見出し画像

結膜炎の影響で

 右目が結膜炎になった。二重になった。

 ウイルス性の結膜炎と診断されて、ニ週間が過ぎたころ、ようやく目の赤みも落ちついてきた。初めは右目だけであったが、一週間ほどして左目も赤くなったものの、治る時期は同じくらいであった。

 結膜炎の最中は、どうにも視界がぼやけて見えづらく、移動をするだけでもおっくうだったのだけれど、そのぶん解放感が気持ちよい。

 視界も良好。目の赤みもなくなって、後は変わったことがあったとすれば、右目だけ、二重になっていたことだ。

 ちょうど目の赤みが取れたころ、鏡を見て気がついた。なんかおかしいな、と思ってまぶたのあたりをいじってみたものの、二重であることには変わらない。

 しかし、二重であるからといって、何か支障があるわけでもなく、私には気にならないものであった。

 原因はよくわからないし、気に留めるようなものではなかったのだけれど、それに友達が気づくと、

「なんか、ちぐはぐで気持ち悪いね」

 さらり と傷つくような言葉を平気で言えるものだ、と思ったものの、それがこの子であったため、いちいちそんなことではへこまない。

「そうかなぁ、あんまり気にならないけれど」

 んー、変。と笑みを浮かべている。

「両目ともだったらよかったのに、片方だと違和感あるね。……というより、疲れてるんじゃない? 目が潰れている感じするもの」

 急に心配そうな声を出すその子に、あえておちゃらけてみる。

「まあ、二重になりたかったら、結膜炎になることだね」

 その子は くすくす 笑って、えー、なんて言っている。

 そんな話しをしてから一週間ほど経ったころ、ちょうど疲れも取れてきたのだろうか、朝鏡を見ると、二重からすっかり元の目に戻っていた。

 まぶたをいじってみても、じっと見つめてみても、もう二重ではない。

 人の体ってなんだか不思議だなぁ、なんて思いながら、ふっ、と笑みを浮かべて、今度はなんて言うかなぁ、と考えながら、今日の待ち合わせの様子を思い浮かべた。

 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。