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[短編小説]GTO物語 ターン編9

華やかな香りが部屋に行き渡った。瑞々しい香りを胸一杯に吸い込む。煎れたてのダージリンに砂糖を二匙入れる。気持ちは三匙入れたいところだが太りたくは無い。テーブルについてゆっくりと香りと味を楽しんだ。
休日なので外から聞こえてくる騒音は少ない。

加藤優希はバックからスマートフォンを取り出した。インスタグラムを開いた。ほとんど投稿しないが仕事が終わった後など電車の中で何気なく見てしまう事が多い。スクロールしていく、女友達がディズニーランドで彼氏と楽しんでいる写真、友達同士でお出かけしてるカフェの写真などがアップロードされている。ディスプレイの向こう側はいつも笑顔と幸せで満ちあふれている。

別のアプリTwitterに切り替える。同じようなアプリだがインスタグラムほどキラキラしてない。みんなが好き勝手につぶやいているので喧嘩が起きたり、炎上したりする。つい最近も『この世の女は全員オレのATM』と発言した男のポストが炎上した。その男はさらに「ATMダンス」なる動画をアップロードしさらに炎上。Twitter上で活動するフェミニストの格好の標的となった。

とりたてて、面白いこともないがスクロールしてくいくと豊胸手術の広告が目に入った。昨日裕樹に言われたことを思い出してしまい。イライラして画面を閉じた。

ちょうど風呂のお湯が溜まったようだ。長湯する予定だから、冷蔵庫からペットボトルの水と取り出し風呂へ向かった。

脱衣所で服を脱ぎ、洗濯機へそのまま着ていた服を放り込む。
『今日は面倒だから洗濯は明日でいいかぁ』

スマートフォンでリラックスできる音楽を掛けながらゆっくりと湯船に浸かった。

自分自身で胸をのぞき込むといつもと変わらない大きさだ。当たり前だが。『なぜ私の胸は小さいのですか?』と誰かに問いかけたいが自分の他に誰がいるわけでも無い。

『私も豊胸手術すれば彼氏が出来て、一緒にディズニーランド行けるかなぁ』
なんてちょっと本気で考えて見たりもする。

『いや、まって。それじゃ、豊胸手術の後に出来た彼氏は私じゃなくて私の胸が好きって事よね?それじゃ意味ない。私の事を好きになって欲しい。』

『なんで、男ってそんなに巨乳が好きなのよ?バカなの?ただの脂肪よ、脂肪。太った女と付き合えばいいじゃない?』

『でも、豊胸手術するにもそんなお金無いしなぁ。ピアスすら開けてないのに胸の大きくするために手術するなんて無理』

『裕樹のこと、悪くないと思ってデートしたのに、もー今思い出しても最悪だわ』

ぐるぐる考えは巡り。加藤優希は約一時間の入浴を終えた。


つづく


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