あなたの声を頼りに、こんなところまで来てしまいました。けれど、

　あなたは、見つからない。

　どこにいるのだろう。

　声を頼りに、探してみる。探してみる、けれど、

　見つけられない。

　声はたしかに聞こえるのに。声は、たしかに。

　風が吹き、日が照って、雨が降り、夜が明けて。

　それでも、それでも、なかなか、どこにも、

　見つけられない。

　泥だらけになっても、土埃に塗れても、あなたを探し続けている。

　声を頼りに、この、聞こえる声を、頼りに。

　あなたは、どこにいるのですか？

　鳴いても、泣いても、あなたに、届かない。

　見つけたら、もう離れたくない。離れないように、はなさない。

　塀の上からも、木の上からも、探してみたのに。

　見つからない、見つけられない。

　この声は、どこから？　どこから聞こえるのでしょう。

　それとも、幻なのでしょうか。ただの、幻なのでしょうか。

　声を頼りに、探している。

　声を頼りに、探しています。

　あなたを、あなたを。

　聞こえるのは声ばかり。聞こえるのは。

　あなたの手が、忘れられない。

　しわくちゃだけれど、やわらかい手。

　あなたの声が、忘れられない。

　掠れた、儚い、ゆっくりとした声。

　聞こえる、聞こえる、声だけが、聞こえる。

　あなたを探しています。

　あなたを探しています。

　探しているのに、探しているのに、どこにも、どこにも。いない。いない。

　どこに、どこにいるのですか。

　声だけが、声ばかりが、聞こえる。

　聞こえる。