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[短編小説]GTO物語 ターン編5

女は起き上がりながら、声の方に目を向けると
傘を指した男性が近づいてきた

「夏生!」

「あらあら、傘も刺さずにどうしましたぁ~?」

「うるさいわね!」

このときに初めて女は先程までいた部屋に傘を置き忘れたことに気づいた。
夏生は無表情にしくしくと降る雪から守ってくれるように傘を女に指してくれた。

夏生のダウンジャケットに雪が落ちる。

女は立ち上がりながら、雪と汚れを払った。

「なんで、こんなところに居るのよ?」
女は言った。

「なんでって、俺近所だし、お腹減ったからローソンにファミチキ買いに行こうと思ってさ」

「ローソンにファミチキは売って無いだろ!」

「いやだって、ローソンで売ってるファミチキの名前わからんしなぁ」

『だからファミチキじゃいだろ!』
と思ったが、言われてみればローソンで売っているショーケースに入った揚げた鶏肉の名前が思い浮かばなかった。
 
「もしかして、イライラしてる?」

「もしかしてじゃなくて、今世紀マックスでイライラしてるわ」

「カルシウムが足りない上にお腹へってんじゃない?」
夏生は問いかけた。

「減ってるけど、なんでよ?」
女は食ってかかった。

「いやまあ、メシ食べながら話聞いたほうがいいだろ?」

「それは、まあそうね」
女は同意した。


「この先に旨い小料理屋があるからそこいくか」

「どこでもいいけど、夏生の奢りね!」

「だろうねぇ、はは」
まあ、そう来るだろうなと夏生は想定していた。
 
二人は最寄りの駅の駅方向に向かいつつ、夏生おすすめの小料理屋を目指しあるき始めた。
 
 
夏生は上下濃いグレーのスエットに赤いダウンジャケットを羽織っていて、いかにも近所に買い物に来ましたって格好をしていた。
女がさっきまで相葉裕樹のマンションで一緒にいたところまでは夏生もわかっているはずだ。
 
雪のせいで外出している人は少ない。
コンビニを通り過ぎたときに店内を覗いたが、店員以外誰も店内に居なかった。
 
女は怒りを沈める努力をしながら、夏生の指す傘の下で小料理屋を目指した。
 

つづく


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