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妊娠中の新型コロナウイルスワクチンについて

 妊娠中または妊娠を検討している方から質問をいただくことがあったので有効性や安全性について確認しようと思い、こちらの論文を読んでみました。

要点

イスラエルの観察研究ではPfizer-BioNTechのワクチンは症候性、無症候性のSARS-CoV-2 感染に対して78%の有効性を示した。

元論文は
Association Between BNT162b2 Vaccination and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Pregnant Women
JAMA. Published online July 12, 2021. doi:10.1001/jama.2021.11035

背景

妊娠中、産褥期の女性はSARS-CoV-2 感染の合併症のリスクが高いが、COVID-19ワクチンの有効性を確認するPhase3臨床試験では、妊娠・産褥期の女性は試験対象から除外されています。

イスラエルはCOVID-19ワクチンの接種率が非常に高いことで話題になりました。この研究はイスラエルの医療制度のデータを用いて後ろ向きコホート研究で妊婦に対するワクチンの有効性を調査しました。

概要

Participants 対象者
イスラエルの妊娠登録データに登録されている人

Exposure 暴露因子
NT162b2 mRNA(バイオンテック社)ワクチン接種した

Comparison 対照
NT162b2 mRNAワクチン接種していない

Outcome 主要評価項目
主要評価項目は、最初のワクチン接種後28日以降の新型コロナウイルス感染です。99%が初回から21日後に2回目のワクチンを接種しています。この研究では2回目の接種から7日以降でワクチンの効果がでると判断したために、上記の基準で判定しています。

Result 結果
7350人のワクチン接種した妊婦と、7350人のワクチン接種を摂取していない妊婦をマッチさせて評価しました。
試験全体を通して、ワクチン接種した群では118人が新型コロナウイルスに感染し、ワクチンを接種しなかった群では202名が感染しました。ワクチンの効果が出るであろう、初回接種から28日目以降の感染は、ワクチン接種群で10例、非ワクチン接種群で46件、ハザードはそれぞれ0.33%対1.64%で、絶対差1.31%でした。調整後ハザード比は0.22(95%信頼区間 0.11-0.43)で統計学的に有意に新型コロナウイルス感染の減少が観察されました。

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⇧ Figure2は新型コロナウイルス感染の累積の発生率を示しています。オレンジがワクチン接種群、青がワクチン接種無し群です。ワクチンの効果が出る前の2-3週間は差が少ないですが、初回接種から21日目以降から差が広がっていることが分かります。


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⇧ Table3は、胎児発育遅延や子癇発作、早産などの周産期に起きてほしくない合併症の発生件数をまとめた表です。どの発生件数もあまり多くないこともあり、両群で差が無い結果でした。

結論

妊婦を対象としたこの後ろ向きコホート研究では、ワクチン接種なしと比較したBNT162b2 mRNAワクチン接種は、SARS-CoV-2感染のリスクが有意に低いことに関連していました。

個人的感想
 この論文の結果では、胎児発育不全や早産など周産期に起きてほしくない合併症に関しても、両群で差が無いようなので、現状では他の学会の推奨通り妊婦または妊娠を検討している方にも推奨する姿勢に変わらないと思います。

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