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【映画感想25】エヴォリューション/ルシール・アザリロヴィック(2015)


※ネタバレあり


なぜか少年と大人の女性しかいない島、
宗教画のように全く生活感のない家や町。
集合体のように同じ見た目・無機質な表情の島の女性たち。
刺さる人には刺さりそうな独特のアンニュイな世界観がたまらないです。

ところで創作界隈では「〇〇みたいだね」というのは「褒めようとして言ってるのは理解できるけどなんかモヤっとする言葉」としてよくあげられます。
ピカソみたい、バンクシーみたい、ピストルズみたい…有名人の名前をあげて称賛することは褒め言葉にありがちなのですが、「自分だけにしか作れない」ものを追う創作者にとって、どんなに有名であれ他人に似ているといわれるのは我慢がならないのかもしれません。

そしてこの映画は〇〇に似ている、という〇〇が思いつかない独特のメランコリックなうつくしさがあるのが最大の魅力だと思います。
映画の知識はまだ全然ありませんが、この監督の次回作が公開されたら予告編でこの人だと一発でわかると思う。

番人受けするようなうつくしさではないのですが、「これがわたしの世界である」と映像にすべてをつめこんで視覚でブン殴ってくる感じ、まさに映画の形をとったアート作品でした。
あとエンドロールがいままでみた映画の中で1番綺麗で感動しました。

あとはストーリーについて。

無表情な女性たちの中で、看護師のひとりが自我を持ったように少年に構い出すのだけど、映画のテーマが「進化」ならこのイレギュラーな個体は集団にとって進化なのか退化なのかどっちなんだろう。

あんまりストーリー重視の映画ではないと思うのですが、無理矢理考察すると

①あの島の女性たちがひとつの意識を共有した生き物で、おそらく攫ってきた人間の少年たちを媒介に繁殖を繰り返しいる
②島の女性の個体のひとりになぜか自我が芽生え(エヴォリューション?)少年と交流を深める
③少年を逃したあと自我が芽生えた個体は島に帰る

みたいな感じ?
でも少年は謎の注射を打たれて一度謎の生き物を出産をしているわけですが、
彼が人間社会に戻って大丈夫なんでしょうか。
素直な見方をすれば異種族交流譚として受け取れるけど、なんだか穿った見方をすると植物が種を飛ばすように、あの島にいた生物の因子を人間社会に混ぜるためにあえて逃したような……

タイトルのエヴォリューションって、島にいる謎の生き物に感情や自我が芽生えたことではなく彼らが「自分たちの因子を植え付けた少年を人間社会に返す」という新たな種族拡大の方法を得たことを指しているのではないかと思ってゾッとしました。


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