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[短編小説]GTO物語 ターン編13

メインの通りからは一本路地に入ったところにそのラーメン屋はある。ガラス張りの気引き戸で入ると食券の販売機があるのでそれで食券を購入する。店内はカウンターが十五席、四人掛けのテーブルか一つある。メニューはラーメン類と餃子と飲み物類だけで炒飯などは置いていない。店長のおじさんは短髪で細身で筋肉質な締まっている。盛り付けや、洗い物などをメインにする店員は少しぽっちゃり目でいつもタオルを頭に巻いてる。

僕は食券を買い、カウンターに座って一段高くなったところに購入した食券を置いた。店長がおしぼりと水を置く換わりに、書かれた注文内容を確認しながら無言で食券を引き取った。店長も店員もあまり愛想がいいとは言えず、口数も少ない。そのせいか職人という言葉が似合う。

まだお昼前で客はまばらで僕を含めて4人だけだ。

僕はまだ頭がぼーとして、突然置かれた状況をどうするべきなのかに思いを巡らせていた。いや、それよりは受け入れたくない情報が頭のなかをゆるやかなスピードで廻っているだけだった。出口が無いのでそれらの量は一向に減る気配を見せず、ただただ頭の大部分を占拠してた。

厨房の中で作業する二人を何気なく無意味に眺めてた。

ぼーとしていると、突然甘い香りが鼻の奥を突き、現実に引き戻され視界が突然鮮明になった。

視界の左側に女子校生が映った。

彼女は食券を出し、スカートを押さえてからカウンターの椅子に座った。そして学生鞄を左の椅子に置いた。

(平日の昼間になぜ女子高生がラーメン屋に?)

真隣にいるので、顔を向けるわけジロジロ見るわけにもいかず横目でついみてしまう。目鼻立ちが整っていて、滑らかな肌と、柔らかな輪郭で僕の鼓動は突然高くなった。まるで数秒前までスローテンポのジャズが流れていたのに突然のヘビーメタルに変更された様だった。

店内はそれほど混雑していないので僕の左隣に席を取らなくても、他の客と隣にならないように席を確保出来るにも関わらず、その女子高生は僕の左隣に座った。

しかも、僕側に距離が近い!

気がする――。空いている店内で隣に座っていることは事実だが距離が近いのは都合のいい僕の思い込みかもしれない。

注文をただ待っているのが手持ち無沙汰になったのか、彼女が右手を制服の上着のポケットに滑り混ませた。距離が近いせいでスマートフォンを取り出すときに彼女の肘が僕の腕に当たった。

「あ、ごめんなさい」

と彼女は小さな声で言った。


(つづく)


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