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インテークについて考える

インテークって難しい。何年経ってもそう思っている私です。
インテークは簡単に言ってしまえば、「何に困っていますか」、「どんな支援が必要ですか」、「じゃあこうしていきましょう」という過程を指すと捉えています。

支援の入口。本人の困り感と、支援機関に求めていることの把握と、それに対する支援機関の対応を伝え、双方が支援に合意するための過程ですね。

ただどれだけ経験を積んでも、私はインテークって奥が深いなと思うのです。
一見すると合意形成が取れても、支援を進めていくうちに「あれ?」と思うことが少なくない。
この「あれ?」は場合によっては、インテークでのやり取りが不足していたからではないかと思い至ることがあります。

働き始めた頃に上司に言われたこと、「入口が間違っていたらどうしてもその後の支援は上手くいかない」ということをしみじみと思い出します。

今回はそんなインテークについて改めて考えてみようと思います。

難しさの要因

なぜ、インテークは難しいのか。
冒頭でも言った通り3つのステップが大まかにあると考えた時に、何らかの「ずれ」が生じているのだと考えます。

この後の考えは言葉を選ばず述べていきますが、決して相談者を貶めているわけではありません。

まず、「何に困っていますか」に対して。
これは本人がまず自分自身の困り感を自覚していないと的確に表出されません。
困っているところが本質とずれていたり、そもそもの原因を自覚していなかったりすることがあります。これらは、本人に振り返る力や現実を把握する力が不足していたり、自身の課題や評価がずれていたりする際に起こってきます。この質問に対する回答がずれると、その後のステップも上手に踏んでいけなくなります。

次に「どんな支援が必要ですか」に対して。
上記の困り感が的確で正しくても、本人の困り感に対する解決のイメージが不足していたり、間違っていたりする場合が生じます。
解決する手順がわからない、方法に関する情報や知識の不足がある、現実性を欠いている、困り感に対する回答になっていない・・・などの原因が考えられます。
ここがずれると、仮に本人が望んだことを果たしても問題が残ること、困り感が継続すること、別の形で問題が生じることが出てきます。

最後に「じゃあこうしていきましょう」に対して。
ここまでのステップが上手く進んでも、最後の支援者からの提案に間違いや不足があると解決には至りません(当たり前)。支援者からの提案が正しくても、本人がその提案を理解できなければ合意に至らないし、理解できないまま合意されても本人としては「こんなはずではなかった」が生じてしまい、合意形成されたとは言えなくなってしまいます。

いえいえ、本人を責めたいわけでも、やはり貶めたいわけでもないのです。
そもそもこれらが生じない人は相談なんて必要ないとも思います。
これもまた、言い方に棘が生じてしまいますが、こういった「ずれ」が生じるから相談支援が必要なのだと考えます。

難しさに対する支援者の役割

こういった「ずれ」をなくす、と言えればいいのですが、正直なくすことは難しい。
少なくすることが相談支援の役割だと考えます。

まず、「何に困っていますか」のステップの際の支援者の役割について考えてみます。
本人の自覚している困り感を聞き、それに対して問題を具体化したり抽象化したりできるように質問を投げかけていきます。

「仕事が見つからなくて困っている」と言われた時、どのような質問を投げかけるでしょうか。
例えば

・どんな方法で探したのか。
・どんな条件で探したのか。
・どれだけの時間をかけたのか。
・誰と探したのか。
・(働いた経験があれば)以前はどう探したのか・・・

といくつか質問を投げかけることで、本人がどんな仕事を探していて、どの程度ツールを使えて、それらは妥当な方法で・・・と見えてくることがあります。

さらに
・働く条件や理由、求めること
・仕事が見つかるまでどう過ごすか。今どう過ごしているか
・他に相談しているところはあるか。なぜうちの窓口に繋がったのか
・(通院しているなら)どういった症状があって、医師は働くことに何と言っているか
・他に困っていることはあるか・・・

と質問の範囲を広げていくと、本人の状況がある程度把握され、そこから今後本人の目標に向かっていく上での課題が見えてくることがあります。
そのように「支援者が考えた・感じた本人の困り感(困るであろうポイント)」を本人に伝え、本人の考えを確認します。
支援者の意見を受けて本人の解決すべき事柄や、その優先順位、重要度を共有し、「何に困っていますか」に対する回答と実際の状況との「ずれ」を小さくします。

次に「どんな支援が必要ですか」に対しての支援者の役割です。
まずは本人が希望する解決のカタチを把握します。

例えば先述した相談に対して、「なぜ働こうと思ったか」と聞くと、「お金が必要だから」と返ってきたとします。
本人はお金を稼ぐという目的(その先にはまた更に生活のためとか、何かを買うためとかの目的があるわけですが)を、働くという手段で達成しようと考えたことがわかります。

では例えば
・いつまでに、どこで、いくら稼げる、どんな仕事に就きたいか
・得意なことは何か、苦手なことは何か
・体調はどうか・・・

と聞いていきます。

さらに
・働く必要があるか
・働く以外の解決方法はあるか

など例としては極端ですが、本人が思いついた手段以外で目的達成は可能かを検討し、それに対しての本人の考えを確認します。
本人が思いつかなかったけれど、本人にとってよりよい解決のカタチが見つかるかもしれません。
そうして本人の解決のカタチを再度確認した上で、支援機関としてできること、できないこと、できない場合の代替案や他の窓口の案内などを提示することになります。

最後に「じゃあこうしていきましょう」というところでは、本人がやること、支援者がやること、今は解決できないことなどを整理し、次の予定を立てます。
本人に支援者の意図が伝わっているか、質問や確認を投げかけます。

支援者の役割を踏まえて、本人が相談に来る前後で、問題や課題の解像度(最近この単語をよく聞きます)が向上したり、本人だけでは思いつかなかった解決への道筋を示せたりできるといいなと思います。
しかしこれはなかなか難しい。ハードルを上げすぎているかな?どうだろうか。

まとめ

言い方はあまりよいものではないですが、相談に来る人は困り感の整理が苦手だったり、解決のイメージがなかったり、支援者に過度な期待を持っていたりと「ずれ」る要素がたっぷりです。
いや、当たり前なのです。下に見ているわけではなく、そうでないと相談支援は不要だと考えるので、そうあることが前提だと思っています。

そこで、支援者は各段階において役割を果たしていこうと努めます。
私の理想としては、相談支援を受ける前後で問題がより明確に、そして本質的になり、現実的で妥当な解決までの道筋を示すことができればこれ幸いと考えています。

ただ実際は、1回の面談でなかなかそこまで深められないこともあります。
私のインテークは大体1回40分程度。後日アセスメントでより深く聞く時間を設けます。これが1時間半程度。ここまででももちろん不足はあるわけですが・・・。

つまり1回のインテークで完璧な回答は示せないのがそもそもなのかも、とも思ってしまいます。これは本末転倒でしょうか。

アセスメントが繰り返されていくように、インテークも繰り返されると考えます。
はじめましてのインテークで方針を立て、アセスメントで微調整をし、方針に沿った支援を展開する中で進捗を確認し、支援方針の見直しを図って、再展開するというPDCAサイクルを回していく。

改めて難しいな。でもインテークっておもしろい。
何ができるか、どうすればいいか。ここを考えるのは支援の醍醐味だと思います。
継続支援を提供する前提ではなく、断る(より適切な機関に繋ぐ)ことも視野に入れて、丁寧に聞き取って対応していきたいです。

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