【映画感想126】点/石川慶(2017)-昔好きだった男にうなじを剃ってもらう話

あらすじ

タイトルまんまです。


感想(ネタバレあり)


30分以内で終わる短い映画で、二人の会話のみで進んでいきます。
ちょっとした声色でなんとなくこの2人なんかあったのかなという距離感がじんわり滲み出てくるのが主演二人の演技すごいな〜と思いました(そして次の2、3分後のセリフでやっぱりそうか〜〜〜ってなるスピード感)

舞台がほぼ床屋の中ですが、カットが細かく変わるので退屈しない感じがしました。冒頭の床屋の棚とか、ポストのサビ具合とか、年季の入ったものと強い日差しのコントラストがなんとも落ち着く。

ところで洗面台の鏡のシールを指でなぞるだけのカットで思い出したのですが、
先日6年ぶりに行ったカフェで通っていた当時のチラシを剥がした跡が残っていてなんとも言えない気持ちになったことがありました。過ぎた年月を否応でも感じてしまうかつての痕跡。あのシールも何か2人の思い出にまつわるものだったんでしょうか。ここで特に何も語られないのが余白があっていいなあと思いました。わたしはセリフで全て語らない作品が好きなのですが、短編って結構良くも悪くもいろんなものが削ぎ落とされるので何を残すかがすごくむずかしいように思います。

で、いいな〜〜という感想を語っておいてあれなのですが、

ラストシーンでいきなりアップテンポなギターの音が流れるのことだけが解せない!!!!!!!!!

この映画ってセリフやBGMで2人の感情がはっきり描写されないので考察の余地があるところがよかったのですが、ギターのサウンドが「前向き!!!」な音なので最後の最後で物語の終着点を定義されてしまうような気持ちになりました。個人的にラストシーンをどう受け取るかこちらに判断を委ねて欲しかった。
でも逆に爽快感を感じて好きだと思う人もいると思うので好みの問題かも。
短くてさっと見れるし、ラストの音楽以外は結構好きだったのでオススメです。


余談
かつて知人が「映画内で男女が食事を作るシーンはベッドシーンより性的なものを感じる」と行っていたのですがうなじを剃るってなんかその上な感じしますね。
髪を切る、じゃなくてうなじですよ。西日が差し込む床屋のはずなのに、ある意味同窓会の夜に浮気するようなやらしさがあるマジック。


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