見出し画像

[短編小説]GTO物語 ターン編11


今から約3ヶ月前仕事中に倒れて救急車で運ばれた。

数週間前から疲れは取れないし、疲労がどんどん溜まっていって休日におとなしく体を休めても疲労が回復しない感覚はあった。
それと時折胸が締め付けられるように痛むことがあったが、しばらくすると痛みは消えたので気にはなっていたが病院へかかるほどではないと思っていた。
第一僕は病院が嫌いだった。雰囲気や匂い、無意味に長時間待たされるし、近寄りたくも無い。

受け持っているプロジェクトで仕事が忙しいかったので残業も多めだったしただの過労からくる疲れだろうと思っていた。少し仕事が落ち着いてゆっくり休めば体調は回復するだろう。いままでの経験則からそう予測していたが違ったようだ。

けたたましい音の救急車に乗りながら、近所の総合病院へ運ばれた。簡単な問診と検索の後、担当した緊急医の見解では過労でしょうと告げられた。胸の痛みについては一応CTスキャンを撮っておきましょうということになり。また次の日に結果を聞きに行くる様言われ。その日は疲労回復の点滴を打たれたあと、帰宅した。

次の日、会社は午前半休を取って病院へCTスキャンの結果を聞きに行った。昨日の医師とは別の医師で三十代前半くらいの細めの眼鏡を掛けていた。いつから胸の痛みが始まったか?どんな痛みか?と詳しく問診された。僕はさっさと結果を聞いて午後から仕事へ戻る気だった。

CTスキャンの結果は肺がんだそうだ。医師の言葉が突然過ぎて頭に入ってこない。『肺がん』頭のなかを言葉がフワフワゆれた。診療室の中で医師と会話している自分は意識の中で遠ざかって僕はずっと奥の方に引っ込んでいった。

説明を続ける医師によるとステージは進んでいるようでここの病院では対応できないのでがん専門の病院への紹介状を書くので少し待合室で待って欲しいとのことだ。

僕は自分でもいま自分が置かれている状況が理解できなかった。いや、理解出来ているのだけれど、理解したくない自分の一部が受け入れてない状態といった方が正確かもしれない。とにかく、僕の精神と現実の待合室の距離はとても遠かった。ついさっきまで職場にいって仕事する気であったのに、どこかえ消えてしまった。職場へ連絡して午後も休みにしてもらおうか迷った。自分が居なくては他の同僚の負担が増えるのはわかりきったことだったが、このまま職場へ行ったところでまとものに業務をこなせる自信はなかった。


(つづく)




この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?