最近は父がやらかした後始末でやや忙しいわけであるが、そんな時でも母はいつも通りボケている。

この日午後3時ころ、所用で外出中、出先で車を駐車場に入れたところでモンスター👾エンカウントが鳴り響いた。見てたのか(んなわけない)。

取ってみると、母が叫ぶ。
「あんた、たった今きて！
福祉のタクシー券請求しようと思っとるんやけど、これでいいか見てほしいんよ！
コピーも取りたいけど取り方がわからんけん、あんたやって！」

要求のままに叫ぶのはやめようか。
とりあえず急ぎではないことが分かったので
「たった今行かんでもよかろ。
夕方行った時に見るけん。」
と言って切った。
大丈夫、半日くらいで福祉券は逃げない。

そして夕方。
玄関に、どーんとさわやかブレンド茶のペットボトルの段ボールが置かれていた。
生協が配達に来たものの、中まで運び込めなかったようだが、当然のように運んでもらえることを期待している。
仕方ないので、運ぶ。

そして台所に運び込んで、昼間の件を母に尋ねると、母は封筒入りのビニール袋を出してきた。
どうでもいいが、最近実家の食卓の上にチラシや書類や新聞が散乱気味である。片付けられないお年寄りが出現している。

「これを確認して欲しいんよ！」

中身がない。

「書類がないとやけど、中身どこよ。」

「コピー機のとこにあろうもん！
コピー取ろうと思ったら仕切らんかったとよ！」
これも、以前はコピーくらい自分でできたのだが(電源入れて、ボタン押すだけ)、すでに手順を忘れたらしい。

しかし私も神ではない。
書類の中身がコピー機のところに置き去りなのは、先に言ってもらわないとわからないのである。

書斎に行ってみると果たして書類はあった。
が、コピー機の印刷物が出てくるホルダーの上にぺろんと置かれていて、「なるほど、ここに置く…？」と思った。

書類の内容そのものは住所氏名を書くようなものなので、問題はなかったが、
「あんたこれで投函して欲しいのよ！」
と言われても、まずそもそも切手が貼ってなかった。

切手を持って来させて貼って、封筒を封緘しようというときに、さらなることが起きた。
封をするからと言って糊を借りたら、なんとスティック糊がつかない。
何度回して出したはずでも糊がつかないので不審に思って糊の先を見たら、なんとグリグリに抉ってあった。

驚いて母に問いただすと、
「だって、あんた勿体無いやんね！
抉って使っとかな！」
と、爪楊枝を渡された。

爪楊枝でスティック糊を抉って使ったのは、52年の人生で確実に初めてだ。

これで用件は終わりかと思って、そのあと客間に行き、サックスを鳴らしていたら、母が追撃してきた。
手には何かの払込票を持っている。
今度はなんだ。

「あんた、これ払っとってくれん。
コンビニで払えるけん。」

見ると母の高校の同窓会費の支払いだった。
50年以上まめに払ってると感心しつつ、用紙を見たら「スマートフォンアプリからお支払いいただけます。」と記載がある。
お、と思ったが、隅から隅まで見ても、QRコードも、アプリのDL案内も、ネットアドレスも何もない。

仕方ないので、アプリ支払いは諦めて、コンビニで払っておく。

最近の母は、つまりコンビニ(徒歩三分)に行くのも怠けるようになってきたということである。