが、最終的にはそれが失われる など

まとめ

ということで、結論です。
最初に型を学んで、たくさん書く。そして人に見てもらう。
私の場合は、去年、毎週2,000字を連続で3ヶ月書くミッションをしたりしていました。

そして、これを繰り返していく。それがまずは上達の一歩かなと思います。
それでは、またお会いしましょう!

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