タヌキ顔と葛藤

電車に乗る。目の前の美容外科の広告が目に入る。タヌキ顔の女二人は、いかにも美容脱毛をしたような滑らかな肌をこれでもかと晒している。私はいつも考えてしまう。タヌキ顔の愛嬌の正体について。この何とも言えない、ギリギリ可愛さの秩序が保たれているかのような愛嬌は何に由来するのだろうかと。彼女たちより端正な顔立ちの女性はいくらでもいるし、若い女の子たちの憧れとなりそうなのは私の目の前の広告に写るタヌキ顔ではなく、完璧に近いKPOPのアイドルの容貌だろう。

ただ、私を含めた馬鹿な男共の気を引きそうなのは完璧に近い顔ではなく愛嬌たっぷりの顔なのだ。この現象は至極不思議なものである。国民的女優とされるあの俳優や、某テレビ局のアイドル的人気のアナウンサーもタヌキ顔。彼女たちは男共、特におじさん人気が高く後者は競馬番組のMCをやったり、SNS運用を活発に行っているから、おじさんが親しみを覚えるのも不思議ではない。

私は馬鹿な男共のこの習性から何とか抗いたく思い、彼女たちのような愛嬌たっぷりのタヌキ顔を見ると「好きになってたまるか」と生まれながらの逆張りの精神をこれでもかと発揮させる。が、結局最後はいつも屈してしまい、彼女らのSNSを無意識裡にフォローしているのだった。

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